202.
魔人に挑み、あの魔人を倒した。
そう・・・倒したはずなのだ、彼らはそれはとても簡単に・・・とても不気味なほど簡単に倒した。
ルルラが最初に魔力の込めた矢で相手の腕を破裂させ、片腕のをほとんどを抉り取った。
そして、エフィーがルドに防御系の魔法をかけ、それを受けたルドが敵の視界から隠れるために駆け出し、太郎がルルラに迫った時のガードとして、ルルラと魔人の直線上に入り、敵の進行を邪魔するような位置取りをした。
2射目を魔人に射るルルラであったが、魔人は腕を大きく振り、泥を薄い膜のように広げて、自分を覆い隠し、泥に絡み取られた矢は勢いを失い、力なく地面へと落下した。
そして、その相手の視界から自分が消えたことを察したルドは、さらに体勢を低くし、泥の膜の下をくぐりぬけ、魔人のすぐ近くまで移動し、その移動の勢いをのせたまま、その片腕に宿した炎の拳で相手を殴った・・・はずだった。
結果は相手は爆発四散。
だが、ルドの技にこんな威力がないことは誰よりもルド自身がそれを知っている。
「・・・」
周囲に魔人の姿が確認できないことを4人それぞれ確認すると、ルドは痛みがする殴ったほうの籠手を慎重に外してみると・・・その腕は所々ケロイド状に爛れていた。
それを見て、多少顔をしかめながら、もう片方の手でポーションの便を手に取り、口で蓋を開けて、半分を手にかけ、半分を飲み干す。
手に火を自分の限界まで纏って殴っているとはいえ、これほどのことは普通なら起こらないはずだ。
それにエフィーがルドに短時間しか効果はないが、最大限保護してくれる防御魔法をかけてくれていたはずだ・・・なのに、なぜルドの腕はこんなにも怪我をしているのか。
そんなことをルドが考えていると。
「いつみても・・・傍から見たら、自爆技よね・・・それ」
周囲の敵影はもういないと判断したルルラはルドのほうへと歩みより、徐々に新しい皮になり替わっている腕のほうを見ながら、そう言う。
「・・・これが一番確実に相手を倒せる可能性がある威力の高い技だから仕方ねぇだろ?それに出し惜しみして、こっちの誰かが殺されるよりましだ・・・あれなら、多少の距離吹き飛ばして、距離も稼いで離脱できたはず・・・だったんだが・・・」
ルドの自分の利き腕の感覚を確かめながら、そう言う。
「結果は爆発で泥がバラバラのび~ちゃびちゃ、たぶん倒したとしても魔石ごとバ~ラバラ・・・・そっちでのぜ~んぜんまったく報酬は期待できなくなったわけだな・・・まぁ・・・倒してたらの話だがね~んで、どうしたよ?ルド?」
そう太郎とエフィーが2人のほうへと歩み寄ってきた。
「ルド君、大丈夫~?」
回復魔法をかけようとするエフィーをもうポーションを飲んだから、と断った。
「・・・いや、腕が多少使い物にならなくなったぐらい・・・かも?まぁ、道中の敵程度なら片手で余裕なんだが・・・あの技はできたとしても7割程度か?」
そう自分の腕の感覚を確かめてから、そう判断する。
「それを使う相手がまだいるって思ってるか?」
そう太郎が問いかけてくる。
「・・・あぁ」
ルドにはあれがどうしても本物の魔人だとは思えなかった。
魔人なら・・・あんなに弱いはずがないと、今まで観察で見たあの暴食ぶり、あの魔物たちの残骸のあと。
あれができる存在がこんなあっさりと死ぬものか?
自分たちに攻撃をさせずに倒しきれたから、そう思えるだけかもしれないが・・・だが、脆すぎて自分の中の違和感がぬぐえない。
「・・・そうか、吹き飛ばしたルドがそういうならそうなんだろうな、ここでギルドに戻るか、それとも遭難者の救助依頼をやるか?」
「・・・はぁ~~~~どうっすかな・・・」
あれが本物だとは思えない、入れ替わったとしたら俺らが寝ていた時ぐらいか・・・そのぐらいしか目を離しているときはない。
それ以外の時は見つけ次第遠距離から観察もとい監視していた。
食い散らかした後には・・・人間の死体はなかった、いや、他の魔物に倒されている可能性もあるのだが・・・約束しちまったからな、それをしないで、ただ見つかりませんでしたじゃ、俺が自己嫌悪するな、うん。
まだ動く腕がある、走れる足があるなら、やれる。
「2日だな・・・2日探して遺品すら見つからなかったら、それで捜索は打ち切る。それとまだ魔人の本体がいるかもしれないから、それを気を付けながら、行こう」
そう判断し、彼ら4人は救助依頼をすることに決めた。
爆発四散、南無阿弥陀仏。
・・・・この描写を書こうとして、やめた。