135.
そして、彼女の後ろをついていけば、一軒の家についたんだけど・・・
ガチャっと、ノックもなしに普通に家の扉を開けて、中へ堂々と入っていった。
彼女のあとに続く形で俺もこそりと・・・「お邪魔します」と言いながら、中に入ってから、寒いから肘で扉を閉めてから、彼女が行った方向に鍋を置きに行った。
「フィーちゃん、ご飯持ってきたから、一緒に食べよう」
そんな声が彼女が行った方向から聞こえてくるが、フィーリエの返答はなかった。
「あら?いないわ・・・上かな?」
そう彼女は辺りを見渡してみて、今この場には目的の人物がいないと知った。
「・・・」
そうして、彼女は持ってきたバスケットを食卓のほうに置くと、二階のほうにへと上がっていった。さすがにフィーリエがいるであろう部屋、たぶん私室に行こうとしているであろう彼女の後は追わずに、ここで鍋を温めなおすために台所を借りようかな~とそんなことを考えながら、台所のほうにへと向かおうと思ったのだが・・・
「アリシアさんうるさいです、今までトイレにいて・・・」
そして、こちらの部屋に来た彼女と俺は目が合う。
現状が理解できないという感じに彼女は固まった。
・・・その中の俺はもちろん、気まずい。俺が思っているように彼女もまた同じように気まずくも思っているだろう。
自分の落ち着ける家に、同性の相手が自分のために訪ねてきて、その自分達しかいない場所だと思っていた。
だからこそ、こんな油断して、あんなことを気軽に言ってしまったのだろう。
・・・・気まずさの数倍の恥ずかしいという気持ちが彼女の中にはあるだろう。
俺はこの現状を打開はしたいが、俺から話しかけてなんかなったら嫌だし、そもそも今の固まっている相手になんて言えばいいのか分からない!それにそもそも彼女と俺は今日あったばかりの他人だよ!
そして、互いが互いを見つめあってから、無言の時間が続くが・・・やがて彼女のほうから声をかけられた。
「・・・なんでいるの?」
シンプルにそう聞かれたので・・・自分の手に持っている無実の証明である鍋を彼女に見せつけながら、こう言った。
「・・・おばあさんから鍋を預かって、それで届けに来たんだ」
台所のほうに向かうところだったので、自分の持っている鍋を精一杯アピールしてみる。
自分は無実でやましいことなんてしていませんという気持ちを込めて。何か聞いちゃったかもしれないけど・・・。
俺の希望など儚く散って、彼女はそんな俺にお構いなく、冷たい目線になって、こういった。
「人の家に勝手に入るって常識がないの?」
「あ、いや」
あ・・・これはアリシアさんが入った後、1人で家の前で待って、ノックをして、待つべきだったか・・・。そういうの気にしないでアリシアさんのあとをコソコソついていったのが、ダメだったか。
弓などは家の中だからか、背負ってはいないが、まだ・・・腰のところにはナイフがあり、警戒してか、彼女はそれにいつでも手を伸ばせるようにしている、そんな時にあの人がやってきた。
「あ、フィーちゃんいた」
そう!救いの女神が上から二階から舞い降りてきた。
「アリシアさん、ちょっと無断で人の家に入るゴミを片付けてから、ご飯にしましょう」
「・・・すいません」
「あれ?あ、うん、私がうるさくしちゃったから、彼の入った音や彼の声が聞こえなかったかな?ごめんね」
この状況を見て、何かを察してくれたのか、そう自分が悪かったという感じにアリシアさんは話をしてくれる。
そうして、あれやこれや・・・小声で話し合っている2人を見ていると。
フィーリエの顔はだんだんと警戒心丸出しの冷たく鋭かった目つきの顔から、ある程度顔にしわを寄せて、まだあまり納得していなさそうな雰囲気だけど、アリシアさんに促されるまま、こう一言俺に向けていった。
「・・・ありがと」
そう感謝の述べられた後に・・・一緒にお食事!!なんてうまいことになんかなるはずもなかった。
届けに行っただけで、そう・・・何もなかった。
普通に用事が終わったなら、家から出たら?のようなことを言われた。
そう少しぐらい!!一緒に食べて、仲良くなるなんていう期待もあった!そう男の子だもの!!
だが、そう上手くはいなかった。
追い出されるように出た夜の寒さは・・・ちょっとなんかあるかもしれないという邪な心の温かさを容赦なく奪い取っていった。
そして、1人寂しく・・・爺さんの家に帰って、酒飲み2人に勧められ、初めてのお酒を飲んだよ・・・苦かったよ・・・。
予定だったら・・・2人は良い感じになるかもしれなかったけど、アリシアさんが作者の妄想の中で勝手に動いた結果こうなった。