199.
「あんなに勢いよく派手に見えるように殴ることなかったのにね~」
そう森の中を歩きながら、そう茶々を入れる神官のエフィー。
「はぁ~もうやめてくれよ、あれは俺が悪かった・・・ちょっともうちょい踏ん張ると思ってたんだよ・・・」
万全の状態の獣人なら、数歩分は後ろに殴られた衝撃で後ろへと引きずられるだろうが、根性で耐えて気絶する・・・・あそこまでは・・・うん、飛ばない予定だった。。。
予定とは自分が理想とした予定であって、現実では描いた予定がまともに上手く運ぶなんてことは・・・起こるときもあるし、起こらないときもある。まぁ・・・今回はその上手くいかないほうだっただけだ。
「それで屋台にぶつけて、原因の子が気絶したら、急いで・・・後ろ振り向いて、あれどうしようみたいな顔してから、私達からお金を貸してもらうリーダーなんてあなたぐらいよ・・・」
そう呆れた口調でエルフのルルラがそう言う。
「いや・・・だって・・・・な?」
「お前が全部払ったら、かっこよかった、惚れてたわ~払ってたら」
そう黒よりの茶髪の太郎がそう自分の財布からその商品を払ったことを少し根に持ちながら、言う。
「・・・・いや、うん、俺だってそれは思った、だけどな・・・魔人の偵察と救助者の捜索だろ・・・・なら、もしもの時もあるかな・・・って、昨日全部使った」
「「「・・・・」」」
3人の冷えた視線がルドフェルトに集まった気がした。
その冷たい空気を換えようとルルラがこう言う。
「はぁ~~まぁ・・・払ってあげてよかったんじゃない?リーダーのあの言葉のあとで相手に借金できても目覚めが悪いわよね・・・私たちが万が一助けられないかもしれないし・・・あの言葉よね~あれがなかったら、もう冒険者なんだし自己責任でもよかったんだけど・・・」
そうルルラが太郎に目配せすると・・・
「『俺が救ってきてやるぜ』キリッ、憧れるわ~本当にルド兄貴のあの言葉にキュンってしたわ~、俺もあんなドヤ顔で・・・言ってみてぇな・・・『俺が救ってきてやるぜ』キリッ」
そうその言葉を繰り返し、その時のことを思い出して、くすくすと笑いながらそう言う。
「そう救うと言ってくれた英雄さんのあとに多くの借金は可哀想ですもんね、まぁ・・・ルドにも殴り飛ばした責任もありますしね」
「そ、そうだな・・・だけどな、あれはあいつが騎士団にちょっとちょっかいかけそうだったのを助けただけだぞ?あとそれと太郎・・・お前あれだぞ?次それ笑いながら言ったら、ぶん殴るぞ?」
ちょっかいかけられそうなのを助けただけで・・・俺に責任はほとんどない!!・・・はずだ。
あんな派手に吹き飛ぶ予定じゃなかったんだけどな・・・・はぁ・・・あと次言ったら殴れるように準備しとくか。
「おぉ~怖い怖い・・・ん??・・・くんくん・・・なんか臭くねぇか?」
前を歩く太郎が、おどけたようにそう言葉を返した後に、足を止めるように手で指示をして、少し周囲を確認し始めてから、パーティに何かしら気づくことがないか、自分で気づけない何かに気づいたことはないかと聞いてきた。
「あぁ・・・太郎の言うとおりなんだか、少し匂うな・・・それと・・・何やら、今までよりもそれに木たちが騒がしい感じがする」
そうエルフのルルラがその言葉に続けば、パーティの警戒度が上がり、この先に何かやらの危険があると思い、より一層慎重に行動し始める。
「ここから先は今までよりも警戒して慎重に進みましょう」
そうエフィーがすぐに防御系の呪文を味方にかけられるように詠唱し終わったら、その言葉へ先へと進む。
「そうだな・・・生きてっかな・・・」
そのルドの問いに明確に答える人はいなかった。
ここで安易な希望は・・・それは見つかなかった時、死んでいた時の空しさ、自分の無力さへと変わる。
ダンジョンで怪我をして取り残されたのだ・・・それはあまりいい状況ではない。
何の根拠もなく、ただ無遠慮に生きてる!なんて断言できるほどに、彼らはダンジョン歴は短くはない。
そういうことがもう・・・現実を知ってしまったから、夢見がちに言えるはずもなく、だがしかし、時間的には怪我をしていたことを差し引いても、まだ生きている可能性のほうが高い。
死んでいると断言するにもまだ早すぎるし、それに・・・そこまで悲観的に救出しようとなんてしたくない。
それに・・・あの男に自分は大丈夫だと、助けてみせると・・・『希望』に縋ろうとした彼にそう約束したのだから、なおさらだ。
もし助けられなかったとしても、悲しみも怒りも苦しみも、全て・・・・いいや、助けられないと決まったわけでもないのに今こんなことを考えちまっても仕方がない・・・か。
助けられなかったじゃない・・・助けてみせるんだ。
お盆・・・台風・・・( ˘ω˘ )