233.
「な~に~これ~」と声なき声で叫ぶ。
そうだ、うん、そう・・・確かに門から入ったよ、、ね?うん、入った入った。
ギルド証とか確認されて、商人の人から宿を聞いて、門で別れてさぁ!観光だ!ってとこだったよね?
それがどういうことでしょう・・・空は石色、静かな静寂が辺りを支配して、見渡す限り石のこの場所。
そして、互いに警戒の色を見せながら、近くにただずむ5人の人。
唯一の道となっている場所の前にこれ見よがしに置かれる看板。
『無差別に選ばせてもらった5人でこの迷宮を攻略せよ』
・・・1、2、3、4、5・・・そして、俺の6。
とりあえず、この看板さん書いてあること嘘やないか・・・。
でも、この看板が本当のことを書いてあったとしたらさ・・・正直言っていい?俺がイレギュラーやろ?わかってるわかってるよ・・・だいたい今さっき門をくぐった人間がこんなイベントに呼ばれるわけないやろ(((現実逃避
それに俺、今さっきまでこんなガチガチな装備してなかったもの。
大楯は同じ宿に泊まるんだからと、好意で荷台に置かせてもらったままだったし、革鎧なんて着て観光する予定なんかなかったし、そもそもそれも大楯と一緒に運んでもらってる荷物の中!
つまりだ!うん、そうだ、これは夢だ!!夢に違いない。
ただ1人この現実を見つめていなかったら、誰かが口を開いた。
「先へ進もう」と。
『勝手にいけや!俺はここで寝て現実に帰還するんだ!!・・・いや、観光ライフを満喫するんだ!!』なんて言えるわけもなく、ただ成り行きにじーっと見守る。
最初に発言するカリスマも、みんなを取りまとめることができるリーダーシップ?そんなもんはない!
「それはいつまでもここに立ち止まってないで、先に進まなきゃ・・・いけないでしょうけど・・・非戦闘員はここで待機するべきよ、この先になんの危険があるともわからないのだから」
非戦闘員??・・・俺・・・大楯持ってる時点でもうないわ、言い訳もできないような装備だわ。
誰が大楯持った非戦闘員です!なんて言葉信じる?信じるわけないやろ・・・常識的に考えて。
そういえば、5人とも5人で武器とか持ってるよな・・・杖とか剣とか・・・俺の上位互換っぽい盾と剣と全身鎧の騎士とか・・・重そう(他人事)。
包丁とか、トンカチとかそういう作業用とか家庭用の道具じゃなくて・・・無差別ならもっとこう・・・子どもとか老人とか入っていても良さそうだよな?
顔はマントで隠している人がいて、全員のは確認できていないけど、服から覗かせる手とか、年季の入ったシワの多い感じはしないんだよな・・・無差別ってなんだろ?
・・・なんかマントで顔隠してもいいなら、俺も隠そうかな・・・顔面偏差値が高くて、無性に自分の顔を隠さなきゃいけないという使命感が芽生えそう。
マントは最初から着てたから、今も付けられているんだよな・・・どういう仕組みで装備がつけられているんだろ?
そんなことを考えていると、ガキンッと刃物が落ちる音がした。
え?!争い?・え?・・え?逃げなきゃ!
そんなことを思い逃げる準備をしながら、音がした方向をみると、今さっき非戦闘員がなんとか言っていた人の前に魔法陣が浮かび、その人の足元にはナイフが落ちていた。
「いきなり何すんのよ!」
高い声でそのナイフを投げたであろう人物に問い詰める。
「咄嗟にそんな防御魔法を構築できる人間が非戦闘員なんて戯言誰が信じるか、それに当てるつもりなんてないわ」
そうすると落ちてたナイフを拾い、鎧を着ている人の腹にナイフを投げると、当たると思った直前にナイフは散り散りに砕けて消えた。
・・・Oh、マジックぅぅ・・・どうやってんやろ?あれ。
「なっ!?・・・はぁーーーわかったわよ、行くわよ!行けばいいんでしょ!」
その光景を唖然として見ていた女はそう口にした。
それに自分が非戦闘員だということを言った後ろめたさもあるのか、それ以上ナイフのことについてその男に抗議することはなかった。
「うるさい、高い声が頭に響く」
「あぁーはいはい、ごめんなさいね・・・ふんっ」
最悪の雰囲気のまま5人は先へと進んだ。
俺?1人でこんなわけのわからない場所で寝られるわけないだろ!ふざけんな!
・・・絶対フルプレートの人の方が頭に響いているだろ!という突っ込みは胸の中にしまいながら寄生虫のように5人についていく。
これから戦闘描写があると思うと描こうとする手が止まる不思議~~。