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泥のダンジョンマスター  作者: ハル
149/255

142.


 そうして、時間は進み・・・どんどんと冬の冷たさはその身体の芯まで凍えそうになるほどに寒くなってきた今日この頃。

 そして、今日の朝から初めて雪が降ってきたようで、朝起きたとき今までよりももっと寒く、一歩この白い聖域から出たら心まで凍ってしまうような寒さ!

 だが、俺の身体を包み込んでくれている白き・・・そんな白くはなかったわ・・・けど、温かい布団が俺の身体から離れることを拒み、身を今でも包み込んで心の中まで温めてくれる。

 だけど、俺はある意味居候の身、起きないわけにもいかずに、布団の中でもぞもぞと着替えながら、階段から一階へと降りていく。

 階段から降りて見えるのは玄関・・・少し・・・外を覗いてみようと思い、ちらっと開けてみる。

 外に広がっていた光景は、灰色の空から白き雪が・・・どんどんどんどん・・・と、めっちゃ降ってきている様子と、その雪が積もっている白くなっている地面。

 これを雪景色?というのだろうか?いや、銀世界?

 そんなことを考えていても、開ければ・・・もちろん、待っていましたとばかりに入り込んでくる雪で冷やされた空気。一瞬雪景色に呆然としながらも、すぐに入り込んでくる寒さから、正気を取り戻し、扉を閉めた。


「ふぅ・・・・こんな雪の中で、外で稽古するなんて爺さん言わないよな・・・?あったら、俺は今日寒さで死ぬかもしれない」


 そんなことがありながらも、食卓のほうに向かうと、爺さんとお婆さんがいた。


「おはようございます」

「小僧起きたか」

「ユウキさん、おはよう」


 そして、いつも通りに朝ご飯を食べるが・・・寒いとなんでこんなにも温かいものを美味しく感じるんでしょう。

 寒さ効果でいつもの2倍は美味しく感じた気がした。

 そして、食事が終わりに近づいてくるころに爺さんに質問をした。


「今日って、稽古は・・・」


 最後のほうになると、どんどんと覇気がなくなっているように、顔色をチラッチラッと窺うようにして、ないですよね?という期待を込めながら、聞いてみる。


「まぁ・・・この雪じゃしのぉ・・・稽古や狩りはできんのぉ、まぁ、冬の雪のうちはなしじゃのぉ、そうじゃなくても、今日はわしにはやることがあるからのぉ、できんのぉ」

「・・・予定?」


 爺さんに予定・・・孫に近づく男を倒しに行くのかな?・・・家に住まわしてもらってるけど、俺にはそのぐらいしか爺さんの予定を思いつかない。


「雪が降ったしのぉ・・・前からしておったが、改めて、村の家々を回って、備蓄があるかどうかの確認じゃのぉ、これ以上雪が降り積もると回るのも大変じゃしのぉ」


 村長らしいことを言っている、だ、と・・・。


「まぁ・・・小僧よ、ほれ」

「ん?なにこれ・・・」


 手渡されたのは木の棒に・・・いや、掘ることを考えてない平らで大きなスコップみたいなのを手渡された。


「わしが行っておる間に、屋根の雪下ろしをしておいてくれ」

「・・・・ハイ」


 まぁ・・・うん、居候みたいな感じだし、稽古されている師匠の命令だし・・・うん・・・やるよ・・・今日凍え死んで、俺の冒険は幕を下ろすんだ。


「はい、寒いでしょうから、これをどうぞ」


 お婆さんから少し・・・というか、だいぶ大きい毛皮のコート?かな?それを貸してもらった。

 少し、いや、だいぶ獣臭いとは感じるけど、温かいわ・・・。

 これでやらないわけにもいかずに、ちゃんとやりました。

 その日の夜はだいぶ豪華な夕ご飯でした。

 その理由を聞くと・・・


「今日が雪初めで、ここから新年として、頑張ろうという村の風習でのぉ・・・まぁ、それで今日の夕飯は豪華なんじゃ・・・これから雪の中での生活じゃからのぉ・・・」


「へ、へぇ・・・」


 と感心しながら頷きながら、美味しい食事を食べました。




 そして、俺はダンジョンに帰ってから、マリウスに今日新年?と聞いてみたが・・・・


「あぁ・・・ん?違いますよ?まだあと30日後くらいですかね?」

「30日もあとなのか・・・」

「そうですよ、新年といえば、とある国の王都なんかではそういう祝いの祭りなんかもするらしいですけど、雪が降っている寒い中でよくやりますよね、春にやればいいのに」

「・・・お、おう」

「あーそういえば、僕がマスターに紹介した辺境だと、たぶん新年のお祝いの後は冬が開けるまでは・・・まぁ・・・食事の質はガクンと下がりますよ」

「・・・え?」




 ・・・マリウス言っていた通り、次の日の夕飯はいつもよりも鍋の具材が少なかったような気がした。

 そして、美味しい食事をダンジョンでとるという・・・後ろめたさを感じる冬の日々だった。


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