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泥のダンジョンマスター  作者: ハル
251/255

239.


 わー原っぱだーあははは・・・はぁー。


 ・・・さて、現実逃避をやめて、今の目の前の状況をしっかりと目で見て、脳に判断を仰ごうじゃないか。


 老人が1人はしゃいでる。・・・とても元気にはしゃいでらっしゃる。

 『うひょひょひょひょ~♪』と奇声を上げながら、走り回っている。


 その先に見えるのは階段・・・つまり、この人が黒い人の同類?門番?いや、、、階段の守護者!!で、いいわけなのだろうか・・・?本当に?守護者違いとかそういうんじゃなくて?


 こうね?さっきみたいな分かりやすく、この先入ったらお前ら抹殺な・・・みたいな区切りがされていない。

 禍々しくもない・・・ていうか、ぶっちゃけお爺さんを5人でちょっと気絶してもらって・・・いや、脱いだら、筋肉ムキムキの・・・歯がピカーンと光る系のマッチョジイサンかもしれない。


「うひょひょ~土じゃ!!土!!」


 ・・・目の前で土が剥き出しの地面にダイブして老人が土を食べだした・・え?・えー?・・ゴシゴシ・・-え?!・・・・・・もうこの人見ないふりして、階段の方へ走って行っていいんじゃないだろうか?


 絶対関わっちゃダメなやつだよ?あれだよ・・・絶対口の中に『お前も食べろ!!』とか目を血走らせて、口からよだれと土とミミズを垂らしながら、来そうな感じのヤバい人だよ!!!

 絶対そうだよ、そうにキマッてるよ!!

 アレは肉体的じゃなくて精神的に殺しに来てるやつだよ、きっと!

 無言で目と目が合い、男たち4人の心は今一つになった『これには関わらない方がいい』と・・・無視して、早く階段の方へと行こうと。

 だが、それを手で制し、魔術師は先へ行くのを止めた。


「・・・ちょっと待って、あの人は幸いここから動いてない限り攻撃はしてこなさそうだし・・ね?少し心を整理する時間をくれないかしら・・・本当にちょっと待ってて、それと一応言っておくけど、黙って私より先に絶対に出ないでね」


 魔術師が手で顔を覆いながらそう懇願してくる。

 あの場で動けていた魔術師が止めているのに、自分が最初に行くなどと言うことは騎士も冒険者も、俺もしなかった。

 ・・・待つと言われたら、待つ・・・1人で行けば、土を投げ込まれる標的が俺一人になってしまう・・・(デコイ)は多ければ多いほどいいのだ。





 魔術師が深呼吸をしているときに突然階段の方から声がかかった。


「はぁーつまらんのぉ」


 さっきまで奇行していたとは思えないほどに威厳に満ちた声で話しかけてきた。


「上の階層の禍々しいものを5人でかの者を退けてきたのじゃろう?ならば、わしも最初から殺す気でこればいいものを・・・はぁーまったくまったく暇すぎて、久しぶりの土の感触を味わっておって、隙だらけじゃったろうに」


 その時に深呼吸をしていた魔術師からその老人に声がかかった。


「・・・・何をしていらっしゃるのですか、お師匠様」


 絞り出すように、あの奇行をやっていた老人が自分の師匠という現実を受け止めねばならないという苦痛を飲みこみ、その言葉を吐いた。

 その言葉に一瞬4人は魔術師の方を見るが、その苦虫を噛み潰したような顔にこれには無関係だろうと察した。


「おぉー弟子ではないか、うむ、わしは蘇った・・・いや、正確には違うが、まぁーうーむ・・!・・そうじゃな、弟子が心配で死者の国から舞い戻って来たのじゃ」


 迷うように、言葉を選ぶように紡ぎ・・・良いことを今思いついたという顔でそう良さそうな言葉を紡いだ。


「・・・そうですか、なら、もういいですよね・・・彼の世に帰ってください」


 感動的!素敵!なんて言葉が返されるわけもなく、冷たく言葉というナイフを返された。


「そんな・・・冷たいことを言われるなんて、わし泣きそう」


「彼の世に帰ってください」


「わし師匠ぞ?お主の亡き師匠ぞ?・・・もうこうなんかあってもよかろう?それはちと冷たすぎじゃないかのぉ」


 冷たい言葉を二度返されて、老人は悲しくて少し目に涙を浮かべながら話す。


「・・・」


 その言葉には言葉のナイフを放つのもやめて、魔術師は己の師匠を見た。


「まぁ~術者に留められておるから、わしが勝手に帰ることなどできんがのぉ」


 悲しそうな雰囲気などさっきの一瞬のみで、もうすでに威厳も悲しみも満ちていない軽い感じになっていた。




「さて、さて・・・わしはこれでも国に仕えていた身じゃ、操られるのも癪じゃし、まぁ~役目をしなければ、思考ごと操られて殺す道具にされかねんがのぉ」


 まともな言葉を吐いた時と同じように威厳に満ちた声だ・・・何も知らなければこの覇気に後ろに少し下がっていたかもしれない。

 だが、奇行をしていた人が正気に戻ったところで・・・威厳とはなんなんだろうか?簡単に作れるのが威厳なのだろうかと余計なことを考えてしまう。


「先に飛び出す愚か者がおったら、そやつを拘束して、抜けさせるつもりじゃったが・・・お主ら自身に決めさせよう・・・この先へわしを倒し全員で進むか、1人おいて4人で進むか決めよ・・・わしも上のやつもこれからの敵も生を謳歌せぬ死人、遠慮せずに殺す気でかかって来い」


 ・・・飛びださなくてよかった。


「まぁーわしが強すぎて、上のやつのような殺す気はなくとも、うっかり殺してしまうかもしれんのぉ」


 うっかりで殺されたくないです。


「・・・あの人、私の師匠で元宮廷魔術師で・・・強いわ」


 ・・・俺、囮、無理、死んじゃう。

 染みついたこびりついた匂いは消せるのかな??


 ただの抱きしめられた時に土の匂いと洗剤や、紙の匂いなら・・・どれだけ・・・。

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