表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泥のダンジョンマスター  作者: ハル
215/255

203.


 探せる時間いっぱい探した。


 だが、結果は死体もその遺品すら見つからなかった。


 そして、それよりも何よりも不気味なほど・・・・いや、怖いほどに魔物に1匹も遭遇しなかった。


 その食われたと思われる残骸さえも何もかも、この森には生き物なんて1匹もいないなんて思うほどに、この森はとても静かで、それだけでこの森には彼らしかいないのかもしれないとそんな錯覚さえ覚えてしまうほどだ。


 大きな破壊音はしない、生臭い匂いも、その匂いを漂わせる死体の山も何もない。

 ただ木の葉がどこからか吹いているかも分からない風に揺られ、木の葉の擦れる音だけが警戒している彼らの耳に聞こえてくる。


 その静寂は彼らに安らぎではなく、不安を掻き立てる。


 その不安は・・・彼らに証拠など何ひとつなどないが、本物の魔人はこの階層にいるではないかと思わせるだけの異常さであった。





 見つからない疲れからか、それとも、この奇妙な森の中で過ごしていたという緊張感のせいなのか、彼らは少し油断していた。


 そう・・・少しだ、まだこの異様な静けさに包まれているこの不気味な階層にいるのに、油断なんてできるものだろうか?


 あの魔人は見えた、聞こえた、感じられた。


 『破壊』を、『恐怖』を、『狂気』を。


 だが、本体の魔人からは何も見えない、聞こえない、感じられない。


 そこにあるのはただ凪のように静かな、そう不気味なほど静かなこの森だけだ。 





 あの魔人のように観察した、観察できた既知の存在ではない、本物の魔人は未知という存在だ。


 その静けさがその恐ろしさが、彼らの中の魔人の輪郭を型作り、無意識に彼らはソレに恐怖する。






 ドロッとした足に感触があった。


 それは歩いていけば、時々ハマる底なし沼のような感触、だけど、今回のソレは今までと違った。


 靴の裏からではない、生温く足首を掴まれる感覚。


「!?」


 気づいた時に即座にそれから距離を取ろうと、それから自分の足を引きはがそうとした。

 だけど、距離をとっても、ソレはまとわりつき、決してアルの足からは離れるようとはしなかった。


 ソレはただの泥だ、だが、それは魔人の泥だ。


 その本体が力を籠める、グチャリ、骨を砕く嫌な音が静かな森で響く。

 嫌なほどに鮮明にそれが聞き取れて、そのすぐあとに森の中で響くアルの絶叫。


「ガァァアアア」


 それが足首を絞める。絞めて絞めて締めて、握りつぶして、グチャグチャにして、グチョグチョにして、コワシテコロシテコワシテコワス!!


 ルルラはその絶叫のすぐあとにルドに張り付いてる泥のことを理解して、太郎に指示を出す。


「太郎!下」


「そんなこと言われなくても、分かってるよ!!」


 太郎は魔法を放ち、ルドの足の泥は、ただの泥に戻った。


 だが、それをただ黙って見守っているだけの魔人ではなかった。


 魔法の放った泥のさらに向こうから、何やら尖った腕のようなものがルドに向かって、飛んでくる。


「ちっ!」


 太郎はそれを見て舌打ちをしながら、魔法での防御が間に合わないと察し、片足を泥で締め付けられ、倒れているルドの襟首を引っ張り、無理やり回避行動を・・・エフィーの近くの地面に投げた。


 その無理な回避行動の結果は・・・最悪な事態よりも十分マシでルドの男前な顔がちょっと抉られてワイルドなイケメンになったくらいだ・・・体に穴が開くよりましだと思って欲しい。


「おい!エフィー、ポーションと、回復魔法かけてやれ」





 痛みで周りの様子どころではないルドと回復魔法に集中しているエフィーはみてはいなかった、いやエフィーに治療に専念するように見せなかった。


 だが、太郎とルルラはしっかりと目と耳でそれを捉えていた。


 グチャグチャグチャグチャ


 何かを貪っている魔人の姿を見えていた、見えてしまっていた。


 自分の手を、口にいれ、舐めて、噛んで、引きちぎって、グチャグチャとそのあたりに自分の血肉を撒き散らしながら、それは必死になって、自分を、自分の手を貪っていた。


 食べて、タベテ、食ベ終エテ・・・ナクナッタ、ナクナッタ、ナクナッタ


 しばし、それは恍惚とした表情で食事に酔いしれていた。


 だけど、決して魔人は満たされてなどいなかった。


 もうそれを知ってしまった、満足するという幸福を味わってしまった。


 それはもう自分から手放すなんてことはできない、できなんてしない。


 すぐ向こう側にはそれを満たしてくれる肉塊が4つ。


 ならば、食べてしまおう、食べきってしまおう、なくなったら、また探せばいい、上?そうだ・・・上にもっとたくさん美味しいのがいっぱいいる、だから、上を目指して、目指して、あぁ・・・めざしていたんだ。


 幸福によだれをたらし、これから起こるであろう未来に期待する化け物。


 渇く、腹が減る・・・目の前の化け物により、彼らの輪郭だけの恐怖が明確に色付き、明確な殺意・・・いいや、食欲をもって彼らを襲う。


 二次創作の小説にハマった・・・作者。


 読んでたら、更新の日を忘れそうになっても、仕方のないことだと思うんです!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ