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泥のダンジョンマスター  作者: ハル
147/255

140.


 ヒューさんを先頭にウィーン、俺の順で森のほうへと進んでいくと・・・ある木に傷跡っぽいのができているのを見つけたヒューさんが俺達に視線を向けて、こう言った。


「あぁ・・・こりゃ、近くにいるかもな」


 その木と、辺りの地面を確認してから、そんなことを言った。

 そして、ヒューさんは自分の装備を確認し始めた。


「なにがですか?」

「・・・あれ?これって・・・師匠、え?行くっすか?え?やらないっすよね?見せるだけっすよね!?」


 何がいるのか分かっていない俺と、何がいるか分かっていて、師匠の様子を見て、焦り始めるウィーン。


「ウィーン、うるせぇぞ、静かにしろ・・・気づかれたいのか?」

「・・・・・・・・・・・」


 ウィーンが無言となり、物音を立てずに進んでいく・・・俺も下のほうを見ながら、枝とかそういう音が出るものを踏まないようにと慎重になりながら、ついていった。


「ほら・・・あと少しで、見えてくるぞ・・・頭を少しだけ出してみろ、大声出したら、俺がお前の頭を撃ちぬいて、餌にするぞ」

「・・・クマ?」


 ひょっこりと頭を出してみてみると、寝ている大きなクマ?がいた。

 ヒューさんは後ろで俺達がそれ以上頭を出さないように、上から押さえながら、俺達2人にこう聞いた。


「お前ら熊と戦いたいか?不意打ちで倒せなかったら、どちらか死ぬが・・・まぁ、不意打ちできればだが・・・俺達3人無事で持って帰れたら、村の奴らには称賛されるだろうが・・・」

「「・・・全然(っす)」」

「まぁ、冗談だ」


 首を横にブンブン振りながら、それを否定した。


「よし、なら、別の方向行くぞ・・・あんなところで悠々寝てられるクマなんて相手にしないに限る」




 俺達はクマから逃げた後に、昼飯を食べて、そこからまた結構歩いて、その先で見つけたのはイノシシだった。


「お前ら、横に避けとけよ・・・」


 不意打ちで目にそのイノシシは激昂して、『グォォォォ』と大きな鳴き声を上げながら、イノシシはヒューさんに突進していく。


「・・・浅かったか」


 そう何かをつぶやきながら、動揺することなく、右前足の付近に2発撃ちこんで、突進を避けた後、こちらに向きなおす前に、右後足付近に1発・・・ドクドクと血を流しながらも、イノシシはヒューさんを襲うことをやめない。

 だが・・・次第にその突進は勢いを失っていく、それは足の痛みからなのか、それとも血を流しすぎたからなのか。

 だけど、そのイノシシは決して逃げることなく向かっていく・・・逃げたとしても、そこに助かる術などありはしないと知っていたからなのか?それとも自分を苦しめた相手に一矢報いたかったからなのか?・・・だが、そのイノシシの気持ちを知る術はない。

 15分後にはもう・・・そのイノシシは地面に倒れ伏した姿しかなかったからだ。


「まだ近づくなよ・・・生きてるかもしれん、油断するな」


 そう言ってヒューさんはイノシシの頭の眉間を一発を撃ち込んだ。

 そして、ピクリとも反応しないイノシシを見ながら、こういった。


「よし、お前ら解体しとけ、俺は・・・見張りでもしておくわ」


 そう言って、俺達2人はイノシシを解体するのだが・・・解体の仕方がね・・・うん・・・矢を抜いて、そのあとはウィーン先輩に教えられながら、解体したのであった。

 もうほとんど終わりになるぐらいになると・・・『あとは自分やるっすから、ヒュー師匠に矢の確認をさせといてくださいっす』と言われ・・・追い出され、いや、使命を任された。

 そして、ヒューさんの横に行って、矢を手渡した。


「おう・・・なら、周囲に目を光らせとけ・・・何か来たら言えよ?」


 そう言って、まだ使える矢かどうかを確認と、ある程度の血を拭きながら、確認して始めた。


「・・・なんでクマ避けたんですか?」


 なんかイノシシから簡単に勝てたのに、クマも・・・いけるんじゃねぇの?って思えるぐらいには俺にはヒューさんが強く見えたからそう聞いてみた。


「ん?まぁ、足手まとい・・・間違えた、荷物持ち2人いるのに、そんな無茶な真似できるわけねぇだろ、イノシシと違って猪突猛進じゃねぇし・・・それにな、森のあんな見やすい場所で寝てるクマなんて自分の力に自信がある強い個体しかいねぇからよ」


 そんなことを話しているうちにウィーン先輩が、2つの背負い籠にイノシシの肉を持ってきて、やってきた。

 もちろん、一つは俺の分だ・・・。

 用意ができたのを確認したヒューさんは、まだ使える矢、使えない矢と未確認の矢を2つに分けてから、仕舞った。


「さて・・・イノシシも獲れる分とったし・・・急いでここを離れるぞ」

「まだ半分くらい残ってますけど・・・?」


 死体のイノシシのほうを見ると、半分ぐらいはまだ残っているように見える。


「まぁ・・・持とうと思えば、持っていけなくもねぇが・・・全部持って無事に帰れるのはあの爺さんぐらいなもんだ、俺には荷物持ちが2人いても無理だ。ほら、走れ」

「えー」


 そんな疑いような視線を向けながらも、置いてかれてはたまらないと急いで後をついていく。

 そこから・・・どんどん離れていくけど・・・なにやら後ろのほうが騒がしくなってきたような気がした。


「なんか・・・後ろ騒がしくないですか?」

「ん?意外と坊主は耳がいいのか?あれは俺達が狩ってたイノシシの死体の取り合いだな」


 そう走りながら、ヒューさんは教えてくれる。


「俺が見張っているときも、少しずつだが、魔物がこっちを見てたぞ?まぁ・・・冬に入る前は、魔物は腹を貯めこむために襲ってくるからな。正直全部持っていったら、袋叩きに会って死ぬ・・・まぁ、力ある魔物や猟師ならそれを跳ね除けて、独り占めもできるがな・・・俺には無理だがな」

「・・・・」


 そんな見られてたのか・・・全然気づかなかった。


「まぁ・・・俺らの村の食料が足りないなら独り占めするのは仕方ねぇと思うが、俺は余裕があるなら森での恩恵は、俺達の必要な分だけ取って、あとは森に返すべきだと思う・・・俺達は森で狩らせてもらってるだけなんだからな」

「・・・」


 ちょっと・・・速い、森での走りはちょっとこけそうで辛い。


「ほら・・・もう少し離れるぞ、荷物持ち2人頑張れよ」


 どんどん先へとは行かずに俺のペースを見ながら、所々速さを緩めてくれていたと・・・緩めていたと思うんだけど・・・前を走るヒューさんを見失わないようにしながら、背中には肉を持ち、走るのはつらかった。

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