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泥のダンジョンマスター  作者: ハル
219/255

207.


「うひゃぁぁぁあ!!!」


 攻撃の届かないギリギリの距離で走っていたら、手を伸ばしてきました、文字通りの意味で。


 物理的に手を伸ばすって卑怯じゃねぇか!?それも枝分かれするってどこの化け物だよ!!魔人って化け物だったわ!!


「くそっ!!起動!起動!起動!!」


 急いでばら撒いた魔力から魔法陣を発動させ、急ごしらえの3つの土壁を作る。


 そして、目的の矢が刺さっているであろう方向に全力疾走。


 後ろからバリバリバリと複数の口がそれらを食いつくすであろう音。


「ぎゃぁぁぁぁ!?」


 後ろは振り向かないが、音からすべてを察してしまう。


 今ここで立ち止まってしまえば、数秒後には複数の穴開きの死体になって、そのまた数秒後には骨すら残らず食い尽くされるであろうことを想像してしまう・・・。


 探せ!!探せ!!!探せ!!!!


 ルルラの魔力の矢を、魔力の矢を!!魔力の矢をぉぉぉ!!!!どこだよおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!


 集中して矢を探すには、こんな絶賛化け物を攻撃されながら、追い回されているときに矢に残った魔力探知なんて、そんな器用なこと!エルフのお前じゃあるまいし、俺ができるわけないだろうが!!


 いや、もっと余裕があったらできていただろう、すぐ近くに魔人の馬鹿高い魔力があっても、こんな自分が逃走にこんな魔法を連発しなければ、走りながらでも見つけることはできただろう。


 ・・・まぁ、今はそんな余裕なんて一欠片もないんだが・・・。


「くそっ!!!」


 もう枝別れしたであろう口がこちらの顔に食らいつこうとした瞬間に ブンッ と顔の横をギリギリで通り抜ける矢の風切り音とその数瞬後、バチャッ と後ろ髪に泥のようなものがかかるような感覚。


 そして、逃げ続ける数秒後に前方の右の木に矢が突き刺さった。


「助かる!!」


 さっきからの大声でこっちが危険なことに気づいてくれて、ルルラが援護しに来てくれたのだ・・・魔人がそもそも目的の場所に誘導しなければ準備した意味もないのだけれども・・・本当に準備場所でずっと待機せずにこっちに来てくれてよかった、本当に良かった!!


 そう感謝を内心で思いながら、矢の刺さった方向に進路を切り替え、駆け抜ける。


 途中途中で土壁で進路の妨害を・・・全部噛み砕かれながら、それでも当たりそうになった口はルルラが矢が撃ち落としてくれる。


 そして、目的の場所からずれるとその都度、矢による誘導をしてくれる。





 そして、ちょうど3射ほどの矢で誘導されたある地点にいつもとは違い、もう地面に突き刺さっている矢を発見する。


 ・・・それを走る勢いのまま足でついでで蹴る。


 その矢にルルラの魔力を確認すると・・・煙幕用に魔法を地面に放つ。


「爆!!」


 土煙で魔人が一瞬、俺の姿を見失ったその瞬間に全力で後ろに飛んだ。


 数瞬後には土煙丸ごと口で包み込んで食べていた。


 その場所にはもう土煙なんてものはなく、ただの化け物がそこに立っていた。


『縛って、木精霊』


 ルルラの声が響くと地面から複数の木の根が飛び出して、化け物に巻き付いた。


 だが、それは化け物にとっては食べ物であり、次々にバキバキバキと食っていく。


「『もっと!もっと!もっと!!って』なんで!こんな化け物になってるのよ!!」


 その声に呼応して、地面からもっと多くの木の根が化け物にまとわりつく。


 自分が普段使っているものとは別の言語から、分かる言語になって、隣にいる太郎に向けて、そう愚痴を勢いよく言う。


「・・・すまん」


 ついに、そこに口の消化が間に合わなくなって、木の根に包まれた物体があった。


 だが、内部からも今もバキバキバキッと何かを噛み砕く音が響いてくる。


「これで!終わりよ!」


『主役が来たわ、みんなお願い!』


 そう別言語で話し、何やら・・集中しなくても分かるほどに高められた魔力の塊の矢が木の根に包まれている物体に射られた。


『歌いましょう!声が枯れるまで!踊りましょう!疲れ果てるまで!今ここにあなたたちの舞台は整った!!』


風精霊たちの舞踏会(シルフダンス)


 ルルラの詠唱が完了すると、可視化できるほどの風の集合体が木の根の周りに纏わりつき、付きまとい、その中にいる何者も逃がさない風の結界となった。






「はぁ・・・精霊木の矢、もしもの時のためにって、持ってきて正解だったわね・・・」


 風の塊からいつまでたっても化け物が出てくるような様子はない。


「・・・」


「はぁ・・・また里帰りして、矢を補充しなくっちゃ」


 そう愚痴を言うルルラの落ちてあった枯れ枝を風の中にぽいっ、到底届くような勢いで投げてないのだが、吸い込まれるように引き寄せられていき、最後に見たのは枯れ枝が粉微塵になっていく光景だけだ・・・なるほど。


「・・・」


「さぁ、太郎さっさと逃げるわよ」


「・・・・ん?え?」


 そう言うルルラの言葉に疑問を覚える。

 ルルラの言葉は『帰る』ではなく、『逃げる』。


「なによ?」


「倒せてるんじゃありませんかね?」


 あの中にいるのなら・・・中は悲惨の一言だろう、うん。


「わかんないでしょ、そんなの・・・それとも太郎あなた、あの風陣結界のところにグチャグチャになっているかもしれないあるかもわからない魔石を探すの?生きてたら、今度は私たちがグチャグチャになるわよ」


「・・・・」


 いや、うん、あそこに行くとか、自殺願望者じゃなきゃ無理だわ。


「これは継続的に拘束して敵を壊す用の精霊魔法・・・あれがあれ以上の再生能力を持っていたりすると閉じ込められるだけ、生きていたとしても今ルドもエフィーがいないうちにあれを私達だけで倒すのは無理よ、揃ってもたぶん誰かは死ぬか、引退よ、ここは大人しく撤退しましょう」


「まぁ・・・捜索は無理だよな~俺も撤退する気満々だったし、ルドも自分が怪我したんだし、無理に捜索なんてことはしないだろう」


「そうね、ルドが動けるようになっていても、今の2人じゃ心配だし早めに戻りましょう」


 そうルルラが口にすると、ルドたちがいるであろう方向へ行こうとし始めた。


「へいへい、ルルラ、道案内頼む・・・こんなバカでかい魔法の近くだと、これに感知引っ張られすぎて、俺は無理だ」


 うん・・・感知を集中しても、このバカでかい存在感のせいで、他が全然分からない。


「まぁ~こればっかりは仕方ないわね、任されたわよ」


 そうルルラが歩みだして、太郎は黙ってそれについていった。

 シルフィードはシルフの『女性型』のことだったんだね・・・。


 英語力が・・・私の厨二力が試される技名・・・つらい。

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