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泥のダンジョンマスター  作者: ハル
166/255

159.


「・・・」


 無言で、最後のゴブリンにとどめをさす。


「・・・」


 あれから教会へ行く道すがら、数体のゴブリンを襲われては倒し、襲われては倒しながら進む。

 明かりをつけているせいか?戦闘音のせいなのか?それとも俺が弱そうだからか、こんなにも襲われるのか・・・気持ち的に最後のではあっては欲しくないが・・・

 襲われないために、明かりを消して進むのは怖いし、なんか暗闇で進むと転びそうな予感がするし・・・迷いそうな気がする。

 戦闘音は仕方ないじゃないか・・・襲ってくるのだもの。

 雨の音で多少は音は聞き取りにくいだろうが、雨の音以外の音が聞こえたら来るよね、普通。

 俺が聞こえる音は雨の音と・・・ゴブリンの鳴き声ばかり・・・

 戦闘音を出さないために、教会へ逃げるのはさすがに村の人たちに迷惑かかりそうだし・・・倒せない敵でもないし・・・

 音を消して隠密を頑張ろうと思っても、そんな技能は俺にはない!


「はぁーーーくしゅん」


 うぅ・・・戦闘続きで雨に打たれっぱなしで、さすがに体が冷えてくる。

 なんか自分こんなに襲われているのに、教会無事なの?とかそんな今から行く先に若干の心に不安を持ちながら、進む。

 でも、歩いているうちに思い出した。たぶん教会には爺さんとヒューさんがいると思うし、普通に無事だなと。




 そうして、教会について、待ち受けていたのは・・・教会の扉の前に立つヒューさんだった。

 ヒューさんは俺の姿を見つけると、肩に手を置いて、こう声をかけてきた。


「よぉ・・・坊主おつかれ、無事で何よりだ。まぁ・・・そうだな、うん、まずは中に入って、ゆっくり休め・・・まぁ、多少の傷はあるだろうからな・・・奥の部屋にすり潰して塗れる薬草が入ってる壺と包帯とタオルは用意してある。手の届く範囲は自分で、手の届かない範囲は中にいる寝てないやつらに声かけて、やってもらえ」


 いつもより優しい声音で言われたような気がする。


「ありがとうございます、そのお言葉に甘えます」


 そうヒューさんに一礼してから、教会の扉に手をかけ、中に入る。

 ユウキが扉を閉めて、足音が奥の方へと遠ざかって行っていることを雨音とともに聞き、誰もいなくなった教会前でヒューはこう呟いた。


「はぁ~それにしてもなんで坊主の身体あそこまで冷てぇんだ・・・相当に冷えていたな。爺さんが言っていた戦闘は十中八九坊主だろうから・・・・ここに来るまでに何回かは戦っていたか・・・それとも道に迷っていたか・・・まぁ、どちらにせよゴブリンの目が明かりがついてて目立ってる坊主に向いていて、こっちへの襲撃はほぼなかったのが、ありがたかったが・・・村人は全員ここに避難して、余所者の坊主もこっちに来たとなると・・・食糧庫が狙いならここにくることはねぇんだが・・・まぁ、次はここに来るよな・・・」


 いつまでも姿を見せぬ月と、その隠す雲で雨を降らす空を見ながら、肩に背負う弓は使えないなと溜息を吐いた後にこう呟いた。


「合図一つで、何人かと村長をいつでも叩き起こせるように指示しとくか・・・」




「・・・」


 奥の部屋に塗る薬はあった。包帯もあった。タオルもあった。服を脱いで水滴を絞って、生活魔法で乾かして、タオルで濡れた体を拭いて、塗り薬をぬった。

 ・・・腹に包帯ってどう巻くんだろうか。そのまま巻いてしまってもよいのだろうかと・・・

 ここにきて、壁が立ちはだかった。


「寝ている人らに声をかけにくい」


 光を輝かせながら、足元に注意して奥の部屋に行ったときに『うぅ』『眩しい』とか言われていた部屋に戻りづらい。


「全然知らない人だし!」


 1人1人顔を確認して、知っている人にお願いする手もあるけど・・・どう考えてもやっちゃダメなやつだよね、うん、分かってる。


「・・・」


 怪我をしているわき腹をさする。

 ポーションの節約は正直ありがたいんだけどな・・・ポーション使っちゃってもいい気がしないでもなかった。

 この時俺の中では、でも・・・塗り薬があるのに、ポーション使うのはもったいない!というもったいない精神が働いた。


 ・・・・


 結果的に普通に巻いた。

 激しく動いたら、解ける気しかしないけど・・・まぁ、いいじゃない、うん。

 素人の巻き方なんてそんなもんだよ!

 そうして、少し時間がたった後に、少し頭が上下にうつらうつらしているときに、突然大きな声で誰かが怒鳴り込んできた。


「起きろ!ゴブリンの襲撃だ!!」


 その声とともに、俺の意識は現実へと引き戻されたのであった。

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