80.
起きるとそこは・・・・固く冷たい地面で野ざらしで俺は寝ていた。
「全身が地味に痛てぇ・・・」
陽の眩しさに少し目をこすり、身体をさすりながら、自分で今生きているという現状を認識して・・・そして、ここがどこなのか、辺りを探り始めたら、自分の後ろのほうで見覚えのあるテントと食事をしている4人の姿があった。
「・・・」
寝る前の・・・いや、気絶する前のことを思い出してみよう・・・
俺とヌーはたしか・・・あの3人を見送った後に・・・夜営の準備をしながら、その時にGの群れに襲われたんだよな。それを撃退して・・・まぁ・・・そこはいいよな。
そこからはだいぶ何もなくて、次に何かあったのは・・・確か謎の魔物にキリックの頭を投げつけられたよな・・・そしてキリックは3人で辺りを見に行っていたから、あそこに4人いるってのは俺の認識だとおかしいよな・・・
そのあと『こりゃ勝てない』なんて思って、階段へと向かっていったんだが、その途中で3匹のホブゴブリンが逃げている俺達に気づいて戦闘を仕掛けてきた。・・・まぁ、あいつら三人いなかったんだから、負けたのも仕方のないことだ。うん、それなら今俺が手足を縛られずに生きているってことが疑問なんだが・・・
そして、遠くで目に映る光景は食事をする4人の姿。
「ふぅーーーはぁーーー」
あぁ、そうか、あのキリックの顔は偽物で、俺達2人が負けそうになった時に3人が助けに来てくれたんだな、うん。
「よぉ」
そう声をかければ、食事をしている手を止め、4人の目はラガックのほうを向く。
「・・・おはよう」
「おはよう」
「あぁ・・・よぉ」
「・・・・」
アニスはぎこちなく、セラはいつも通りのように、キリックは目を逸らしながら、ヌーは目を伏せながら何も言わなかった。
アニスの手は足に、セラの片手は杖に、キリックの手は茶碗に、ヌーの手はおたまに・・・さすっていたり、持っていたり、我関せずのように食べていたり、それによそっていたり。
「・・・昨日はありがとうな」
これがきっと正解なんだ。気絶する前に見ていたあの光景はきっと頭を強く打ったことに寄ってみた厳格なんだよ、うん、そうだ、そうに違いない。
「私って・・・ホブゴブリンみたいな顔なのかしら」
そう笑顔でラガックに声をかけるセラの姿があった。
だが・・・ラガックは知っている。その声はとても笑顔で言っているとは思えないほどに平坦で、その目が正面から見れば全然笑っていないことに、そして、その手には片手に持っていた茶碗は置かれ両手で杖が握られることを見ていた。
「・・・」
無言でキリックとヌーに助けを求める視線を送ってみるが・・・キリックのほうは何も言わずに・・・いや、疲れたような表情をして、ヌーも同様に疲れた表情をしていた。
俺が起きる間に・・・何かしらがあったんだろうと、その様子から簡単に察することができた。だからこそ、自分に飛び火しないように、庇ったら庇っただけ自分に被害が来ることを察して・・・何も言わず、助けを求めるような視線を見ないで、聞こえるが聞こえないふりをして、その場をやり過ごそうとしていた。
「いや・・・あのな・・・そのな・・・」
ヌーがあの状態なら・・・もうすべてを話しているだろう。だからこれは私怨だろう。それに騎士と剣士と魔法使い・・・ん?・・・あ・・・
逃げようと・・・いや、どうせ逃げられないと分かっているが・・・後ろを見ていると、セラのほうばかりを気にしていて気づかなかったが、いつの間にか後ろにはアニスが矢先が少し歪んでいても、そのいつもの矢とは違う特徴的な羽には見覚えがあった。・・・歪んでいるということは使って回収したであろう特殊弾の矢が・・・
それを持ちながら、ぽんっと俺の肩に手を置く。
「話し合おっか・・・」
アニスの手には剣、セラの手には杖・・・話し合いってなんだろうな・・・
2人に引きずられながら、どこかへと消えていくラガック。
そして、それを見送りことなどせず、茶碗を置くキリックと布でふき取り片付けをするヌーだけがこの場に取り残されて・・・いや、この場で嵐が過ぎ去るのをじっと待っていた。