74.
魔法使い視点。
「すまない、キリック」
そのラガックが呟いた言葉で3人が足止めをしようとした攻撃の手を止めることは当然のことであった。
だが、ラガックは次の瞬間に詠唱を一旦止めてしまったセラに向けてGを勢いよく顔面に向かって投げた。
突然のことだった。
一瞬ラガックは幻術からとけて、自分たちを正しく認識して攻撃しようとしたことを止め、私達に敵意を少しでも持ってきたことを謝ってきた。と思ってしまっても仕方ない。
いつもなら避けれたはず。
しかも、ラガックに向かって拘束魔法を使用しようとしたところだ。きちんと彼を見ていたはずだった。
だが、その言葉で意識が逸れて、戦わなくてもいいという安堵が心の中に満たされようとしていた時に突然のそれを避けるということは魔法使いである彼女にはできるはずがなかった。
咄嗟のことで避けようとすることはできなかった。
だが、目の前に迫るG・・・何もしなければ自分の顔にあのGが勢いよく衝突する。
・・・最後の抵抗か、それとも素手でそれを触ることを躊躇ったのか・・・彼女は自分が持っていた杖でそのGを叩き落とした。その行為で一度集中が途切れてしまって今発動使用しかけていた魔法も破棄されてしまった。
だが、この時、彼女の持ってきていた杖はお気に入りだった。自分の命を預ける武器だ。それぞれ個人で思い入れがあるのは当然のことだろう。時にはその武器を魔物の血で汚すこともあるだろう。
・・・だが、彼女は魔法使いだ。接近戦攻撃なんてするはずがない。一部の魔法使いを除いて、そんなことをする魔法使いはいない。
でも、接近されて魔物の追い払うためにある程度の杖術も習得はしているだろう。いずれこういうことになってしまうこともあっただろう。信頼していた前衛の守りを抜かれて、だが・・・幻術を見ていると思われるだろうけど、仲間から顔面にGを投げられたのだ。
しかも、幻術が解呪されたと思った言葉を信じた彼女自身の手によってその隙は生まれてしまった。
ラガックやヌーはその詠唱が止まっていた隙を狙って、厄介な魔法使いであるセラを仕留めて2vs2の状況にもっていきたかったが、当然のこととして、キリックやアニスがその攻撃の邪魔をする。
そして、またゆっくりと深呼吸をして、心を落ち着けて・・・詠唱を開始し始めた。
キリックやアニスはこの時、2人の相手をしていていたから気づかなかったが、明らかに展開している魔法陣はラガックだけに向けられていた。
今はラガックは幻術にかかっている・・・そして、私達に向かって武器を振り上げてきた。これだけでギルド側からして始末したという報告をしても構わない。錯乱して仕方なく、止めることはできなく止むおえず、今回の報酬は割がいい・・・それで仲間内で争うなんてこともありえるだろう。そんなことを何回もすればギルド側から要注意危険人物として認定され、今度まともな冒険者活動なんてものはできなくなるが・・・
だが・・・止めるために仕方なく・・・威力の高い魔法が偶然当たってしまっても、仕方のないこと。止めようとしたために起きた不幸な事故なのだ。
彼女のその心にはGを顔面に投擲された恨みとお気に入りをGの体液で汚された怒りが確かにあった。
でも、落ち着くのだ・・・長年連れ添った冒険者仲間だ・・・死なない程度に・・・威力を抑えながら・・・ポーションで治る範囲の怪我で・・・ヤる。
前書きを初めて使ったような気がしないでもない。
お気に入りがまた再開。楽しみだ・・・