68.
あの幻覚を使っていると私は思っている魔物を倒してから、どれだけの時間がたっただろうか・・・
森の中は太陽が出ていた時よりも薄暗くなって、微かに木々の隙間から差す月明かりだけが、今はアニス達を照らしている。
「やっぱり明かりがないと方位磁石も見にくいね・・・」
そういうアニスは微かに差す月明かりを頼りに自分たちが進む方角を把握していた。
「まぁ・・・うん、さっきのことがあったばっかりだしな・・・控えようぜ?」
そう先頭を歩くキリックはアニスに向かって、言っている。
さすがにさっきのことがあったので、アニスも分かってはいるのだ。現状で不便であるというを言ってはいてもどうしようもならないことだと。周りを警戒しながらこの薄暗い森を進み、自分たちがダンジョンの森のどこを歩んでいるのか分からない現状。不安が胸の中に溜まりになり、それを吐きだそうと今不満に不便に思っていることが口から出てしまうということも自然なことなのかもしれない。さっきまではセラの魔法のおかげで月明かりを頼っていなかった。見やすかった状況があるからそう言ってしまったのかもしれないが。
「私に闇属性の適性がなくてごめんなさいね」
暗くなってから、セラの火魔法の灯火を使って、周囲を照らしながら進んでいったのだが、さっき・・・魔物の集団にGの群れに襲われたのだ。
幸いにもキリックの方向からきていたから、対処はそれほどきつくはなかったのだが、明らかにキリックよりも先にセラの展開していた灯火の魔法に向かって群がろうとしていたことを気づいてしまったので、3人で相談して、今は魔法を使わずに月明かりだけを頼りに進もうと決めていたのだ。
闇魔法には闇視という支援魔法があるのだが・・・闇魔法自体が希少であり、闇魔法が暗いという印象があり、その魔法が使えるまで習熟している人がいない。冒険者にでもなれば、夜に行動を起こすことが危険ということも分かっており、ギルドに所属しているある程度の闇魔法を使える者はあるかもしれない状況を回避するために習得している。
セラにはその適性がなかったのだ。自分の位置を知らせるように暗い森の中灯火の魔法を展開してはいたが、太陽が出ているときにはこちらの魔法の光には反応を示さなかったのに、夜になるとここまで積極的にセラの向かって襲ってくると誰が思うだろうか・・・思わないだろう。明るいときの戦闘の印象があるのなら。
そう彷徨い歩く果てに、一つの明かりが見えた。
それは足も歩き続けて疲れ、少し探索するつもりであまり食料も持ってなくて腹も減り、眠い彼らにとっては希望とも呼べる明かりに見えただろう。
そうして、遂に彼らはラガックとヌーがいると思われる明かりに向かって進んでいく。
しれっと変わる先頭・・・
しれっと更新遅れる作者。