227.
「俺・・・必殺技が欲しい」
いつも通りの稽古だったはずだ。
マリウスが何かしたかだとか、そういうことは一切何も見ても聞いてもいないは、、、『あ、これ、僕の言ってた英雄譚のせいだ』と気付いてしまった。
「必殺技?ですか?なぜそんなことをいきなり聞くんですか?見せびらかすための技ですか??……剣技で充分じゃないです?」
思い当たることは頭の中に思い浮かべてしまったが、それを顔には一切出さずに呆れたような、困ったようなそんな声と顔で聞き返す。
「ゲームの中のホムンクルスにも技が表示されないもの!魔法の欄に悲しく生活魔法(火)とかしか表示されない悲しみを!!!分かれ!必殺技の欄には空欄ばかり、初期キャラだけど、やってる時間的に考えてもっといろいろあってもいいはずじゃないか!!たとえば今やってる身体強化とかさ~」
ゲームをやってる時間(僕の仕事をする時間が増える)
・・・それを考慮しろと??面白い冗談ですよね。
はハハ、まぁ、今さらですね。
別に下手にいじられても、仕事増えるだけですし、気にしませんけど・・・
「ハァー身体強化とか魔力感知って、使ってる人の技術ですし・・・あのゲームでの再現は無理ですよ?憑依している状態ならともかくですけど。
そもそも遠距離で操作するのって結構大変なんですよ?それをコントローラという遠隔の道具に変えるのって、実は簡単に見えて、難しいことなんですよ?
・・・本当に手をつけて操作する水晶から今のテレビゲーム風にするの大変だったんですよ?あ、これは友人の愚痴です。」
「たたかう以外のー攻撃手段が欲しいよぉぉぉ、たとえば身体強化(3ターン攻撃力アップ)とか」
そんな悲壮感を出しながら、これはすごいんです、我慢してくださいとそうは言わずに遠まわしに諦めて下さいという雰囲気を出しても、マスターには効果がなかった。
「指輪使って、あっちに憑依して身体強化を見せびらかしに行けばいいじゃないですか、地味ですけど」
見る人が見れば、結構いい感じ?というのでしょうか、高い水準でできているんですよね・・・魔力感知のあれはともかくとして、身体強化は。
まぁ・・・強化効率という点では微妙なんですけど
そういう風にほめてしまえば、また自分の知らないところで身体強化の効率を上げようとするかもしれないので、そんなことは決して口には出さないマリウスであった。
「憑依はしても、こっちに戻ったら~あっちのホムンクルスはできなかったら、意味ないじゃないか!
それに、このゲームの方があっちより落ち着んだよー
そうこれは!実家のような安心感なんだよ!かけがえのない安らぎなんだよ~
・・・選択肢で勝手に会話が進むし、ごほん、そもそもここは今の実家って言い方でいいのかな?実ダンジョンだけど」
そりゃ・・・あなたダンジョンマスターですもの。
「・・・呼び方なんて、住処でいいんじゃないですか」
「へーあ、うん、それにガネルたちもどっか他の町行っちゃったしさーー司書さんもなんかいつの間にかいなくなってるし、もうね!喋る相手も絡む相手もそんなにいないから、正直憑依する意味がない!
だから、こっちのを充実させ、あ、、
そうだそうだ!憑依の意味に食べ歩きとかはあるけどさーー、食べて美味しいって分かっても実際帰ってくるとお腹減ってて、それがスパイスになって、いつもより食べて太りそう、これは関係ないか。
そもそもこっちのご飯の方が美味しいし、一度食べればダンジョンコアからお取り寄せできるし・・・食べ歩くといつもより美味しくない食べ物が美味しくなるって不思議だよね」
ガネルって誰でしょう?司書さん?図書館にでも・・・いえ、あの規模のところに図書館なんてあったでしょうか?
ヘェーこっちを充実?ですか・・・あははは、まぁ、そんな簡単に充実させられるわけないですけど・・・
ころころと話が変わりますね・・・なんで、必殺技の話からマスターの知り合いの話になったり、果ては食べ物になるんでしょうか?
「ハァーつくってくださいよ」
もう面倒になって、ちょっと投げやり気味に答えてしまった。
「どうやって友達を作るんダーーー」
・・・必殺技のだったんですけど、そうですか・・・友達になりましたか。
必殺技のよりこっちの方が僕の負担も少なそうですし・・・
「冒険者ギルドでチームの募集でもしてみたら、どうですか?」
常識的にそう返して見るが・・・
「いやいや、それはないよ。
なんか不定期にログインしてるやん?不定期って言っても、朝早くからやりたいなーとか、昼からやろー。今日は夜、いや深夜からだ!・・・夜は受付嬢におこ、、止められたし、深夜はそもそもギルド運営してなかったけど、その時に衛兵に捕まりかけたけど・・・
いや、まぁ、それでも2日に1回に依頼を受けて達成はしてるけどさ、けどよ?
もしだよ、パーティを組んだりしたら、何時に集合とか、そういうパーティに、団体行動に自分のゲームをやる時間を決められるのが気にくわないし、ゲームくらい好きな時間に好きなことをして、自由にやりたいんだ!
それに知らん人とずっといたくない、あんまりキツくはないけど、戦闘とか命のかかる仕事をするわけよ!そういう不安要素は極力排除したい!」
つまり、面倒くさいと。
不安要素って・・・全然鍛えているじゃないか、、、それで死んだら、もうそれはただ運がなかったですよ?
「なら、パーティも友達も諦めてください」
はじめはみんな知らない人じゃないですか・・・野等のパーティを数度繰り返して、相手の人柄とか、技とか、癖とか見て、自分に合うか?合わないかを判断するのに、最初で躓いてしまったら、できるものもできませんよ。
「知恵をーその叡智をーおかしくださいましー?」
・・・無理じゃないですか?普通に考えて
「はぁーーーそうですね、それなら奴隷が一番それに現実的ですよ?」
「イヤ」
その問いにはマスターは即答だった。
まぁ、知ってましたけど・・・
それ以外は従魔とか・・・世話とかも専用の施設か、自分で行わないといけないですし・・・マスターができる??この案はなさそうですね。
「そういうと思ってましたよ、んーなら、んーーないです」
そう断言する。
「ゴブリンや魔物をホムンクルスを操作させてやらせようかなーとも思いましたが、彼らにそんな知恵ありませんし、僕がやろうにも忙しいですしね」
片手間で木人形を操れるのは魔力を使って直接操作しているわけで・・・さすがに片手間で操作するにはマスターのホムンクルスがいる場所はここからだと遠すぎる。
「そうだ、スライムを仲間にしよう」
気が狂ったのか?と一瞬そう思ってしまったが、マスターの視線の先にスラ美?スラぽん、スラきち、と呼び方が全く定まらないスライムがいた。
そのスライムは丁寧にみかんの皮をむくとその実を食べ、そののちに皮を手?触手にとり、消化した。
「あの子ならやれそうですけど、2台目の水晶テレビは自分で買ってくださいね」
「ぐぬぬぬぬ、ポイントがーない!」
そう両手をばんざいさせて、降参のポーズ?をとった。
「そりゃ、ドラゴン買いましたもん」
「ぬーん」
そのポーズから力が抜け、だら~んと床に溶けたマスター。
「そんな不満げに見つめても、買ったのはあなたでしょう」
上目遣いでこちらのほうを見つめてくる。
「そだね」
「はい、そうです」
床を転がりながら、ゲームのコントローラーのところまで転がっていく。
そうして、マスターは必殺技の話は忘れて、テレビ画面のゲームへと戻って行った。
だいたい前の投稿してから、1日でだいたいの話の流れの下書き終わってるのに、投稿時間が前より遅くなる作者がいるらしい。