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泥のダンジョンマスター  作者: ハル
169/255

162.


 そうして、教会内に戦い終わった自警団の人が奥に行って、俺は外の眩しい太陽の光を感じるために出てきたんだが、うん、そうだね、ゴブリンとの戦闘の直後なんて死体だらけだよね。


「・・・」


 少し気分が悪くなって、死体のない森の景色を眺めていると、続々と教会から隠れていた村の人たちが出てきた。


 村人たちの数はある程度は宴の時に見たから多いな~なんてことは把握していたんだけれども、あの俺達も掃除を手伝った奥の地下にこんなに人入ってたんだな・・・と改めてそう実感してみると・・・ある程度地下は広かったけど、これだけの村人たちがいた時はさぞや狭いだろうな~なんて気楽なことを思っていた。


 そうして、片づけをやろうということになったのだが、全員が出てきたところで戦っていない人たちの中には当たり前のように・・・いろいろと苦手な人や運べない人もいて、最終的に俺よりも奥の部屋でゴブリンの襲撃を止めるために配置されていた自警団や、フィーリエ、ウィーン先輩と俺とお婆さん筆頭にやれる村人数人で教会の方の空地へと穴を掘り、油をまき、火をつけ、片づけた。


 この時ゴブリンを運びながら思っていたことは・・・俺が最後の砦ではなかったのかと地味にショックよいうことだった。


 一緒に運んだり、掘ったり、燃やしていたりするうちに友情というよりも・・・知り合いに昇格して自警団の若い人らとちょくちょく奥にいた話を聞いた。


 曰く、暗闇の中じゃ、俺達(自警団の)熟練が出る。若いやつらは逆に連携の邪魔になるからと・・・地下の手前でもしもの時に村人を守れと言われたという。


 若い自警団の人らは、村のために身体を張る覚悟をしていたのに肝心の決戦には参戦できずに、まだまだ力を求め余しているらしい。


 ・・・つまり、不完全燃焼らしかった。


 別に・・・やらなくてもいいじゃない、痛いよ?by脇腹に刺された俺


 まぁ・・・そんなことは言わずに、生温かい目でその人らのことを眺めていた。


 そうしているうちに村の広場で村長、つまり爺さんの声が響いた。


「みなの衆!!宴じゃ!!」


「・・・・は?」




 爺さん曰く、酒蔵を襲撃されていたらしい。


 ・・・数本樽がダメになりそうで、開けるから、戦勝祝いのついでに、宴にしようということらしい。


 酒呑みの場で・・・ひっそりと飲んでいたら、次は頭の包帯やら見るに熟練の自警団の人らに絡み酒を受けた。


 熟練の人らは人らで、その言葉の通りに見事な連携をゴブリン相手に披露したらしい・・・爺さんの薙ぎ払いで教会に叩きつけられたゴブリンの衝撃音ぐらいしかここまで響いてこなかったような気がするけど、こう言うときは空気を呼んで『スゴカッタデスネ』と頷いておこう、そうしよう。


 まぁ・・・最終的にあの暗闇の中でも、俺たちに指示を出せるヒューさんがよかったやら、あの村長は凄いという身内の自慢話に変わっていった。


 そうして話をしているうちに、爺さんのところにその人らは集まって酒呑みをし始めたのだが、疲れていたのか、ほとんどの人たちが爺さんの辺りで酔い潰れたというか・・・緊張の糸が一気にほどけて、寝てしまわれた。


 ・・・つまり強者の近くは安心できるということなんだろうかと、ひっそりと心の中だけで思っておく。


 ・・・今はなんか爺さんともう1人の小さいおじいさんの周りにある意味な死屍累々な光景ができているが・・・ちょびちょびと隅で飲んで関わらないようにしようかな、あそこで糸が切れておじさんだらけの中では寝たくはない。


 寝ないとしても、あそこにうかつに近づいただけで、酒につぶされるような気しかしてこない。


 そうして、寝ている人らには女衆の人らが毛皮などを持ってきて、かけてあげていた。





 何やら村の入り口が騒がしいような・・・そんなことを思って、ゆっくりともしかしてゴブリン?なんて思って、武器を準備しに行こうとしていたら・・・何人かを引き連れた人が来た。


「・・・」


 あれ?あの人確か・・・宴の次の日に爺さんがウィーン先輩をボコボコにした後に、いい勝負していた人だ・・・・ゴブリンの時にいなかったんだと馬を見て察するが、それよりも何よりも馬可愛いな~とみていた。


「おい、ガゼル・・・これはなんだ???」


「お、、、、おう、これはのぉ、宴じゃな、ロイ」


「そうだな・・・で?これはなんだ?」


 潰れて死屍累々になっている人らを指さす。


「そうじゃのぉ、これはのぉ・・・そのぉ・・・・な?」


 酔いつぶれているということを素直に伝えてもダメだろうと、村長はこの時、上手い言い訳を思いつこうと頭を働かせたが、酒に酔っていたせいか、それとも徹夜のせいか、はたまた肩の傷のせいなのか・・・即座に上手い言い訳が思いつかなかった。


「・・・・・・・」


 ロイと呼ばれた中年は無言で真剣をとる。

 この時にはすでに爺さんの横で飲んでいた小さいおじいさんはどこかへと消えていた。


「まて、まぁ・・・話せばわかる、分かりあえるじゃろう!のう??な?だから、落ち着いて、その剣をじゃな」


 ゴブリンの血は雨のおかげか、いや、この場合せいなのかほぼほぼ土に乾き、そんな赤い所など目立たないというか、そもそも見えなくなってしまっている。


 午前中にゴブリンたちの死体は戦闘に参加しなかった組で教会裏にある空き地に穴を掘って、燃やした。


 囲んだ火の中に大半のゴブリンが棍棒は薪代わりとして、灰となり・・・今すぐ出せそうな証拠になりそうなものなど何もない。


 この人を止めるすべはなかった。・・・爺さんは言い訳をせずに真っ先に服に隠れた肩の怪我を見せればよかったかもしれないが、今彼が目に見えるものはガゼルの止める手とは違う手に持った大きなジョッキと周りに転がる酔いつぶれているであろう自警団の部下たちの姿だけだった。


 この人が慌ててこの村に帰っていなかったら、もう少し冷静な判断をしたかもしれないが・・・みなの無事な姿が見れて嬉しいというのがあった、だが、だけど!!この現状に心配と嬉しいという感情がすべてガゼルへの怒りに還元されてしまった。


「うぎゃぁぁ」


 そんな老人の悲痛な叫びだけが死屍累々の村の広場に響いたのであった。

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