161.
その室内はランタンのみで照らされており、非常に薄暗かった。
そんな中でガゼルと自警団長が何やら話していて、そしてヒューともう1人が腕組みをしながら、話が始めるのを待っている。
「あぁ・・・痛たかったのぉ・・・」
そう傷のない方の腕で叩かれたであろう頭の部分を掻きながら、ちらちらと自警団長を見る。
「・・・・」
その一方で目で静かに怒りを貯めながら、無言で村長の方を睨んでいる自警団長。
「あはは・・・お二方。いや、本当にこの状況俺がきついんで、やめてもらってもいいですか?村長、それにロイさ、自警団長殿」
この状況に耐えかねたヒューがそう口を開いた。
「はぁ・・・お前ら全く勝ったからと行って、昼から酒呑みをするやつがあるか!」
「・・・俺は飲んでませんよ」
そのヒューは反論はしたが、一蹴された。
「止めなかった時点で同罪に決まってるであろう!この馬鹿ではなく、お前が自警団を臨時でまとめていたんだろうが!ヒュー」
「あ・・・はい」
そうヒューの勢いがなくなったからか、次はガゼルが口を開いた。
「いやぁ・・・だってのぉ、ゴブリンどもに酒蔵がちと壊されておってのぉ、別の樽を作るにも時間がかかるしのぉ・・・まぁ、どうせなら、勝利祝いにみなで飲んでしまおうと」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
無言で目を細め、その場の圧を強める自警団長。
「はっはっは・・・・はは」
笑い飛ばそうとしたガゼルの勢いが、無言の自警団長の前ではどんどんと乾いた笑い声へと変化していった。
「はぁ~~~~~~だが、無事で何よりだった」
目を閉じ、長い溜息を吐いたあとにそう言った。
村長がこういったやつだと思い出したからか、何を言うのかを説教するのかを諦めたかのように。
無論諦めてはいないが、今この場ではやることではないかと意識を改めた。
「これが無事とはな?」
そうガゼルは怪我をした肩を見せながら、言った。
「命があれば無事だ。そして1人は残念だったな、今年の冬越しは誰も死ななかった良い年だったのにな」
そう目を伏せながら、彼は言う。
「・・・そうじゃの、お主が神官を1人連れてきてくれたのは簡易であろうとも供養の為にもありがたかった」
「・・・俺が駆け付けていれば、すまなかったな」
「どうしようもなかろう、わしだって、傷ついた・・・それにおぬしが見張りの代わりをやるというわけにもいかなかったじゃろう、これはどうしようもなかったんじゃ、1人だけでということをまだ幸いなことだと思おう」
「「「・・・」」」「ぐぅ、ぐぅ」
3人の無言で死者のことを思い出していたが、1人完全に蚊帳の外で寝ている人がいた。
ガゼルが立ち上がり、その人の後ろに行って肩をゆする。
「ふぁ~~よく寝たのぉ?ん?ん!?なんじゃ、なんじゃ肩もみか、いやぁ~坊主ありがとうな!」
起きたであろう元気な声音でそうその人はガゼルに向かって、そう言う。
「・・・」
無言でヒューとロイに目線を向けたが、目を逸らされた。
「ん?で、喧嘩は終わったか?」
首を回し、伸びをしたら、そう真剣な眼差しになってそれぞれ3人を見つめる。
「あ~そうですのぉ、グラナスさん」「ご迷惑をおかけしました」
「昔みたくじいちゃんでもよいのだぞ~」
「「・・・」」
2人は無言となり、ヒューは我関せずの構えをとる。
「さて、まぁ~今はそれは置いとくか!酒の後に頼まれていたことじゃな、あの坊主を貫いていた牙じゃが、坊主の予想どおりじゃったな。わしも昔この村の奥の方でとれた魔物の牙を見たことがある。まぁ・・・ほとんど売り払って良酒をみんなで飲んだのぉ~あ、いかんいかん。うむ、牙を硬さや鋭さを見るにそれと同じくらいの魔物のものじゃったな・・・たぶん。じゃが、ゴブリンどものはろくに加工もされておらなんだし、あの大きさじゃと・・・だいぶ若い個体のじゃのぉ」
その話を真剣な眼差しで効く3人。
「まぁ・・・わしはあれを狩れるだけのゴブリンがまだ奥の方に潜んでおるじゃろうとみておる。油断していたとはいえ、小僧を奇襲できるほどじゃしな・・・それにあの牙のを狩ったにせよ、盗んだにせよ、今回のは防具があれを持ってたとは思えぬぐらいのゴブリンの集団じゃったでな」
「あれより強いか・・・」
肩の傷をさすりながら、その話を聞くガゼル。
その傷をさするガゼルを見て、グラナスはこう言う。
「加工されとったら、坊主それぐらいじゃすまなかったのぉ~ほっほっほ」
「もうこの歳で坊主やめてくれ・・・グルナスさん」
「わしからみれば、誰もかれも坊主と小娘よ」
「はぁ~~~」
反論することを諦め、片手で顔を覆うガゼル。
「何はともあれ、今日来てくれた冒険者の報告に期待じゃな、ほっほっほ」
その一言で締めくくられ、この日の集まりは解散された。