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泥のダンジョンマスター  作者: ハル
197/255

185.


 受付嬢さんの話は割とすんなりと終った。

 ランク的に金が持っていないと分かっているからなのか、そういう贈り物を私にもくださいよなんて話は一切言わなかった。

 ただ少し興味深そうな目でこっちを見つめて来たり、昨日のギルド長に抱擁されている場面を見ていたのか気の毒そうな目でこちらを眺めて来たり、ちょっと頬を赤らめながらこっちを見て来たり・・・男性職員がね。


 実害という意味での問題という問題もなく、無事にお土産を買って、宿屋への帰り道。


 ・・・結局のところ、買ったお土産?贈り物はクッキーとか、そういう洒落たものではなくて、旅中でも普通に食べれるであろうちょっとお高目な干し葡萄なんかの果物にした。

 ちょっとお土産とは別に自分の分を味見として一つついでに買って、ちょこちょこと食べ歩きをしながら、帰る。


「ん・・・・美味しい」


 口の中に広がる甘さと不快にならない程度にほのかな酸味・・・語彙力がそんなにないけど、普通に健康的な味で美味しい、ダンジョンじゃスナック菓子とか、自作ケーキとかだしな・・・果物、いや、果樹園をダンジョンに作るのもありだな、実際に野菜は作ってるわけだし、やってやれないことはないだろう。

 そんなことを考えながら、宿屋に帰る。




 普通に何事もなく帰ってきたのだが・・・あの5人全員誰もいない・・・まぁ、うん、別にいいんだけどね。

 宿屋の1階にある酒場で、玄関が見えるところに陣取りながら、夕食を楽しむ。

 ・・・夕食を食べ終わっても誰も帰ってこない。

 まだ腹に余裕があるから・・・・酒と軽いそのつまめるものを頼んだ。

 ちょびちょびとそれを飲みながら、待っていると・・・宿屋にアル、ルイ、ローラ、マリンが順々に宿屋へと帰ってきた。

 それを見つけると・・・笑顔で相席をさせて、一緒の卓でご飯を食べた。

 ・・・まぁ、最初の二人以外は外で食べていたから、いらないと断られたんだけどね。

 だけど、いつまでも待っても、肝心のガネルは宿には帰ってこなかった。


 一応、アルとガネルは相部屋でとっているから、訪ねてみても・・・ガネルが疲れてベッドで寝ているなんてことはなかった。

 女子部屋にアルを伴って、ガネルのことを聞いてみても知らないと・・・今朝の俺と一緒にご飯を食べているガネルを最後に誰も見てはいなかった。


 俺は俺でまだ帰ってこない・・・何かあったんじゃないだろうかと凄く!心配していた。

 だけど、4人は全くというほどに心配などはしていなかった。


「心配じゃないのか~!」


 そのことにちょっと・・・この時は腹を立てて、そう4人に言うと


 アルは「朝まで娼館にでも行ってるんじゃねぇの?」と言い、ルイは「別にガネルだって、ここじゃないところでも泊まるし、別の酒場で食べるでしょ、帰ってこなくても別におかしくないでしょ?」と言われた。

 ローラは「・・・別に?」と無関心に言い、マリンは「ガネルさんはどうしたんでしょうね?」と俺と同じくガネルのことを心配した。


 そうしているうちにも時間は流れ、1階の酒場はもう客がいないからと片付けの準備を始め・・・外は街灯の明かりなどそんな便利なものなどなく、真っ暗闇・・・4人も酒場が閉まると自分の部屋へと眠りにつくために行く。


 ・・・本当に何もないの?かな?明日になればひょっこり帰ってくるのかな・・・。

 4人が何も心配なんてしていないのだから、そんな希望をどんどんと信じたくなる。

 でも・・・いつものガネルなら俺だって、こんな遅くまで心配はしなかった。

 アルのいった通りにそんなこともあるかもしれないと、ちょっと心配しながら寝ていただろう。

 だけど、今朝のガネルはいつも通りに優しかったけど、昨日のガネルは焦っていた?から・・・余計に今の俺は心配なんだと思う。

 そんな暗闇にこちらに来る影がないかとぼーっとしていると、少し明るくなったな・・・とぼんやりと思いながら、気にせず見続ける。

 隣に座る音がして、誰が来たんだと疑問に思いながら、ちらりと見る・・・それは魔法の明かりを携えたローラだった。

 ちょっと・・・油代が安く済みそうなんて思いながら、それを見た後にまた外を眺めることに戻った。


「・・・ユウキは心配しすぎ、私達はもう成人した大人。自分のことは自分で決めるし、責任は自分にある・・・ガネルはいい人だから心配するのはわかるけど・・・もう今日は帰ってこないよ?・・・寝たら?」


 それだけ自分の言いたいことを言ったら、すぐにローラは自分の泊まっている部屋と戻っていった。

 ・・・腰に巻いたバッグにあるお土産の感触を少し感じながら、ローラの言っていたことを頭の中で繰り返し、今暗闇の中帰ってくることはないだろうと・・・思ったし、俺も心配のし過ぎだったかなと反省した。

 真っ暗闇だなとその夜の景色を眺めながら、ため息を一つ零して、とぼとぼと今日はもう寝るために自分の泊まっている部屋のベッドに行き、眠りについた。

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