130.
こうして、2人は森へ罠を仕掛けに行ったのだが・・・
「なによ・・・」
「いや、なんでも・・・」
会話がない・・・じーっとただ彼女の後をついていくだけ・・・だって、護衛なんだけど、どこに罠を仕掛けるのかも知らないし、1人になったらなったで迷いそうだし・・・まぁ、護衛として来てるから彼女に置いてかれないようについていくんだけど・・・一応森へ行くのなら、取りに行きたいものがあると言って、出発の前に自分の荷物からポーションとそれを入れるためのポーチ、方位磁石を持ってきたけど・・・うん、彼女が真っすぐと森を進んでいるということはなく、もしも置いて行かれて1人になっても無事に帰れるかな・・・ははは、1人になったらなったで帰れても、爺さんから制裁エンドが待ち構えてるだろけど。
「俺が先頭のほうが・・・何かあった時にすぐ守れるし(守らないと帰った後に爺さんから殺されるような稽古になりそうだし)・・・できれば、後ろのほうにいてほしいかな・・・なんて」
それとな~く先頭を行く彼女に・・・怪我されたら、爺さんに殺されそうになるかもしれないから、後ろのほうでどこ行くかの誘導だけしてくれないかな?かな?という気分でそう言ってみる。
それに・・・前に行っていたほうが彼女に頑張ってついていかなくてよくなって少し楽になるし・・・でも、もし・・・後ろを見たら、はっ!?どこに行った!?っていうこともなったら・・・ないか、ないと願いたいな。
「は?!あんた、私の先導が信じられないっていうの?こっちはあんたより何倍もこの森で生きてるんだからね!それに私はあんたに守られるほど弱くないつもりよ・・・あんたはおばあちゃんが連れてけっていったから、連れていってるだけ」
それを彼女の狩人としてのプライドというか、尊厳というかそういうものを傷つけたのか、めっちゃ睨まれた。
さすがにさっきのように射かけようと素振りなどはなかったが・・・ギャルゲ風にすると、好感度がマイナス10くらい下がってそうな気がする。
「・・・・ナンデモナイデス、スミマセン」
うん、ここはもう大人しく付き従おう。
これ以上機嫌を損ねて、移動速度が速くなって、置いて行かれでもしたら・・・ね?
「ふんっ」
そう言った後に、彼女は何を言うでもなく、また無言のまま歩き始めた。
「このあたりね」
そう言って彼女は俺のほうを振り向いて、一言。
「罠」
「あ・・・はい」
持ってきている荷物の中に入っていた罠を取り出し、彼女に渡す。
「目印」
「・・・?」
俺の何を指すのかよくわかっていない表情を察してか、俺から荷物を入れているリュックを奪い去って、目当ての紐を取り出して、それを上のほうの木の幹に縛り付けていた。
それを何をやってるんだろうな~?っていう目で見ていたら、彼女が・・・
「はぁ・・・私以外にも他の狩人がいるし・・・もしも私が回収するときに目印のない罠のことを忘れて置き去りにして、他の狩人がかかったら、どうするつもりよ?」
そう少し呆れたような声で言われた。
「・・・」
アレ・・・もしかして、俺が不用意に先導してたら、足にあの罠が・・・慣れてる人に先導してもらうのって素敵だと思いませんか?あはははは・・・でも、少し軽くなったし、いつでもすぐに守れるぐらいのある程度の距離にはいないとな・・・後が怖い。
そんなこんなで他の罠を仕掛けるために歩き出してたのだが、よくよく木の上のほうに視線を向けると・・・紐がいっぱいなんてことはなかったが、歩き続ける中で一つ紐を見つけて、彼女はそれを迂回するように進んでいた。・・・俺が先頭になるのを拒否してくれてよかった。
先導する彼女は森の奥へ奥へと進んでいっているような気がする。
「なんか奥行ってないか?」
俺がそう口にすると、今更かという感じで
「そうね、罠を張るとは言ったけど、張る場所の近くに偶然獲物がいたなら、狩っていいのよ・・・別にあんただけ先に帰ってもいいのよ」
あと一つの罠を仕掛ければ、終わりというところで・・・悪びれた様子もなく彼女はそう言った。
「えぇ・・・」
偶然(故意)か・・・帰れるなら、帰りたい・・・帰れないけど。
なんか太陽が・・・いつもお昼ご飯かな~っていう位置ぐらいになっていて、終わってなくて、なんかおかしいな~とは思っていたんだよ!獲物を狩った後にでも食べるつもりなのかな。
ていうか、1人でやれるとか、そういうのフラグだよね。帰れても、爺さんに激おこされたあとに、彼女が帰ってこない~とかになって、爺さんからの制裁で俺の破滅エンド・・・
そうはなりたくないので、どうせ1人じゃ戻れないし、もうどうにでもなれ~と彼女を止めるでもなく、ただついていくのであった。
誤字報告がありがたい・・・短いから、ある程度見ているつもりが直される・・・