137.
その入ってきた人物はヒューであった。
森に行った2人が帰ってきて、昨日と俺と同じように報告に来るのだと思ったが・・・
ヒューが入ってきた後に・・・続く影はなく、ヒューが入った後に扉は閉められた。
「あら、ヒューさんいらっしゃい」
お婆さんはにこやかな笑顔と穏やかな口調でそうヒューを出迎えるが、その後に続く影がないことに、少し寂しそうに見つめていた。
「フィーリエがまぁ、俺がいるから自分がいなくてもいいだろうってな、家に帰ったんで、俺1人で報告に来たんだが・・・」
ヒューはフィーリエがいないことについて、無事ではあるが、こっちに来なかったというが・・・こちらのほうに来て、食卓に上がっている角兎の料理を見ると・・・頭をかきながら・・・
「あぁ~今からでも呼んでくるか?」
最近自分は猟に行っていないのに、食卓に上がっている角兎の料理を見て、状況を理解したのか、目を手で押さえながら、そう言った。
「いいのよ・・・あの子が望まないのに無理して来てもね・・・」
そう寂しそうにお婆さんは言った。
「あぁ・・・悪りぃ、余計なこと言っちまったか」
そう言いながら、居心地が悪そうに、席に座る。
「こほん・・・まぁ、ヒューよ、話を聞かせてもらえるかのぉ?」
場の雰囲気を変えようと、席についていた爺さんが咳払いをして、ヒューに森でのことを聞いた。
「あぁ・・・その前に今日は酒と料理は遠慮しておくわ、2日も朝帰りするとアリシアが怒るしな・・・それに朝、道具取りに家に戻った時にアリシアには、今日は報告だけして、夜は家で食うって約束したからな」
皿とコップを用意しそうになるお婆さんを止めて、そういった。
水を一口飲んだ後にヒューは話し始めた。
「まぁ・・・結論から言うが、森に行ったが、何も分からなかった」
「・・・ふむ、そうか」
そう何やら難しい顔でそう頷く爺さん。
「分からなかった?」
そう何もわからないわ・・・という顔でつぶやく俺。
その俺の声に反応してか、ヒューは俺でもわかるように教えてくれた。
「ん?まぁな・・・仮にだ、森に一番異変が起こるのは、奥に強い魔物や統率する魔物が生まれたとしたら、森の奥の手前のほうの動物や魔物は、その力を恐れて、俺らの村に来るはずだ。それなのに、村のあたりの様子はこれまで通りに変わらねぇしよ」
「・・・ふむふむ」
目の前にあるご飯がおいしそうだけど・・・真面目に話をしている中、しかも俺のために説明している中で自分だけが食べるなんて行為ができる心の強さがあるはずもなく、適当に相槌を打ちながら、目を・・・ヒューさんに、心の中で食べ物を見つめておく。
「俺らが今日見た残っている森の跡から見ても、こちら側から奥のほうに逃げてるんだよな。それがよくわからないんだよな・・・強い魔物が縄張り争いに負けて、下に逃げてくることはあっても、弱い魔物が強い魔物に挑みに行くなんてことはそうそう起こらないんだよ。それが森全体で起きている。だから、森が不自然すぎて、俺には何もわからなかった」
・・・強い魔物が下に降りてきて、その先で奥で逃がした魔物を倒して、レベルアップして、そのまま帰っていったとか・・・いや、ないな、それだと、村に動物や魔物が来るってことだよな~。
強い魔物が下で強くなって・・・奥に行ったがありえるか・・・?それもそれで村に魔物来るよな~・・・
俺はそこで思考を止めた・・・だって・・・
猟師が分からないことが俺に分かるはずもないだろう。今俺の頭の中を支配する感情はただ一つ!!腹減った・・・。
「結論通りに言うと、なんも分からなかった・・・まぁ、普通じゃなかったのは確かで、何かしらのことがこれから起こるかもしれねぇから村の連中には注意しといたほうがいいだろう」
そう出された水を飲み終わった後に、立ち上がって、そういった。
「あ~それとある程度活動している魔物も動物を見つけたし、俺が前に言っていた冬が近くなるってこともないだろうな」
去り際にそう言ったのだが・・・・お婆さんがそれを止めた。
「はい、どうぞ」
お婆さんはヒューに、お土産として、角兎の料理を渡していた。
「あぁ・・・ついでだから、俺からフィーリエに渡そうか?」
鋭い眼光がヒューを射抜く。
「あぁ・・・俺が渡すのは・・・まぁ、俺が直接家に行って渡すってのは爺さんがうるさそうだし、家に帰ったら、アリシアに頼むわ」
そう横目で座っている爺さんを見ながら言った。
「俺達の分も分けてもらって・・・悪いな、んじゃ」
そう言って、ヒューさんは出ていった。
ご飯は美味しかった、けど、この場の雰囲気の重さが・・・心に・・・きた。
お酒でそういうのを忘れるという方法を俺にできると思うか?無理だろう・・・