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泥のダンジョンマスター  作者: ハル
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ただの蛇足回1


 陽も落ち、夕焼け時に、1人の影がその墓石の前へと座りこんでいた。

 春の暖かさよりも、まだ冬の冷たさの方が色濃く残る夕焼け時には、少し外にいるには寒い薄着で、ただその影はそこで何をするでもなく、ただじっと墓石を見つめていた。


「・・・・・・」


 その姿を確認すると、今しがた来た人物は何を言うわけでもなく、ただ墓前に酒を置いて、そっと横に座る。

 その影も酒が置かれたことに気づき、その来た人物に一瞬目線を向けるが、すぐに墓石の方に視線を戻した。

 そうして、今来た人物が墓の前で祈りを終えると、立ち上がるでもなく、横に座り込んだまま、じっと墓の前に座り込んでいる。

 そこで影の人物はそれに耐えられなくなったのか、口を開く。


「・・・・・・村長」


 その後に続く言葉は口からは出ないで、ただじっと・・・村長を見つめていた。

 村長はその言葉に何の返事もせずに、ただ次の言葉が出ることをじっと待っている。


「・・・村長、俺なんかの為に怪我なんてさせてしまって、すいません」


 その彼が考え付いた先に出た最初の言葉が村長への謝罪だった。


「別によい・・・このぐらいの怪我」


 何を怒るでもなく、ただいつもの調子に、何でもないかのようにそう返事をする。

 そのあとにまた2人の間には長い沈黙ができた。

 そうして、次に話し始めてのは村長の方からであった。


「そうじゃのぉ・・・村長ではなく、ただ1人のジジイの昔話に付き合ってくれんかの?」


 その言葉に彼からの返事はなく、その無言を肯定の意思と見たのか、村長は昔話を話し始める。




「昔はのぉ、今よりも多くの村人らが死んでいってのぉ、毎年冬に死に、また春先になるとゴブリンやオオカミなどが活発に活動し始めて、村の近くで山菜取りしていた子らや、自警団のやつらが怪我して、腕や足が噛みちぎられてなくなったりしてのぉ・・・悲惨じゃったわい」


 俺が生まれてから、今まではどんな村への襲撃でも、村長やヒューさん、ロイさんの3人でほとんどの襲撃は・・・村人達は無傷で乗り越えていた。

 今があるからこそ、そんな話が本当なのかはすぐには信じられないけど・・・話している村長は昔のことを、痛むようなそんな表情で話をしている野を見るに、本当のことなんだろう。


「わしはこの通り人よりも体格に優れていて、みなよりも腕っ節が強くてな・・・自警団に入れる歳になってからは、よう自警団員として活躍したもんじゃわい、それでのぉ~ある時に、領主様からの使者が来て、戦争に手を貸してくれんかと・・・聞けば、こんな辺境の村に豪の者がおるとな、領主様の目に留まって、声をかけに来たらしいのじゃ、その時はそりゃもう誇らしかったわい」


 昔を懐かしむようにそのように口にする。


「その時にはもう息子も大きくなってきてのぉ・・・悩むわしに、息子が行ってこいなんていっちょまえに、わしの背中を押してくれてのぉ・・・・そりゃ、村のことも心配じゃったが、だが、それ以上にこんな辺境までお声をかけてきてくれた領主様に腕を見せたかった」


 そう言った後に、声のトーンが一つ下がるのを感じた。


「じゃがな、その選択は間違いじゃった・・・わしが戦場で活躍し、名声を獲得し、そろそろ村へ一度帰ろうかというとに、婆さんからの手紙で息子が魔物に襲われて死んだということを知ったわい・・・」


「わしがいない間に息子は死んで、息子の嫁さんもその心労でのぉ・・・残されたのはわしと婆さんとあの子だけじゃった」


「背中を押してくれた息子がもう・・・死体も帰ってこず、その血塗れの腕と息子がつけてた首飾りだけが村に帰ってきた時は、胸にぽっかりと穴が吐いた気分じゃったわい・・・わしは2つ名まで頂いてその頃は本当に誇らしかった、物語の英雄にでもなった気分じゃった・・・英雄が聞いて呆れるのぉ、自分の息子1人守れぬ英雄などと・・・」


「息子を失ったすぐ後に領主様に暇をいただくことにしたんじゃ。・・・息子を失った後に残ったのは激しい怒りじゃった・・・仇が何なのか分からん、だから、仇であろうこの森のゴブリンやオオカミ、人を襲う魔物どもを片っ端に殺して殺して殺して殺しまわったのぉ・・・・ヒューとロイに止められるまで・・・いや、殴られるまで殺して回ったわい」


 そのことを思い出しながら話しているのか、村長の顔は怒りにまみれていて、拳は固く力強く握られていた。


「一時は胸がスゥっとしたわい・・・じゃが、結局残ったのは息子夫婦を失った深い喪失感と、魔物たちを殺してできた死体の山じゃった・・・まぁ、それでこの村は他の村より裕福じゃがのぉ・・・はっは・・・」


 そう村長は力なく笑う。


「じゃがな、そんな時にあの子はわしに笑いかけてくれたんじゃ・・・わしがいなかったせいで自分の父を失ったというのにのぉ・・・失ったものばかりに目を向けて、あの子のことを気にかけてやれなんだダメなわしにのぉ・・・そこでようやくその子にきちんと目を向けることができた・・・それからはあの子がわしの生きる意味じゃ」


「・・・村長」


「今でも自分の父と同じ猟師をやるということは反対はしているがのぉ、あれは危ない!・・・それがあの子の意思というのなら・・・気持ち止めても、応援もしてしまうというダメな・・・わしはダメなジジイじゃわい」


 そう村長が話した後に・・・その彼は自分の心の内を話し始めた。

 完全に物語の蛇足・・・本当はいらないけど、ただただ作者が書きたかった・・・


 このせいで・・・元英雄、二つ名持ちの孫LOVEというまだまだ現役でも行けるんじゃないかという爺さんという孫に対する婿に高い高い壁というか、鬼が出来てしまったという。

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