164.
次の日の朝に・・・怪我はしているけど、いつも通りの習慣みたくなっているので、普通に起きて、ご飯を食べて外に出ると、目の前にはいかにも戦闘しますよ!という感じの装備な女性が準備をしている。
「・・・」
そこを見渡してみると、完全装備している5人とヒューさんと爺さんがいた。
「ほれ、小僧も準備しろ・・・昨日言っておらなんだか?」
聞き耳は立てていたような気はするけど、言われてないよね?なら、俺じゃなくてヒューさんもある意味教え子?のようなものじゃ・・・あ、若くないか。
「まぁ・・・よい、木剣を使うが、小僧も一応怪我しても困るじゃろう?」
そうして、あ・・・もう断る雰囲気じゃないなということを肌で感じて、次に出た言葉は。
「・・・あの、盾は・・・?」
あの持っていかれていた、借りものだけど愛用していた大楯は何処に~
「あ~!?あ~あれなら、ないぞ?今は修理に出しとるぞ」
・・・そりゃ、戦えば傷つくよね、鉄じゃなくて、木だものね、うん。
「・・・」
持たないよりはましかな?と思いつつ、爺さんの部屋に返していた大盾をとぼとぼと借りに行く。
「さて、両者準備はよいな?」
「はい」
「あ・・・はい」
相手の女性は槍のような武器を仲間に預けて、代わりに木剣を手に取った。
そして、彼女の盾は俺のと比べると一回り近く小さくて、軽そうな気がした・・・だいぶこの鉄より軽いと思うけど・・・うん。
そうして、試合は終わったのだが・・・結果?負けたよ、うん。
だって、迂闊に重さの乗ってない攻撃をしようもなら、相手の盾に弾かれて、逆に態勢を崩されるから、一手一手に気をつけなければいけない気疲れするし。
こっちは大盾で、結構視界が狭まってるから動きにくい・・・だいたいの攻撃は防げるんだけど、いつもの倍以上に鉄の盾が重い。
そして、このままじゃ体力切れて負けるんじゃないかなと・・・突進をしたら、足を引っ掛けられて、転んで、首筋に木剣をあてられ、敗北さ・・・。
「さっきはありがとう!あ~そういえば自己紹介がまだだったよね?あたしはルイ」
そして、爺さんに何やら聞いていた彼女が倒れて空を見上げている俺に、笑顔で握手を求められたら、まぁ・・・敗北とかどうでもいいかなという気持ちにはなった。
そうして、ドタバタしている間にヒューさんと5人組は森の中へと入って行った。
そして、倒れている俺の横に爺さんが腰を下ろしたと思うと、こっちが聞いてもいないのに話し始める。
「まぁ・・・あの戦いなら、わしなら、一度盾をしまうか、思いっきり敵に投げ付けて、敵の盾ごと両手で思いっきり大剣を振りぬくかのぉ」
・・・・ゴリ押し???
そんな胡散臭そうにしている俺の顔に気づいたのか大声で笑った。
「はっはっは、ユウキ、その戦い方はおぬしには無理じゃろうがな・・・だから、わざと防具のところに攻撃を誘導して多少の傷を覚悟でやるべきじゃったな、おぬしなら勝てたぞ。まぁ、今回は負けたがのぉ」
そう頭をゴツゴツとした手で撫でられる。
「あの弾くの・・・できるかな・・・」
大盾はそんなことができるような盾じゃないと、あの重さを直に実感している俺には分かるが、そんなことを冗談交じりに行ってみる。
「大盾であの弾くができるかだって?あっはっは、無理じゃ無理無理、まぁ・・・わしなら大盾で1回はできんごとないが、それやるなら普通に押し出して敵を潰すわい」
そう笑いながら、こんな冗談みたいな質問に答えてくれた。
今日は2人とも軽い重いの違いはあるが、どちらも怪我があるので、稽古などは行われずに、お婆さんにお昼に呼ばれるまで、2人で適当な会話をしていた。
ヒューは一応は夜にある程度の数のゴブリンを倒した。
今の森にはあまり危険はないだろうということで、冒険者の森のお案内人役を買って出た。
・・・あの牙のことも気になるしな。
そして、一緒に歩いていると、斥候だと思われる犬耳の人は速度を合わせて、話しかけてきた。
「あのガゼルさんって人は結構前の戦争で活躍したって、昨日の夜に彼女から聞きましたけど、今はあの怪我・・・歳のせいで怪我をされたんでしょうか」
横を歩く彼からは純粋な疑問として、こちらに話しかけてきたんだと思うような表情だった。
「いいや、まぁ・・・運が悪かった、ただそれだけだ・・・昔よりは強くはないかもしれない。昔はあの爺さん、全身鎧を着て大剣とあの坊主が今日つかってた大盾を振り回していたらしいからな・・・だが、怪我をしていても、ここにいる誰よりも強いと思うぞ」
「そうです、か・・・それであの怪我・・・」
ボソリと不安そうな声が聞こえた。
「心配か?」
「えぇ、少し」
「斥候としては、その勘は正解だろうよ」
「ですけど、彼らと一緒なら何とかなると思います」
そう後ろからついてくる彼らに少し振り返りながら、少し口元に笑みを浮かべ言う。
「あぁ・・・若いっていいね・・・」
そんな若くて眩しい冒険者だな~という感想をヒューは抱きながら、ゴブリンの足跡を彼らは辿って行くのであった。