223.
1日たった後の昼ごろに救出された。
そこには龍とごろごろするダンジョンマスターの姿が・・・というか、それが何を言うでもなく、ただただじっとマリウスの方を龍と一緒に見つめていた。
この時のマリウスはこう思っていた。
僕だって怖いものは怖いですし、その怖いというものが殺意というものを向けてこなくても、じっと自分を消し去れるほどの存在に見られるだけでも、精神的はきついんですよ?分かってます?
と自分が無言で帰ったことをいったん棚に置き、そんなことを思っていた。
「・・・黙って帰ったことは悪いと思ってますけど、それで帰ってこれなくなるなんて誰も思いませんよ・・・
起きた時の夜ご飯のときは呼んでも来ませんし、それに部屋も閉まってましたし、普通に憑依してあっちに行ったと思いました。
今日の朝いなかったのだって、徹夜でしていたのかな?って思いますし・・・
それにマスターダンジョンコアから直接じゃなくても、食べ物を用意できるんですから、別に食事が冷蔵庫に入れたままでも違和感もそんなにありませんでしたし・・・」
「・・・悲しかったな~~閉じ込められて・・・」
そうぽつりとつぶやくと目を伏せ、龍のほうへと顔をよせ、よよよっと、悲しそうな棒読みの声が聞こえた。
「あーはいはい、僕が悪かったです、すみません」
そう言ってマリウスは人形が作っていたできたてのお菓子をマスターに渡した。
龍の方にもそれが興味があるようで、鼻をひくひくさせたと思うと、その目を開き、こちらのほうにその視線を向けると・・・どこからか小型の龍がこちらのほうにぱたぱたとその翼を懸命に羽ばたかせながら、飛んできた。
こちらまで飛んできた小龍はそのお菓子を欲しそうに見つめていたので、一つあげると・・・もきゅもきゅと口を動かしながら、食べた。
食べ終わった後はその綺麗な翠色の顔を赤くさせ、回転しながら空高くまで飛び立った。
そして、数秒後にその落下の勢いを感じさせないまま、マリウスの頭に乗っかった。
そこが自分の定位置とでもいうかのように堂々とした佇まい。
それを面白がってか、可愛がってか、マスターはそれにお菓子をあげる。
小さな両手で受け取って、もきゅもきゅとその小さな頬に入る限り頬張る。
「・・・」
当然のごとく、食べているのだから、食べカスがマリウスの頭にぱらぱらと降り注ぐ。
何も言えない、その親という存在の龍が目の前にいるのに下手なことなんて言えもしないし、どかそうなんて行動をすることなんてできない。
そうして、持ってきた分のお菓子のほとんどを子龍が食べ終えた。
いざ・・・農場に行こうとするのだが、その小龍は頭の上に乗ったまま、時々身じろぎしているようで起きているようで、その親の方に助けを求めるように視線を向けても、何も吠えない。
この子龍ついてくるようだ。
「・・・監視ですか?」
マリウスは口にはしないが、内心でそう思った。
1日ぶりに農場へと帰れる~光が差すそこを抜けると~~~そこは落とし穴。
「ぐべっ」
マスターが踏み出したそこには地面などなく、ただ穴が広がっていた。
そのせいで顔面から土に突っ込んだ。
「・・・ここはどこ?ま、まさか・・・なんか面白い言い回しを思いつかなかった」
「はいはい、そこで転んでいないで、さっさとどいてください、ここの地面戻しますので、地形操作」
そんなことを言っていたマスターの後ろからついてきたマリウスがそう言って、魔法を行使する。
窪みがあったはずの地面は押し上げられ、周りの地面と同じような高さになったと思うと、倉庫がこちらに動いてきた。
ほとんど元通りになって、だが、いつもとは違って、隠し階段の部分がむき出しになっていた。
「あれ・・・そういえば、、、扉は?」
どこにもない・・・自分の行く手を阻んでいたあの扉は周りのどこを探しても、見当たらなかった。
「・・・消しましたよ、無理やり、、だって、パスワードなんて知りませんでしたので仕方ないじゃないですか」
「・・・・そっか、、、ないならもういいや、うん、次からは鍵なんてかけないんだ」
隠された髑髏マークのスイッチ押せば、開くみたいな感じにしようかな。
さて・・・お菓子じゃ、お腹を満たせないから、冷蔵庫に入っているらしいご飯食べよーっと。
「あれ??そういえば」
マリウスは頭から感じていた重みがなくなっていることに気付いた。
あの龍が見えなくなったことに気づいて、帰ったのかな?なんて考えて、倉庫を出て、ダンジョンコアから入れる自分の部屋に帰ろうとした時に何かを見つけてしまった。
畑の近く、周りの地面よりもより一層に輝く・・・翠色。
『けぷっ』
ついてきたよりも横に広がったデ、、、ぽっちゃり子龍が満足そうに横たわっていた。
幾層年ぶりの19時予約投稿。