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泥のダンジョンマスター  作者: ハル
203/255

191.


 俺が4人に追いついた先で見たのは治療場の受付?看護士?みたいな人に四人がというか、アルが『ガネル』はどうだ!?みたいなことを聞いている姿だ。

 そこの関係者であろう人は・・・ちょっと迷惑そうな顔でアル達に『誰ですか?その人は・・・それに!あなたたちここは怪我人が多くいるんですよ・・・静かにしなさい』と静かにだが、私怒っています!というのを体で表しながら、怒られていた。

 その様子を見ていた俺はその間に入って、事情を説明しようとしたのだが、また1人迷惑そうな見舞い客が来たな・・・という冷ややかな視線を受けた。

 そうして、怒られそうになると・・・その人が俺の首から下げていた司書さんからもらった身分証を見つけた。

 『それって・・・ギルドの方ですか?』とそう問いかけられた。

 どう答えていいのか・・・臨時のギルド職員です!よ? 冒険者だ!!・・・いや、これはダメだろう・・・そうして、導き出した答えはその問いには言葉で反応せず、その身分証を首から外し、それを手渡す。

 そうして、その人は身分証を数秒見つめた後に、納得したような顔になると、俺の方に向かって『そうですか・・・ギルドの方でしたか、失礼しました』と頭を下げて、身分証を返してくれた。

 そうして、その人からガネルの病室の場所を教えてもらえた。

 ギルドの人です!と口で言ってないから・・・嘘は付いていないからいいでしょ、相手が勝手に勘違いしただけだから、うん。




 そうして、ガネルの病室まで来たんだけど、すぐに退院となった。

 ガネルのほうは入院していた割にはそれほど怪我の方は酷くなく、いつでも退院できる状態ではあった。

 けれども、今の状況下で問題を起こしかけた人物を野放しにしておくわけにはいかなかったわけで、こうして治療場でこの忙しい時に手が離せないここの支部の人間ではなく、ガネルが所属しているすぐ隣の都市のギルドからの監視者を待っていたわけだ。

 実際に迎えに来たのは司書さんではなくて、臨時の俺の方だけど・・・・

 そして、ついでに司書さんの持っている本、というか情報も待って、いや、待ち望んでいたわけだ。・・・・たぶん、ガネルのことよりも、本のほうが重要そうな気がするけど・・・。


 そうして、迎えに行った時のガネルは

『・・・へ?』

 いきなり病室に俺達5人が入って来た時の驚いたような顔は少し面白かった。




「なんで・・・知ってるなら最初から教えてくれればよかったのに」


「そりゃ・・・昨日ギルドと騎士団との揉め事になりそうなことを起こそうとした僕に会いに来た人をそう安々と面会させてくれるはずもありませんよ」


 治療場の帰り道に怒られたせいか、アルはちょっと恨めしそうにあの看護士?みたいな人の愚痴を言っていたが、それに対してガネルが落ち着けるようにこう口にしていた。


 治癒場から見たら連行。俺達から見たら・・・・ただ仲間や知り合いを迎えに行っただけなので、そういう後ろめたさもあって、もう退院の準備は整っていたので、足早に治療場を後にする。


 それで・・・あてもなく少し歩くが、さすがに問題を起こしたばかりのガネルをダンジョンの入り口のほうに連れて行くわけにもいかず、ある程度離れているギルドに、ついでに司書さんの手伝いをしに戻って行った方がいいだろうというのを、少し歩きながら話して、みんなの多数決の判断で戻っている最中だ。




「思ったより軽傷で安心だな」


 そんなことをぼそりとつぶやくと・・・アルたち4人には聞こえてはなかったようだが、ガネルにはしっかりと聞きとられていたようで・・・少し歩調を落として、俺の隣にやってきた。


「相手がうまく殴ってくれたんですよ・・・派手に吹き飛ばされて、周りの屋台なんかに被害は・・・まぁ、そこそこ出たようですけど、そのダンジョンに行くパーティのリーダーさんが払ってくれたようで、その時は僕は気絶していて、今の話は治療場の先生に聞いたんですけどね」


「へ、へぇ・・・」


 周りの屋台に被害出る・・?・・・殴る・・・吹き飛ぶ・・・?ガネルが???・・・凄いパンチだな。

 凄いパンチなのにガネルが軽傷ってことは・・・凄い人なんだろうな、その人は・・・と頭の中でその人を尊敬する。


「その時に・・・ちょっと頭に血が上っちゃって、止めに入ろうとする騎士団の人を殴りそうになったところを・・・吹き飛ばされたんで、自業自得なんですけどね。だから、それを払う理由はその人にはなかったわけです」


「・・・」


 ガネルが血に上り・・・・人に殴りかかる???考えられないけど、いや・・・本人の表情的にそれは本当のことなんだろうな・・・と察しながら相槌を打ちながら話を聞く。


「『あぁ、ちょ!?・・・くそっ、上手く気絶しろよ』なんて緊張感のない言葉で言われて、その時は避けてカウンターで殴るつもりだったんですけど、いつの間にか懐に入られていて・・・気づけば思いっきり吹き飛ばされた体験は初めてでした」


「僕も多少頑丈ですから、吹き飛ばされて、数十秒は意識はあったんですけど、薄れ行く意識の中でその人が屋台の人に謝る声と自分に向けて、こんな言葉が聞こえたんです。『お前がいなくても、俺がお前の大切な奴を救ってきてやるぜ』・・・あんな人が救助に行ってくれるなら僕なんかいなくても、きっとあの人は無事に帰ってきてくれるはずだと・・・そう信じることに決めて、待つことにしました」


 その控え目に笑う表情は最後に見た朝食の時よりも険がとれ、柔らかい表情になっていた。


 そうして、6人揃って・・・ギルドのところに行ったのだが、普通に臨時職員のを見せても、司書さんがいるところまでは入れなった。

 ・・・2日3日程度の6人分の宿代くらいはあるので、今日は宿に泊まることになったのであった。

 

 あっ・・・ガネルにプレゼント渡すの忘れていた。まぁ・・・明日でいっか。

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