表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泥のダンジョンマスター  作者: ハル
237/255

225.


「ゴブッ!!!ゴブゴブ!!」


 何やら畑の方が騒がしい、そんな騒がしい声を横目に近くのゴブリンに目的の種のことを聞いて、それがその騒がしい場所にあるということを身ぶり手ぶりで教えてもらえた。


「ゴブ?」


「ゴブゴブ・・・ゴブッ!」


「ゴブぅ!!」


「「ゴブッ!!」」


「ごぶぅー」


「ごぶごぶ」


 2人?2体で何かを動かしているように見えるが・・・原因で考え付くのが今回収に向かおうとしている種のことしか考えられないが・・・そんなことを思いながら、急ぐことでもないのでそれを見ながら、歩いていると、突如袋にゴブリンが叩かれ、吹き飛んだ光景が目に映る。


「・・・」


 気絶はしているが、ゴブリンの命に別状がないことを確認すると、恐る恐るその袋を手に取る。


「・・・軽い」


 今さっきゴブリン二体がかりで持ち上げようとしているところを遠目で見ていた時の予想より簡単に持ちあがった。

 ・・・僕とゴブリン二体が同じような力とはそんなことは思ってはいませんけど、何の抵抗も重さすら感じさせない軽さだ。

 それが二体のゴブリンを吹き飛ばした光景を見ていなかったら、普通の種袋のように誤認するだろうが、何かしら厄介事の感じがする。

 それと気絶している二体の横に代わりの種袋を置いておく。


「・・・ゴブリン達が持ち上がらなかったのは、何かしらの呪い?制約ですかね?」


 それがなんなのか分からなければ、対策のしようがない・・・というわけで、封印しましょう。

 黒い靄の中にそれを突っ込もうとするが、一向に入らない。


「・・・」


 2、3度繰り返して入らなかったら、それ以上試すことはやめた。

 ゴブリンのように吹き飛ばされ、気絶はしないが、好き好んで種袋に殴りかかられたくはない。

 そして、地面にうごめいているものを見ないために、空高く種袋を掲げたと思ったら、こう口にした。


『鑑定』




 神袋 壊れない、汚れない、中の種が漏れない。


 使命『種を亜神龍の近くで育たたせること』

・それ以外のいかなる場所には芽吹かない。

・無理やり取り出そうとすれば、妨害する。


『種』

滅龍果物(ドラゴンスレイヤー)


『神具』

如雨露(ジョウロ)


『この鑑定を見た者は24時間以内に植えなければ、不幸が訪れる』




「・・・」


 神の呪い・・・ですよね?いえ、ただの普通の不幸になるだけなら・・・いえ、神様の普通の不幸なんて、普通に死ねますよね・・・そうですね、そうですね・・・悲しいことですけど、あの子の親には死んでもらいましょう、僕も死にたくないですし、仕方のないことです。

 マスターには僕の方で使えそうな魔物をあげましょう・・・そうしましょう。

 これはただの龍のそばで植えるだけです・・・それだけです、それだけなら不敬じゃないのです・・・僕は何も使命のところなんか見ていません。




 隠し扉(剥き出し)からあの草原へと降りて、何かしらの害があったら、嫌なので階段から見えなくなるほどの距離のところにこれから畑を作ります。

 最初に、火魔法を使って、畑にする予定の土地を燃やして、生えている草を焼きます。

 次に地形操作をして、ゴブリン達の畑をまねたような土にします。

 袋を取り出して、中の種をてきとーにまきます。

 地面でなんかもごもごと動いて、等間隔に種が動いているような気がしますが、気にしたら負けです。

 それが畑のない場所に動こうとすれば、周りの草が一斉に枯れて、地面を抉りながら進んでいく。

 最後に如雨露(ジョウロ)を傾けて水を上げようとすれば、空から雲一つないのに雨が降ってきます。

 その水は果実の種が植えてある付近の場所にだけ降り注ぎ、その場所にいる僕をすり抜けて畑しか濡らしません。


「神具ってなんでもありなんですね・・・畑作らなくてもまくだけでもよかったのでしょうかね」


 そんな様子を見ながら、濡れないとしても好き好んで雨の中にいたくはないので、畑の範囲外まで出てくると、如雨露(ジョウロ)が変形して10mくらいの周りを取り囲む柵になりました。


「・・・ほんとなんでもありですよね、あ~そういえば、袋の方は」


 種と如雨露(ジョウロ)を出し終えた後にポケットにしまってあった袋を探すと、焼けてボロボロになっていた。


「・・・いえ、95%オフフで、この草原とスライムと子龍って、、、割にあいませんよね」


 次からは下手にそういう商品を買わない方がいいですと次からは忠告しようとここに決めたマリウスであった。

 そんな決意をしていたら、すくすくとその果実は成長し、辺り一面に甘い香りを漂わせ始めた。


「・・・ドラゴンスレイヤーって美味しいんでしょうか??」


 その甘い香りに自然と自分の口からよだれを出そうになるのを我慢しながら、そんなことを考えていた。

 その食欲を刺激されながらも、これから来る龍のことを考えながら、あの果実は何を持ってドラゴンスレイヤーとなっているのか?

 その果実そのものが龍にとって毒なのか?

 それとも果実そのものが魔物に変化してドラゴンを殺すのか?

 そんなことを考えていると柵の隙間から覗ける地面には一面赤い果実が実っていた。


「毒ですかね」


 そう結論付けたその時にマリウスの全身に影が差す。

 見上げれば、ドラゴンが堂々とした姿でマリウスを、いや、果実を見下ろしていた。

 果実を食べるためにその龍はその身を地面へと下ろそうとするのだが、その速度を落とした瞬間に一斉に赤い果実は龍めがけ、『ブウォン』と鈍く重い決して果実が出していい音ではない音を響かせながら、飛んだ。

 その瞬間龍のほうに重いとそう表現できるほどの魔力の圧がこの世界を覆った。

 その一瞬で果実は全て綺麗に真っ二つにされ、龍に当たる軌道から逸れた。

 けれど決して重力でその実を地面に落とし、ぐちゃぐちゃになるわけでもなく、全ての実はただ空に浮かんでいた。

 そして、龍は幸運にもマリウスを見つけてしまった・・・マリウスにとっては自分が犠牲にしようとしていた・・・いや、できるとは心のどこかでは全く思ってはいなかったが、自分が神の価値観の不幸を押しつけられたくないがためにそれを押しつけようとしていた龍が不運にも自分の方へと降りてくる。

 そうして、自分の最後の時を覚悟しながら、目を閉じていたら、いつまでたっても痛みはこないで、自分の近くから甘い香りが漂ってくる。


「・・・」


 そこには差し出された果実が置かれていた。

 龍はそのほとんどの果実を自分と一緒に飛ばし、それを食べながら、どこかへと去っていく。


「ははは・・・はぁー疲れましたね」


 その滅龍果物(ドラゴンスレイヤー)は龍を殺すための果物だ・・・弾丸のように。

 龍の身体をえぐるくらいの大きさだ・・・つまり、それは相応に大きい。

 

「普通なら持ち帰るのも一苦労ですが・・・」


 今回は黒い靄に収納ができて、楽に持ち帰ることができた。






「こ、これは!!!うまい!!」


「かぷかぷかぷかぷかぷ、けぷっ、かぷかぷかぷ」


「ぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよっっっ!!!!」


「・・・」


 マスターは美味しいと言いながら、それを頬張る。

 イオルは何も言わずに黙々とそれを食べ続ける。

 子龍は満腹そうなのに、己の限界まで食べ続ける。

 スライムは小躍りしながら、果物の赤色に変色するくらい食べている。


 マリウスもその様子を見ながら、自分の魔法で切り分けたその果実を一口。


「甘くておいしいですね」


 マスターたちは満足そうにお腹を膨らませながら、寝ている。

 子龍を見ながら、このドラゴンスレイヤー・・・案外その美味しさでドラゴンに争わせて数を減らすってやつかもしれませんね。

 この果実群は飛ぶときは同時ではなく偏差・・・避けようとしても、その動きを予想している2個目の果実に翼を抉られ、滅多打ちになって、最後はぐちゃぐちゃになって、その赤い畑に龍の血の雨が混ざり、また強さと香りと美味しさと弾数、いえ、個数が上がる。


 規格外の龍以外は絶賛死にます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ