63.
2人の目の前に現れた、黒い塊。
蠢きこちらに近寄ってくる黒い塊。
いままで、潜ってきたダンジョンにこのようなモノを見たような記憶はない。
自分たちに向かってくる塊に、2人は目を凝らす、何か情報を得ようとした。
はっきりと見て理解してしまった。
あれは無数の何かが折り重なり、こちらに向かってきているのだと・・・
黒く黒く黒く・・・そのどれもが光沢を帯びたような黒。
長くのばされている触角。
獲物を見つけたと、あの塊から、いくつもある複眼がこちらを見ているような気がした。
獲物を食べようと、鳴らされる顎。
あぁ・・・あれは、あの塊は複数のGの群れなのだと2人は理解してしまった。
「ははは・・・」
ヌーはGが雑食であるということを知っていた。テント付近に置いてある荷物の食べ物を食べられるという可能性を考慮して、荷物を背負いに向かった。
呆然と笑うラガック、ヌーが荷物のほうに向かったのを確認したあと、なるべく数を減らずべく後退しながら一本一本正確にGへと矢を射る。
「あの3人がいないときに群れとかついてないな」
ラガックは弓、ヌーは槍なのだから・・・
ヌーは槍なのだから振り払いで前に出ているモノならある程度後ろに後退させることができるかもしれないが、刃のついていないところで追い払ったとしてもそれほど数は減らせないだろう。
それにヌーは戦えるとはいえ、ポーターだ。アニスやキリックほどに戦えはしないだろう。
ラガックは弓だ。ナイフなども持ってはいるが、あれほどの数に自分の腰より低い位置にいる魔物だ。当然攻撃も当てにくいし、無理に攻撃しようとすれば、あの顎の餌食だ。
キリックやアニスの振り払いなら槍よりは範囲が狭くはなるが剣の刃で槍での振り払いより傷を期待できるし、魔法使いのセラがいれば前方に範囲攻撃をすれば・・・なんてのを考えるが、今はその3人はいない。ヌーとラガックの2人だけだ。
ヌーとラガックが全力で戦えばある程度の傷などを覚悟でやれば撃退はできるが、それにより食料などが無事ではすまないだろう。こんな広い場所で戦うとするならばだ。
「ヌー急いで階段にいくぞ!ここじゃ囲まれる、テントは放棄する」
「わかった」
ヌーがここまで来ている塊のひとつを槍で振り飛ばし、ヌーに単体でやってくるGをラガックが射抜く。
こうして2人は噛まれたりしながら、階段のほうまで後退した。
Gの群れ。。。作者なら悲鳴上げて逃げる。