241.
そこは今までと比べて狭かった。
そこは太陽の暖かみのある光ではなかったけど、明るかった。
そこは血の匂いなんかじゃない・・・いい香りがした。
そして、そこには部屋の隅でガタガタ震える幼女がいた。
・・・
・・・
・・・
む・・・無罪です!!!!!
剣や大楯もってるけど、俺は何もやってません!!!
まぁーー誰に言い訳を聞いてもらえるわけでもないし、ひとまずは周りの確認を終えて、自分のことを確認しようと思えば・・・さっきまで魔物の群れに襲われていたと言われても信じられないくらいに清潔であった。
知らぬ間に洗われたのか?とすら思えるくらいに装備から血の匂いも汗臭さもしない。
幼女に会うために洗われたのか!?なんてアホなことを考えながら、やはりと・・・幼女以外の場所に再度目を向ける。
クローゼット、ぬいぐるみ、ベット、カーテンで閉め切られている窓?に、カーペット、小さな本棚、小物が転がっている以外綺麗な机、と・・・鮮やかな壁紙・・・あーついでに照明か。
そこに窓らしきものが見える以外にドア一つない不自然すぎる部屋。
そして、この部屋に下に行く階段なんてものは存在しなかった。
つまりここが・・・最下層???
なら、敵は幼女・・・一般的な大人ならその細い首を簡単に手折れるだろう。
・・・
いやーーー無理だわ。
幼女殺してハッピーエンドなんて胸糞悪すぎて反吐が出る。
殺した時点でもう俺の中では例え救われたとしても、バットエンドだろ。
あの爺さんはこれから先は生を謳歌せぬ死人しかいないと言われて分かっていたとしても、それが本当のことだとしても、それで納得して殺せるわけがないだろ、ふざけんなよ!
それがもう終わっている生だとしても、死ぬのは怖いし、痛いのは嫌で、苦しいものは苦しいんだよ。
本体じゃなくて、ホムンクルス使っている俺だからこそ言えるんだけどね・・・まだ本体の生は終わってはないけど・・・。
ラスボスが悪人面しててこっちを殺そうとして来たならともかく、幼女よ?震えてる幼女なんだよ???
無理だわー殴れないし、殺せないよーーー悪人なら顔面を容赦なくタコ殴りにして、おら!ここからの脱出の仕方吐けや!!となれるんだけどね~~
いや・・・幼女が最下層にいるからって、幼女がラスボスか???
脱出の仕方を知っている奴って言われたら、あのおじいさんの方が可能性があるんだよな。
何もここでずっと考えて立って状況がよくなるわけでもないし、脱出の仕方を探すか。
可能性があるとすれば・・・窓か?な?
そこに行こうとするとこちらを見ていた・・・いや、警戒していた幼女の方がビクッと震え、こちらと距離をとるようにさささっと部屋の隅を移動する。
いやーまぁ、いきなりこの部屋に土足で踏み込んでいる俺が全面的に悪いから、怖がられるのはいいけどね!!!!
いきなり部屋に知らない男が来て、『怪しいお兄さんじゃないよ~怖くないよ』なんて声かけれるわけねーだろが、どこからどう見ても不審者でこえーよ!!!!
精神にダメージを受けながら、カーテンを開き、外を覗いてみれば・・・脱出の手がかりになりそうなものは何もなかった。
真っ白な壁だけがそこには存在していた。
壁を調べようにも、窓はビクともしない。
ここから・・・どうしよう・・・窓以外に手掛かりある??
階段の入り口であり得そうなのは・・・机の引き出しとか、クローゼットとか?
でもさ、考えてみろよ・・・お前ら幼女の部屋と思われる場所のクローゼットを幼女の前で開けれる???
開けれる奴がいたら、俺が『変態』間違えた、『勇者』の称号をやろう。
・・・ん~と悩んでいると窓に反射されて、幼女がこそりと移動していることに気付いた。
窓をじーっと確認していると・・・幼女のそばに扉が出現した。
「・・・ふぁ!?」
あ・・・まずいと、高速で幼女がドアノブに触れる前に扉の前まで移動した。
先に俺の手がドアノブに触れたのを見た幼女は小さく悲鳴を上げて逃げていく。
うわっーー高速で逃げてくよ・・・なんだろうね、うん、地味に精神的にじわじわとダメージ来てるね、今。
こっちとしては助けたつもりなんだけどな・・・いきなり扉が現れるなんてほぼ罠しか考えられないやん・・・罠じゃなくて探索先が増えているならそれはそれでこれからは幼女の行動見守り隊になるけど。
幼女から見れば自分を逃がさないようにしている極悪人かな、ハハハ・・・はぁー。
ガチャッと幼女から見せないように少しの隙間を開けてそこから中を覗いてみると・・・真っ赤の部屋に男女二名の死体が無造作に転がされていた。
・・・両方とも幼女と同じ黒髪以外は・・・何も分からない・・・身体も顔もグチャグチャにされていたからだ。
「・・・」
うっと吐き気を催しながら、その扉を閉める。
・・・
後ろを振り向いたときに血濡れの包丁を持った幼女の幻影を見たような気がした。
だけど、その光景を急いで頭から振り払うと・・・そこにはただ今までと同じように隅で震える彼女の姿があるだけだった。
もしあそこに幼女が行ったとしたら、俺を犯人だと決めつけて、今の幻覚のように殺しに来るかもしれないけど・・・ここは行けないようにした方がいいと思い、ドアノブを剣で思いっきり斬る。
鈍い金属音を響かせながら、床にドアノブが転がった。
一層震える幼女・・・幼女から見れば、逃げられないように監禁されたと思われても仕方ない構図だよね、うん。
ここからどうしようと悩むと・・・扉が消え、上へ昇る階段が現れた。
そして、そこからは上からこちらへ降りてくる足音。
これは2人が来たのかーー!!
1人より2人、2人より3人!
何かいい案が浮かぶかもしれない!と階段の前で2人が来るのを待ち構えた。
殺す、殺せ、殺して、犯して、嬲れ
命を冒涜せよ
惨たらしく殺せ、絶叫で満たせ
そして、憎め恨め
憎悪憎悪憎悪
己が身に晒された恐怖を絶望を糧に
呪え呪え呪え
スベテヲ
壊せ、犯せ、殺せ
人を、国を、世界を
この世全てを絶望で満たせ
『
ある者は一刀のもとに
ある者は苦しまぬように眠らせるように
ある者は尊厳を貶めるように
ある者は不満をぶつけるように
ある者はただ無機質に
【幼女は殺された】
そして、彼らは光に導かれるように現世へと還って行ったのです
ただそこに等しく彼女の死体を残して。
』