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泥のダンジョンマスター  作者: ハル
194/255

182.


「どうして、昨日のうちには分かっていたはずでしょう!」


 そう怒鳴るガネルの姿を近づいてみて・・・唖然とした。

 いつもは穏やかで、ちょっと怒ったりもするけど、そこまで本気で怒ったりなんてした姿は見たことがなかったからだ。

 それに対応する受付嬢も、こういうギルドという場所で働いているだけあって、その対応は冷静そのものだった。

 その対比で・・・ガネルがより怒っているように見えなくもないが・・・。


「ですから、まだ救出パーティを選出中です、あなたの知り合いのパーティの方が巻き込まれているのは残念に思いますが、安易にパーティを選んだとしても、その方たちに犠牲を強いるだけです、そのようなことをさせるわけにはいきません。ですから・・・神に祈りでもして、あなたの友人の方々の無事を祈っていてください」


「でも・・・」


 今の自分には神に祈るくらいのことしかできないなんて・・・分かっている。

 だけど、それでも知り合いが巻き込まれているということに思わず感情が、心が先走ってしまう。

 次の言葉が出かかった時に階段から一人の人物が降りてきた。


「あ~ん、もうガネルちゃん、怒った声が上にまで響いてきちゃったわよ~、あなたがそういう声出しちゃう理由も知っているわよ、でもね、ラウスちゃんたちのことはあたしたちができる限りの努力はするわ、だから今はあたしたちを信じてくれないかしら・・・きっとあなたに知らせが来るようにするわ」


 そう言われて・・・自分の出していた声がとても大きかったことに気づき、ガネルは少しバツが悪そうな顔をする。


「・・・」


 強く握りしめる手。自分は何もできない・・・ただ神に祈り、それを待つだけだ。なんて自分は無力なんだろうか。

 そんなことを彼は思っていたのかもしれない。

 ガネルは深く深呼吸をし、目を閉じる・・・後ろを振り返り、その場を去ろうとする間際に受付嬢が言った。


「あなたが一番それは分かっているでしょうけど、あのダンジョンに入るにはランクが足りません、それに今のあなたが助けに行ったところで二次的な被害が増えるだけで、はっきり言って、足手まといです」


 神に祈る以外にも何かできることがないかと考えていた彼に彼女はそう言ってトドメを刺す。


 そうして、ガネルがその場を後にするが、その顔には少し涙や悔しさなんてのが浮かんでいたのかもしれない。

 ・・・俺は正直いきなり速度を上げたガネルのスピード顔が追い付かなくてよく見てなかった。




「・・・あなた最後の言葉は余計よ~ガネルちゃんだって、冒険者だもの、それぐらいのことはわかっているわよ」


「でも、あのパーティの子ですし、一応釘は刺しておかないと・・・」


 ガネルのことを追って、ギルドから出ようかな・・・なんてことも思ったけど、正直追いつく自信も、慰められる自信がなかった。

 逆に迷子になりそうな気さえしたから、ギルドに居残って、ギルド長と受付嬢の会話を盗み聞きした。


「それにしても、あれは酷いと思うわ~よ・・・それでなんでガネルちゃんがあのことを知っちゃってたのかしらん・・・まぁ、いいわね・・・これで大半に何かあったと悟られちゃったし、明日のクエストボードにあのことを載せてといてね」


 そうウィンクを受付嬢にするギルドマスター。


「・・・はい、分かりました、やはり獣人の方ですから、職員の話を立ち聞きされたんでしょうね・・・」


「まぁ~そうよね~それぐらいしかないかしら、ここは獣人の子はあんまり来ないし、重要なこともほとんどないから気が抜けちゃうのも分かるけどね~」


「それでギルド長・・・救出部隊のほうは・・・」


 そう聞かれたギルド長は少し浮かない顔をしながら、こう答えた。


「めぼしい子たちは遠征に行ってたりして、いないのよね~・・・近くの領にはいるんだけど、その子たちがダンジョン反対派の子たちで・・・ダンジョンに入れることに領主様が首を縦に振らないのよね・・・今できる限りの最高のメンバーは揃えたつもりなんだけど・・・はぁ~」


「ほんっと・・・ついてないわ、魔人が出てくるなんてね・・・」


 そうして、ギルド長は姿を消した。







「悪い子には~お・し・お・き よ~ん」


 突然背後に現れた悪夢(ギルド長)に抱擁された。

 そのあとたっぷりと抱擁された・・・肉体的な疲労はない、だが・・・精神がゴリゴリ削られていく。

 ギルド長がつやつやになって二階へと帰っていく中、俺は真っ白になって、宿屋へと帰っていったのであった。

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