177.
試験が終われば、少しの休憩とアルたちに慰めを受けてから、受付のところへと戻り、試験に対する労いの言葉と、受かったというお祝いの言葉をいただいた。
そうして、晴れて冒険者になれたのであった。
冒険者になるにあたって、ギルドの身分証?ギルドカード・・・ではないな、木の板を渡された。
・Fは木
・Eは鉄
・Dは銀
・Cは金
・Bはミスリル
・Aはアダマンタイト
・Sはオリハルコン
そう渡された木札ととも、ランク制度について説明を受けた。
つまり、木の板が嫌なら、ランクを上げていけということだな、うん。
「それで、これはランクは最低ランクのFの証ね・・・」
普通に触った感じでも・・・木だね、なんかすぐに作れそうな感じの量産品。
「基本的に冒険者の方々はギルドカード単体のまま持っていると、どこのポケットに入れたのかなどと、混乱して、入門の際に非常に邪魔に・・・手間がかかりますので、チェーンで首元にかけておくことなどを、こちらは強くおすすめしています、チェーンなどは隣のギルド専門店で販売されているので、よかったら見ていってくださいね・・・今の木の場合は感触で分かる気がしますけど・・・」
笑顔で邪魔になったであろう冒険者の人を・・・ディスってるような気がしないでもない。
こ、この人は商売上手!?・・・普通にギルドからチェーンつけてくれてもいいのに・・・なんてことを影で思いながらも、そんなことは顔に出さずに、黙って受付嬢の説明を聞いておく。
「あ・・・はい、分かりました」
こういうところはギルド長を倒して、うおぉぉぉ!!とかなって、いきなりのCランクとかになって、目立っちゃったみたいなとか・・・を妄想する。
まぁ、うん・・・実際負けてるんだけど、対戦相手ギルド長相手だよ?普通に強かったよ?
そうして、ついでとばかりにFランクの依頼を見せてもらうことになった。
・荷運び
・子どものお世話
・家の草刈り
・トイレ掃除
常時依頼
・薬草採取
「・・・」
あれ?冒険者?便利屋の間違いでは・・・とか、一瞬それを見て思って、感じた。
「今からだと、そうですね・・・時間的に夜になっちゃって・・・厳しい、かな?うん、明日また来てね」
「え?あるんじゃ・・・薬草採取とか?」
それに草刈りとかね!・・・常時依頼の上にあるのは・・・ちょっと遠慮したいけど。
「ダメダメ、門が閉鎖する時間に間に合うか心配だし、冒険者になれて気持ちが高ぶる気持ちも分かるけど、今日は私の言うとおりになさい」
受付神の言うとおりにしよう・・・命というか、ある意味貞操を救ってくれた恩人なわけだし・・・
「それとFランク冒険者は1週間依頼が不達成だったら、除名されるから気をつけてね」
・・・あと6日でどれか・・・薬草一択だな、うん。
ついでにその門を出るときにカリアスさんにお礼を言って、銀貨を返してもらうんだ~。
そうして、受付嬢にお勧めの宿を紹介すると言われた!だけど、アルたちにお勧めの宿を紹介してくれるという話を思い出した。
そのことを言って断ると・・・。
「トラ・・・あ、いえ、アルさんたちのお勧めの宿ですか・・・たぶん、あそこですし・・・それなら問題ないでしょう」
そうして、ギルドの飲み場で、他の冒険者と談笑しながら、俺の説明が終わるまで待っていてくれたガネルとともに、ギルドを後にしたのは・・・いいのだが・・・。
「・・・帰る道も行く道も分からない、宿屋ってどこなんだろう・・・宿屋の名前を知らないから、人にも聞けない」
だんだんと薄暗くなっていく中、俺は冒険者ギルドもどこだか分からないところで立ち止まって、茫然としていた。
ちょっとなんだ・・・ほんのちょっと匂いに釣られて、焼かれているお肉の串焼きを見ていただけなんだ。
今度は同じ失敗を繰り返さないとすぐに我に返って、少し先を歩くガネルらしき耳の人を追って行ったんだ。
あの時はなぜ・・・耳だけを見て、あれがガネルだ!なんて自信満々に後をついて行ったのだろう?
そんな後悔を浮かべても、あの時の間違えは間違えのままなのだが・・・。
なぜあの時・・・知らない犬耳のおっさんの後をついてちまったんだろうか・・・。
何の話もふってこないし、歩くの速いし、ちょっとおかしいなとは思ってたんだ。
早歩きして、その耳のある人の顔を確認したら・・・知らないおっさんだったんだ。
「・・・」
知らない都市の道で、1人ぼっち・・・寂しいし、本当に心細い・・・
どんどんと気持ち沈みかけていたその時に、いきなり思いっきり手を握られ、振り返るとそこには・・・。
「はあはぁ・・・はぁ~~無事でよかったです・・・でも、だから言ったじゃないですか!食べ歩きをしようとするのはやめて下さいと、僕がみつけられてよかったですけど」
こうして、ガネルによって、無事救助されるのだが・・・ちょっと涙目になりながらおろおろとしていたのは・・・仕方ないことなんだと思う。
どんどん薄暗くなっていく都市、大勢の人混み、知らない場所で知り合いとはぐれて、1人ぼっちとか・・・泣きたくなるやん。
普通に宿屋に行くまでの間小言や、説教を言われながら、ついていく。
今度は迷わないように、しっかりとその耳を記憶しながら・・・
そして・・・次からはちゃんと1人で泊まる宿に帰れるように、道覚えてから、買い食いするんだ。
これが男女なら恋愛フラグなんだろうけど、男と男なんだよな・・・。