170.
いや・・・旅に同行することにしたんだけど、したんだけどさ・・・このパーティちょっと人助けしすぎじゃないんですかね????
前にガネルにどのくらいで君たちの拠点にしている街まで着くの?と聞いたことがある。
『1週間ぐらいですかね・・・普通にまっすぐと向かうのならの話ですけど・・・』
いや、うん、いいことだよ?人助け、すごくいいこと・・・ちょっとずつ旅路が進むんだけど、別のギルドがある町ぐらいになると、ちょっと付近の村の依頼を軽い感じで持ってくるアルさんはなんなんでしょうか???
ガネルに怒られたの覚えてないの?それとも気にしていないの?
予定の1週間なんてとうに過ぎて、3週間ぐらい馬車暮らし・・・いや、もうガタガタの道にその馬車に来る振動にも慣れた。
尻は痛くなるが・・・それもどんどんと慣れてくる・・・尻の皮が厚くなってきたのかもしれないな。
旅の道中を軽く言えば・・・
東の村に農作物を荒らすゴブリンがいると聞けば・・・行き・・・退治した。
西の村にアンデットで困っていると聞けば、アルよりもさすがに神官として、見過ごせないのか、強くマリンが行くことを主張して、行き・・・浄化した。
南の村にこの時期にしか咲かない珍しい薬草があると知れば、今度はローラが行きたいと主張して、行き・・・余った分を売れば、ちょっといい贅沢ができるだけ稼いだ。
北の村に悪さをする盗賊団がいると聞けば、退治しに行き・・・間近で見えるスプラッタシーンにさすがの俺が吐いたりした。
そんなふうに場所も考えずにアルが依頼を受けて、拠点に少し近づくどころか、逆に遠ざかることなど多々あった。
そんな旅をしながら、このパーティと多く関わった。
ガネルは普通に同年代の話し相手として、アルは・・・話してみるといい奴だったんだけど・・・俺としてはもう近くに行った町で普通にギルド登録して気ままに1人旅してもいいんじゃないかなとすら思っていた。
ルイとは旅の道中ではやらなかったが、村など安全なところに来たら、模擬戦をやってくれた・・・まだまだ勝ち越せてはいないが、勝つことはできた。
ローラは野営などで、せっかくだから、俺が食事を作ろうと付近の食べられそうな草や木の実を探していた時に『それ・・・毒草だよ?』などと指摘してくれた・・・積極的には話はしてはくれないが、質問してくれたことには答えてくれる無口だけど、いい人だった。
マリンさんは天使だ・・・ルイとの模擬選で怪我したときも治してくれるし・・・その宗派に鞍替えしてもいいかもしれない、『邪心の加護』俺持っていたような気がしないでもないけど・・・。
でも、盗賊や魔物を笑顔で撲殺していた姿にその恋心が急に冷めたことは仕方なかった。
そんな旅の最中にある時、アル以外のみんなに「あれに・・・文句はないのか?」という感じのことを聞いてみたら・・・
ローラは「・・・別に?」となんでそんな質問をするのかと首をこてんと傾けながら答えられた。
マリンさんは「皆様の善業は神様もきっと見ていらっしゃいますよ・・・まぁ、建前はこれだけど、本音は別にこの子たちと旅するのが楽しいから、ついて行ってるだけだけどね」そうウィンクをして、答えてくれた。
撲殺する姿を見なかったら、また恋に落ちていたかもしれない。
「ん~?あたしらの村もこういう困ってた時に助けてくれた冒険者って、すごい憧れるんだ・・・だから、アルもそういうの誰かの憧れになりたいってこともあると思うし、アルもそれだけ村の大変さもわかってるからほっとけないんだよ」
そう少し故郷を思い出したの寂しそうな眼をしながら、ルイは答えてくれた。
「まぁ・・・別にギルドからの依頼である程度の報酬も出ますし、ランクアップに必要なためのポイントも集まりますし・・・拠点にいる知り合いが懐かしいなと少し感じることもありますけど、冒険者をしていればこれくらいの旅はざらですから、いい経験ですよ・・・それにこの人たちほっとくと依頼だけ受けて、何も準備せずに特攻しますから・・・その被害とか馬鹿にならないですし・・・」
ガネルは少し呆れながら、そう答えた。
令和になりましたね・・・この小説の何が変わるわけでもないですけど・・・