144.
春の暖かさで村や森付近の雪を溶かし始めていく・・・そうすれば、みんなは自然と外での活動を再開し始めるわけで・・・当然の如く稽古などは再開された。
「今日のわしは冬で何かしら壊れてないか、体調が悪くなってないかと村の家々を回るからのぉ・・・今日は確かヒューが森を見てくると行っておったし、小僧はそれをすればよかろう。身体もまだ本調子ではないだろうし、決して無理はするのではないぞ」
弁当といつも通りな道具一式と、まだ寒いからとお婆さんから渡された毛皮のコートを装備して、ヒューさんの家に行くことになった。
「あぁ・・・爺さんにこっちに行けって言われたか、まぁ・・・前衛だし、いても困らねぇか」
「まぁ・・・はい」
「だがな・・・まだ行かねぇぞ?もう少し陽が上に行ったらな・・・まぁ、寒いだろ?入って、暖まれ」
そして、時間が来るまで・・・ヒューさんの家で暖まって、やがて、ウィーン先輩がヒューさんの家にやってきて、森へと出発した。
正直まだ白い森の景色を楽しみながら、歩いていた。
俺から見たら、どこに敵にいるのかなんて分からないからできないことはしない。ただ・・・ヒューさんが見つけるまで、足音は極力立てずに、後をついてきた。
そうすると何かしらの痕跡を見つけて、限りなく・・・嫌そうな?いや、険しそうな?顔をしながら、こう言った。
「あー春になって戻ってきたのか、それとも、どっかからやってきたのか・・・どちらにせよ、嫌になるな」
気になるには気になるので、ヒューさんが見つめているところを一緒になって、見ると・・・小さな足跡っぽいのが地面に残っていた。
『わー足跡がある~これは何々のだ~』という予備知識が俺にあるわけもなく、ただ・・・あるな~という感じで見ていた。
「あーこれゴブリンっすよね?師匠?」
「・・・ゴブリン?」
「ゴブリンだよ、ゴブリン、こりゃ数が多いか?・・・はぁーまぁ、少なくても、罠にかかった獲物も、罠自体も取られるかもしれねぇし・・・帰ったら、フィーリエに禁止って言っとかねぇとな」
こんな足跡してるんだな~正直興味がなかった。だって、俺、盾と剣の前衛希望みたいなことをやっているんだよ?こ、これは猟師とかの知識っぽいし・・・覚えてると便利だろうけど、うん、これから俺も覚えていくのさ・・・たぶん。
そういって、その先に行ってみると・・・だんだんと俺にもいつもとは森は違うなと感じるようになってきた。
「・・・くさい」
「・・・どうせ匂いは酷くなる、坊主我慢しろ、それか早く慣れろ」
「・・・そうっすね」
嗅覚に直接攻撃をかけてくるような臭さ。
草の根が掻き分けられたような跡。
時折見かけるいつもより多い血の跡。
それを追跡するように俺達3人は進んでいった。
そして、前へ、前へ・・・進めば進むほどに、その匂いの濃さは増していく。
慣れたものなのか、ヒューさんの足取りはいつも通りで・・・ウィーン先輩はまだ苦手としているのか、その足が時折遅くなっていく。俺は・・・我慢しながら、必死についていった。
数分後に、ヒューさんの足が止まり、こちらにも止まるようにと手で合図がされた。
あちらを見ろという手でそう促されたので、ゆっくりと・・・それを覗いてみる。
すると・・・少し遠くのほうで腰巻ゴブリン3匹が休んでいた。
ゴブリンだ!!!とかそういうのを思う前に、まだここには白い雪が残っているのにも関わらず、ゴブリンのあの格好。
あれで冬越えしたの?ゴブリンヤバくない?と実際直接目にしてしまったその事実に俺は心の中で戦慄した。
「あ~いたわ。・・・・・・・・・ふぅ、あーそういえば、坊主は人型の魔物はこれが初か?なら、ちょうどゴブリンは3匹だ、俺が1匹やるから、あとの2匹は2人でやれ」
「師匠が先にやるっすか?」
「は?いや、ウィーン、お前が先制やれ・・・俺はあとでやる、ちゃんと先制で倒せよ」
そういって、バンッと音を立てるようなことはせず、肩にそっと手を置いた。
「はぁ・・・・」
そう一呼吸を置いた後に、ウィーン先輩の目に真剣さが宿り、静かに矢をつがえ、狙いを定めた。
そして、ウィーン先輩から一射が放たれた。
ダンジョンやってないわ・・・とか思いつつ、泥のほうも・・・泥してる気がしないわ・・・と開き直りながら、タイトルでも苦し紛れにダンジョンマスターにしようかなとか思った。
5000文字で毎日投稿なんてすれば・・・いいんだけど、作者には好きな作品を色々見るという使命があるから無理なんだ。
・・・泥を使う発想はあるのに、最初から魔法使えるわけないじゃないという作者の意思が・・・バタッ