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泥のダンジョンマスター  作者: ハル
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閑話.


 最初に見た光景は・・・真っ白な世界だった。


 そして、そこで無邪気に遊ぶ兄弟の姿だった。


 自分のほかにも、いっぱいいて、この世界で遊んでいた


 お腹がすいたら、近くにある種を食べて


 のどが乾いたら、水を飲んで


 とても平和だった・・・とても僕の中は満たされていた。


 でも、ある日・・・僕たちの世界に穴が開いたんだ。


 とても驚いた・・・でも、それ以上に・・・その穴が・・・気になって仕方がなかった。


 平和の中に訪れた、非日常・・・それがたまらなく・・・僕たちの胸を刺激したんだ。


 そして、僕はその穴を・・・いいや、僕たちはその穴を覗き込んでみると・・・


 僕の目に飛び込んできたのは


 僕の知っている世界なんて小さいぐらいに広大な世界だった。


 それを見た瞬間に僕は・・・僕たちは・・・


 飛びたいと


 羽ばたきたいと


 本能が


 心が


 身体が


 そう叫んでいた。


 横にいる兄弟たちも少し驚いていたけど、そんなのは自由で広大な世界を見た瞬間に


 驚きなんてものは恐怖なんてものは心の中から消えさって、僕と同じようにただ自由に飛びたいという気持ちが心の中いっぱいになったんだよ。きっと。


 だから


 バサッ


 誰かはわからない、だけど・・・誰かが羽ばたいた音が聞こえた。


 そこからは一瞬だった。我先にと兄弟たちは羽ばたいて、飛んでいった。


 バサッバサッバサッ


 みんながみんな・・・青く澄んだ空へと羽ばたいていった。


 全身に受ける風が、景色を置いて、飛ぶのが


 とても気持ちがいい


 僕の羽はこんなにも広大で綺麗な世界を飛ぶためにあったんだ!!


 ひとたびまた腕を動かせば、僕の世界は加速する。


 そんな僕を横にいる兄弟たちも見ていたのか、追い抜こうとしている・・・


 競争だ!


 負けないぞ!!


 兄弟たちと追いかけっこをやっていると、ふとキラッと光る何かが見えた気がした。


 その時・・・なんだか嫌な予感がしたんだ。


 だから、少し上のほうに高度を上げたんだ。


 すると・・・兄弟たちは僕を置いて先に・・・行ってしまったんだ・・・


 置いてかれる!!


 でも・・・そんな思いは次の瞬間に霧散したんだ。


 兄弟たちが何か空中に張り付けられているようにおかしな格好で動けなくなったんだ。


『うごけない』『・・・なんで』『たすけて』


 そんな声が聞こえた・・・助けなきゃ!!


 でも・・・僕のそんな思いを打ち破るかのように


 黒く大きなものが僕より先に兄弟のもとへと辿り着いたんだ。


 そして、その脚が・・・動けない兄弟へと振り下ろされた。


 グチャ


 そんな肉が潰れるが聞こえた・・・それにまじって兄弟の悲鳴が・・・あぁ・・・助けなきゃ・・・でも・・・


 僕は怖くて・・・じっと・・・上のほうで見ていることしかできなかったんだ。


 すると・・・僕のことを気づいたあれが僕のほうをじっと見つめてくる。


 複数ある黒い目が全部僕のほうをじっと、じっと、じーっと見つめてる。


 口をグチャグチャと動かし、兄弟の肉を食べながら、僕のほうを美味しそうだなと・・・見られている気がしたんだ。


 このままじゃ・・・僕も殺される!!


 まだ助けを呼ぶ兄弟を見捨てて、僕は1人生き残りたいがために・・・逃げた。


 助けたい!!助けたい、当たり前じゃないか?でも・・・僕がいったって・・・殺される。そう本能で分かってしまう・・・勝てないと、勝てるわけがないと・・・


 もういくら飛んだだろう・・・飛んでも飛んでも飛んでも・・・どこからか兄弟の悲鳴が聞こえてくる。


『いたい』『たすけて』『いや』『なんで』『みすてないで』『コロシテ』


 全部全部全部・・・無視した。僕じゃ助けられない・・・僕じゃ・・・僕なんかじゃ・・・


 数分後に・・・小さな水の溜まり場があった・・・


 そこには僕以外の兄弟が水をすすろうとしていた。


『お~い』


 そうして、声をかけて、兄弟が振り向こうとした瞬間に・・・


 少しの瞬き


 次の目に映った光景は、何か黒いものに兄弟は噛みつかれて、頭と体が別れた姿だった。


 さっきのとは違って、身体に当たる光が反射していた。


 当然僕のほうも気づいていた。兄弟を食べ終わったら、次は僕だろう・・・このままじゃいけない。


 逃げた。


 僕のせいで・・・僕が声をかけたせいで、兄弟を殺してしまった。


 そう自責の念が湧き出てくるが・・・今はそんなことより、自分が殺されるかもしれない。次は僕の番かもしれない・・・その恐怖が僕に腕を動かすことを強要した。


 ・・・もう腕が限界で・・・休める木を探していた。


 あのキラッと光るものがない木に降り、1人眠りについた。


 そして、次に目を覚ました時に僕の身体には枝が巻き付けられていた。


 逃げられない。飛ぼうとしても、僕に巻き付いている枝が邪魔で羽ばたけない。


 そして、他の木の枝が僕の目の前から迫ってくる。


『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい』


 そんな僕の声は届かない。ゆっくりとゆっくりと、だが、着実にそれは僕のほうへと迫ってくる。


『死にたくない』


 目を瞑り、自分の死を、枝が自分の体を締め付け、殺されるのを・・・


 でも、それは一向に訪れない。


 ゆっくりと目を開けると・・・枝は僕を地面へとおろしていた。


 近づこうとすれば・・・枝が僕を寄せ付けないように振るわれた。


 ・・・僕は安心して寝れた場所を、宿り木を失った。


 その日から、飛んでも、飛んでも、安心して休める場所なんてなかった。


 そして、見つけたのが


 黒い2つが近づかない、赤いの気づかれないギリギリの木の上で、毎回眠りにつく。


 僕と同じようにここを見つけた兄弟も少し油断して姿を見られれば、その赤いのにグチャグチャと食べられた。


 明るくなって暗くなるまで1回、決まった時に、僕と同じ兄弟らしい姿とその悲鳴が聞こえてくる。


 自分が助かるために他の兄弟を落としたのを見た・・・それから僕は同じ兄弟でも気を許しちゃいけないと・・・思った。


 時々黒いのより大きくて、赤いのより小さい、赤や黄色、緑、黒、そんなので固まって行動しているのを見かけた。そして、上を飛んでいた兄弟が緑のが何かしらするとバッと羽ばたくのをやめて、地面へと落ちていった。


 あぁ・・・あれも危険で、僕の敵なんだなと・・・勝てるわけがないと分かっているから、僕は地面を掘った。


 口先だけでトントントントントンと・・・


 すると、僕でも倒せる細長いのがでてきて、それを食べて・・・


 黄色のが黒いのと戦っている間に茶色い水を飲みに行ったり・・・


 いつか、いつか・・・兄弟の仇がうてるぐらい強くなって・・・あいつらを殺してやると誓いながら


 今日も僕は目を閉じる。

 後書きであんなの書いてたら、なんか書きたくなってきた。


 そう、ただそれだけさ・・・




 

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