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泥のダンジョンマスター  作者: ハル
84/255

78.

 ポーター視点。



「グギャ」


 その騎士(ナイト)のホブゴブリンがラガックの投擲していたGが仲間にいってるのを気にしているのを見て、手早く倒すために呼吸を止め、勢いよく首筋を狙って突きを放ってみるも、その突きは簡単にその持っている盾によって防がれて、こちらの攻撃は通らなかった。


「・・・・ふぅ」


 深呼吸を一つ、最初から分かっていたことだ、自分の攻撃は通らなかいかもしれないということは。


 そんな様子を見ていても、ホブゴブリンのほうからはこちらに積極的に攻撃する様子はない。


『・・・甘く見られているんだろうな』


 情けなくて魔物ほどにも聞かれたくないからか、ヌーはそんなことを心の中で思っていた。


 自分は人より背が大きい。自分は人より力が強い。そんなことを思ったことはある。だが、戦いは命のやり取りだ。どんな魔物でもこちらを殺す気でやってくる。それを見て、感じて、恐怖して、俺はこんな体格をしても、それを正面から受けたくなくてポーターなんて職業をしていた。


 だからこそ、感じた。


 こんな臆病な自分だからこそ・・・


 この魔物に自分を殺す気がないと・・・殺気を感じられないと・・・


 そこまで自分は情けない男だったのかと・・・仲間を殺され、魔物にも舐められ、こんなところでなぶられ終わってしまうのかと・・・


 だが、彼はラガックは言ってくれた。


『・・・・ホブゴブリン程度なら2人いればいけるだろ・・・3対1より3対2だろ・・・』


 俺が倒せると、足止めをできると信じて、俺なんて足手まといを見捨てずに、あの二体を相手にしに行ってくれたんだ。


 そんな俺が・・・ここで膝ついて、諦めるなんてことできないだろう。足掻く、必死に足掻いてみせるさ・・・


「おらぁぁぁ!!!」


 そんな声も空しく・・・何回も何回も何回も何回も・・・何回も・・・


 攻撃しても、その攻撃は簡単に防がれ、避けられ、相手に有効打になりえるような攻撃を与えられずにいた。


 何回も攻撃していくうちに、掌にじっとりと汗をかく。


「グギャ」「ギャギャ」


 などという訳の分からないホブゴブリンを聞きながら、きっと自分のことを笑っているんだろうな・・・と思わずにはいられなかった。


 情けない・・・本当に自分が情けない・・・だが、そんなことを今さら後悔したって、もう遅いんだ。


 そんなことは分かっていた。自分が情けないことなんか、何か・・・何かないだろうか・・・自分がこの魔物に勝つ方法は・・・いつも頼りになる仲間はもう一人、有効打になりえるかもしれない道具はすべてテントの荷物の中。ここで対峙しているホブゴブリンを抜けてテントのほうへ向かったとしても・・・後ろからきっと剣で斬られるか、ただ逃げる俺をホブゴブリンは嘲笑うか・・・


「・・・ははは」


 動くのをやめたからか、汗が一気に身体中に吹き出る。


 もうどうにもないないと・・・どうにもできないと・・・そんなことを自覚していたら、手の握力が、肩の力が・・・抜けていく。


 あぁ・・・ここで俺も死ぬのだと・・・どうしようもなく、感じてしまった。


 こんな奴の経験値になるくらいなら・・・自分で自分を・・・


 だが、そんなときでも遠くからラガックの悲鳴と・・・轟轟と焼ける地面のことが目に入る。


 ラガックの悲鳴が聞こえてくる。ラガックはまだ生きているのか・・・そう思い出す。自分は1人で戦ってるんじゃなかったか・・・そう武器を握る手に力がまた入るのを感じる。


「・・・ふっぅーはぁーー」


 こちらがあちらのほうを見ることをやめたのを察したのか、またホブゴブリンはこちらのほうに注意を向けてくる。


 どうせ勝てないなんてことは分かっていたんだ。なら・・・


 武器をホブゴブリンのほうへと投げ、ホブゴブリンがこちらから気が逸れて隙に、ラガックのほうへと全力で駆けていく。


 投げたときに、その汗が偶然にもホブゴブリンの目に入ったからか、それは動きをいったん止め、利き手でその汗をぬぐった。するとどうだろう。目の前には誰の姿もなかった。


「・・・グギャ」



 

 涼しくなってきた・・・夏だけど・・・


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