62.
待てども待てども・・・魔物たちの姿はなく、ただ周囲を警戒しながら、戦闘態勢を維持していた二人。
「・・・・こないな」
「ラガック、間違いではないのか」
いつまでもこない魔物たちにヌーはラガックに向けてそう疑問を投げかけた。
「いや、聞こえていた鳥の羽ばたく音や鳴き声が聞こえなくなったってことはある程度の近くにはいると思うから、俺達の様子を見て、襲う機会を疑ってると思うんだけどな・・・うん、そう、思うんだけどな・・・」
そうちょっといつまでも襲ってこない魔物の様子に『あれ?もしかして俺の勘違い?』なんて、少し自分の考えに疑いを持ちつつ辺りを警戒していた。
「・・・そうか」
ヌーはそう相槌を打ちながら、戦闘態勢をある程度とき、焚き火の中に木をいれて、火を途切れないようにしている。
「あ・・・何が間違いだったのかね・・・」
ラガックは自分で警戒を促したこともあり、戦闘態勢を維持したまま辺りをもう一度見渡し、聞こえる音を聞き逃さないように集中した。
もう一度確認しておこう。
最初の頃は鳥の羽ばたく音、鳴き声などが聞こえていた。
魔物が俺達を見つけたなら、襲ってくるはずだ。
いつから聞こえなくなっていた?
いや、待て・・・その時に確か何か動く音があったな・・・
木を移動していたなら枝がしなる音が聞こえているはずだな・・・なら、地上にいるってことはこいつが聞こえなくなった原因か?
いや、羽ばたく音が聞こえているんだ、地上の魔物に空を飛んでいる魔物が自分から襲わなければ無理だろう、地上から攻撃手段があってもここは木々に囲まれて視界が悪い、その中で倒したはずなら、その音を俺が聞き逃すのは考えにくい。なら、これは鳥とは無関係か・・・地面にも注意を向けておくか。
「地面から何か来るかもしれん、ヌー、一応そっちのほうも注意してくれ」
「わかった」
どこで鳥が消えたか・・・羽ばたく音があったということは地面よりは上・・・こんな飛びにくいところで休んでいるとは思えないから、木の枝か。
鳥の魔物を倒せるんだから、木の上にいて、枝の揺れる音のしない魔物。鳥の魔物の同士討ちも羽ばたく音が聞こえないからない・・・
「なぁ、ヌー木の上にいるとしたらお前はどんな魔物を思いつく?」
「・・・木の上か・・・鳥と言いたいところだが、それではないんだな?」
「俺の耳に羽ばたいている音が今のところないからないな」
そうラガックがいうとヌーが少し悩んだ後。
「羽ばたく音がないなら、ムササビなんてのもあるな」
選択肢の幅が広がるが、戦闘音がなかったってことはムササビは考えにくい。戦闘音がない状態とはどんな状態だったのだろうか・・・
がさがさと地面を進む音がした。明らかに違う方向に行った仲間の足音ではないし、そもそも人が進んでいる足音ではない。
「・・・考えているところ悪いが、地上から魔物だ」
「あぁ、わかってるよ」
考えれば考えるほどドツボに・・・・鳥の魔物お食事中の主犯。