235.
カチャリと地面がハマった音がした瞬間に、天井がずれてる。
「・・・あっ」
ブゥゥンと・・・ハンマーが中央を歩いているルトラに目がけて、迫ってきた。
「くっ!せいっ!!」
当たる!!そう思った時にはオルゴさんがハンマーの前にまで出てきて、受け止め、逸らす。
その止めている数秒の隙に全員ハンマーの範囲外に退避して、逸らしたオルゴさんもすぐにその範囲から逃げる。
一番前を歩いて罠を発見しようとしていた2人はルトラさんに軽く謝り、ルトラさんはオルゴさんに礼を言い、2人はオルゴさんは凄いと褒め、ランドンさんと俺は何も言わずにただ先がまた歩み始めるのを待っている。
冷たい2人?・・・いや、うん、これには理由があるんだ。
さっきから何回も罠を作動して、それを何度も受け止めているからね・・・うん。
最初は『へぇ~さすがね』とか、俺も『わー凄いですね』とか褒め言葉を贈ったよ?
2回目から・・・すごいな~という目線を、3回目からへぇーーという視線を、4回目から?胡散臭そうな人を見る目線と称賛が混在した視線を、その間に罠を2人が発見して発動しなかったのをみて、5回目以降は・・・「また?」という視線になってしまった。
・・・まぁ、うん、発見できなかったのは前の冒険者の2人だけど、罠を踏んだのは・・・罠を作動させてしまっているのは騎士のオルゴさんなんだ。
なんであの人ばかり罠に引っ掛かっているんだろうか?
鎧で重量増加しているから、作動しちゃう罠しかないんじゃなかろうかと勘繰ってしまう。
それでまだ被害は出てないし、鎧を脱げとは言わないけど・・・全部が全部罠はハンマーで前の4人に集中して攻撃されるし・・・はっ!?まさか俺の前にいる魔術師のランドンさんが黒幕!?・・・いや、ただ単に被害が出てないだけか、その理論なら俺も罠の被害にあってないし・・・。
被害は3割前の2人、6割騎士さん、1割マントさんだしね・・・罠の被害者率・・・10割罠の加害者は騎士さんだけど・・・。
「ふぅーさっきから罠ばかりで魔物の1匹もいやしないな・・・こんな罠だらけの迷宮なら、1人くらい罠探知ができるやつがいて欲しかったな・・・」
「・・・そうだな」
前の2人がそんなことを話しながら、罠を警戒しながら、一本道の先へと進んでいく。
それ以外の会話はぱったりとなくなった。
冒険者×2、騎士、マント、魔術師、観光客だよ?・・・会話続かなくても仕方ないじゃないか。
俺の前を歩いている魔術師の人になんて俺は声をかけたらいいの?・・・あ、今日は天気がいいですね~とか迷宮の薄暗い中で話しかけるような人間になれと!!
・・・唯一盾繋がりでオルゴさんとは、話ができそうだけど、さっきからプシュープシューと頭の鎧の隙間から白い息が漏れ出ているんだよ・・・超話しかけづらい。
そんなこの人大丈夫かな?という若干の心配をしても、『変わりましょうか?』なんて死んでも口にしない・・・俺が前に出てあの罠をまともに食らったら、死ぬやん?死なないけど・・・ホムンクルスが変わりにグチャッと真っ赤なお花を地面?いや、壁に咲かせちゃうよ。
あのハンマー何キロくらいあるんだろう・・・『ナイトシールドですか??それでよく防げるなんて凄いですね!』と話すなら何を話そうかなと頭の中で考えながら、ただ後ろをひっそりと付いて行く。
そうして、前の2人が立ち止った・・・声をかけづらそうに騎士さんのほうへ目線を向ける。
「あぁーーまただ、頼めるか?」
それにこの2人のパーティ斥候?罠探知は少しはできているけど、ここには罠解除ができる人がいなかった。
狭い範囲ならそんなの避けて進めばいいじゃないかと思うのだが、勢いよくジャンプしても引っ掛かりそうな床全面があからさまな色違い・・・踏めと、罠にかかれと誰かが言っているような気がする。
そういう時に頼りになる騎士様。
そう今まで解除できない罠は全部漢解除だよ!!騎士様素敵!・・・でも、逆に無傷すぎて、同じような楯を使ってる俺は若干ひくけど。
高い鎧をそろえれば、俺もあなたのようにそんなことができるように・・・なりたくないけど、その防御力が妬ましい。
最初の5回、漢解除6回、それ以外の騎士様が作動させた罠の数17回・・・計28回・・・その罠の末に・・・俺達は辿りついたんだ・・・下へと続く階段へ。
「けほっ・・ごほっ、うぉえ、ん゛゛・・・はぁーはぁーはぁーさ先へす、進もうじゃないかぁーはぁー」
そう言うとオルゴさんは階段からすぐは何があるかが分からないからと先頭で階段を下りていく。
「・・・あのランドンさん、オルゴさんに何かしら回復魔法って使えたりなんかしませんか?」
「・・・無理よ、私は回復魔法は使えないわ」
「・・・そうですか」
「・・・そうよ」
この時初めてランドンさんとまともに会話した。