134.
そして、彼女の出ていったほうから視線を食事のあるほうにうつすと・・・爺さんが転んでいた。
「・・・」
出ていった時の音結構強めに聞こえていたけど、近くで爺さんが転んでいたんだな。うん・・・実際はそんなに強くバンッって、扉を強く閉めないで、慎ましく出ていったのかな・・・ん~なさそう。
「・・・早く追いかけねば」
「もう、おじいさん、あなたや私が追いかけていっても、あの子は機嫌を治さないと思いますよ。それよりもっと不機嫌になるかもしれませんよ?」
「じゃ、じゃが・・・」
爺さんは膝についている埃をパッパッと払いながら、立ち上がり、フィーリエの出ていった玄関ばかりを見つめていた。
だが、お婆さんの言うことも分かるのか、爺さんはその場でどうするべきかと思い悩み、そのまま立っている。
「そうですね・・・ここはユウキさんに行ってもらいましょう」
エ?こっちに飛び火してきた!?
「ユウキが行くのなら、それよりはわしが行こう」
ギロリとこちらを睨みながら、言ってきた。
「さっきも言った通り、おじいさんが行ったって、フィーリエは機嫌が悪くなるだけですよ?嫌われてもいいのですか?」
「じゃが!それよりもフィーリエを家の中で男と二人っきりになどできるか!!」
爺さんからの可愛い孫を嫁に出せるか!?的な発言・・・普通に俺も今日知り合ったばかりの女の子の家に突撃なんてしたくないな。
「・・・フィーリエがユウキさんが襲い掛かった程度で負けると?」
なんで俺が家に行ったら、襲う前提の発言なのでしょうかね・・・男はみんな飢えた狼かなんかですか?ここで発言をする勇気もないので、心の中で思っておくだけだけど・・・
「いや、そんなことはない、ないが・・・でものぉ・・・小僧も男じゃしのぉ・・・」
「・・・」
そのある意味な信用に、俺の目からそっと水滴がこぼれちゃう。
ていうか、男と2人っきりが嫌なら護衛にも出さなきゃよかったやん・・・まぁ、相手が完全武装しているのに俺が襲い掛かっても、返り討ちにあって、頭に大きな穴があくだけか・・・。
「それにいつまでも話し合っていても、あの子今日は森に行ってたんだから、食事の用意もしてないでしょうね。それにここにある食事にもあまり手を出してなかったみたいですし、きっと今頃お腹を空かせてますね。ユウキさん、あの子にこの鍋を届けてくれないかしら?私はおじいさんの相手があるし、おじいさんが行ってもね~歳の近いあなたのほうが私達が行くよりかはいいでしょう」
いつの間に用意していたのか、鍋があった。・・・あれ?今の今までおじいさんの近くにいたから、そんな準備する余裕なかったから、これはもしや・・・出ていくのを予想済みですでに用意されてあったとか・・・
まぁ、普通に明日の朝かお昼に出す用を別に入れてあっただけか・・・。
「グググ」
なんか爺さんが必死に自分が行きたそうなのを堪えて、俺の両肩に手をバシッとおいて、力を込めながら・・・
「小僧、頼むぞ・・・何かしたら、分かっておるな?」
あ・・・うん、断れないし、食事を届ける以外に彼女に何かやるという選択肢も度胸もないが・・・うーん。
「もし・・・家にいなかったらどうします?」
そこで今の今まで全然話に入ってこずに、1人お酒を飲んでいたヒューさんが口を開いた。
「自分の家に帰ったに決まってるだろ。あいつは見習いでも猟師だ、多少普通の奴らより強かろうが、夜の森の怖さなんて初めのうちに嫌というほど教え聞かせてきた。あんな怒ってても、無闇に入ったりはしないだろう・・・まぁ、家にいなかったら、他には付き合ってる彼氏の家とかな・・・あの爺さんの目の黒いうちにあいつに彼氏ができるなんてことは想像もできないが・・・あぁ・・・冗談だ、冗談、今は猟師になるために頑張っているからな、向かったのはあいつの家だ、坊主頑張って来いよ、それに俺がいっても、説教臭くなるしな」
爺さんにギロリと鬼のような形相で睨まれたからか、ヒューは即座に自分の考えを否定した。
それに自分は酒を飲みたいから、代わりに行ってこいという幻聴が聞こえたような気がするけど・・・まぁ・・・トボトボと行きますか。
どの場所に彼女の家があるかなんてわからずに・・・今戻っても、おばあさんは爺さんの相手をしているから戻りづらいし・・・知らない人のうちにいきなりお邪魔します!!と聞きに行けるほど・・・俺はフレンドリーじゃない!!だから、唯一、一度だけいったことのあるお宅の前に行った。
そして、鍋で両手が塞がっている状態で、頭でも打ち付けてノックか、それとも鍋も地面に置いてノックか、どちらにしようかな~と思っていたら・・・
「あれ?ヒュー帰ってきたの?」とアリシアさんが出てきた。
「あ・・・どうも」
「あれ?ヒューじゃないや、さっきの子か・・・」
さっきよりかは幾分警戒しないで、話しかけて来てくれた。
「あの・・・フィーリエさんの家の場所を聞きたいんですが・・・」
俺が持っている鍋を見て、ふ~んと一言いった後に・・・
「ヒューって、あっちの家でお酒飲んでた?」
そうにっこりとした笑顔で聞いてくるので・・・
「え?はい、飲んでました」
「ふ~ん、ちょっと待ってて」
そう言って、家のほうへと戻っていった。
「・・・場所聞けてないや」
でも、待っていてと言われたので、大人しく待つ。今この機会を逃すと、本当に何も接点のない人に突撃しなきゃいけなくなるから・・・数分の夜の寒さぐらい問題ない。
数分後、バスケットを持った彼女が姿を現した。
「さぁ・・・いきましょ、案内するわ」
「え?あ、はい」
同行人が1人増えて、フィーリエの家に行くこととなった。
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「そういえば、ユウキさん、フィーリエの家の場所知っていたかしら?」
「そんなことならなんとかするだろ、あいつは一応森の前で倒れてたんだ、行動力は人並み以上にはあるだろ、それより酒飲もう、酒飲もう」
「グヌヌヌ・・・心配じゃのぉ」
よもう、アルファポリス、そして、ついにカクヨムで・・・小説探しを始めてしまった。
豚してる人をめっちゃ楽しみながら、読んでる俺が・・・ああいう主人公っていいよね。