79.
斥候視点。
「ぎゃぁぁぁぁ」
悲鳴を上げることは情けないことだが、そりゃ・・・火の海の中、絶賛今は視界が悪い中あちこちで火球が落ちた爆発音が聞こえる。
こんな状況なんだ。ヌーにもちゃんと生きているって知らせないといけないから、これは悲鳴じゃない・・・ただの心の叫びだ。
こんな大きな声で心の叫びをあげたら、こっちを気にしている剣士としたら、逃げる可能性を考えてそっちのほうに待機しくるだろう。たぶん。そう行動していると期待して俺は魔術使いのほうへと忍び足で全力で向かっていく。だが、こんな爆発音がある中で・・・忍び足はあまり意味のないような気がしないでもない。・・・・こんな火球をずっと攻撃されるのは溜まったもんじゃないな、うん。
そして、火の海が終わりが見えてきて、そこにまだ火球をうっている魔術師が見えた。
腰を低くして・・・熱さと戦いながら・・・弓でいきたかったところだが、こんな火の中じゃ・・・きっちりと狙い通りのところに当たる自信がない。駆け寄って、一気に首を狩る。
「ふふっ」
そんな笑い声がふと聞こえた気がした。
その魔術師は片手に違う魔法陣を展開しており、そこから水球がでてきた。
「・・・くそっ」
いや、こんなに火球使ってるんだから、火だけしか適性がないホブゴブリンだと思うだろう・・・いや、こんな後悔していたって、もう遅い・・・受けるのを覚悟して、進めば・・・見当違いの方向へといって、火にあたって、煙が出て、視界が悪くなる。
飛び込んでいくと・・・横から俺の腹に向けて、剣で吹き飛ばされた。
「・・・ごほっ」
痛みを訴える腹を抑えながら、何が起こったのか、魔法使いのほうへと目を向けると・・・魔法使いの前に剣士がいた。あぁ・・・まじか・・・
ゆっくりと魔法使いが剣士を伴ってこちらにやってくる。この状況じゃ・・・もう逃げるのも絶望的か・・・
そして魔法使いがこちらに向かって杖を振りかざそうとしているとヌーがこちらの間に割って入ってきた。
・・・振りかざしたその勢いは止まらずに、かばったヌーが横のほうへと飛ばされていく・・・なんだこの魔術使いのホブゴブリン・・・俺より力があるんじゃねぇか・・・
「・・・ぐっ・・・ん?」
ヌーが痛みに耐えている間に・・・ぬちゃっと嫌な感覚と共に俺の頭は殴られた。
最後に見た光景はニコニコと笑顔で俺に杖を振り下ろそうとしているセラとそれを必死に止めてくれているアニスの姿だった。
戦闘が終わった。火の海の中でいくつの幻花の命が散ったことでしょうか・・・ぐすん。