129.
今日も今日とて、朝ご飯をいただいて、『先に出ておれ』と言われ、庭に行ったら、知らない女の子に出会いましたとさ・・・
「誰よ、あんた」
「え・・・?」
思考停止して、ぼーっと突っ立ていたら、女の子はめっちゃ訝し気にこちらのほうを見ている。その手は地味に弓のほうへといっていて、すぐにでも戦闘態勢になれるようにしているんだけど・・・え?何この子、怖い。
そうして、どうしよう・・・回れ右して、爺さんの家に逃げたら、その間に弓射かけられるよなとか、思いながら、早くお爺さんカモン!なんて思っていたら・・・その願いが天に通じたのか、爺さんが今日は珍しくお婆さんを伴って、出てきてくれた。
「おじいちゃん、誰この人?村の人じゃないみたいだけど」
こちらに警戒しているからなのか、顔を爺さんのほうには向けずに、手は弓をいつでもこちらに射かけられるようにして、聞いていた。
「もう来ておったか、フィーリエ、こやつはおぬしの護衛じゃ護衛・・・」
「はぁ!?こいつが護衛?別に私1人で大丈夫だって、護衛なんていらないって言ったよね?」
人の顔を指さしながら、ありえないみたいな感じで言わないでほしいな・・・軽く傷ついちゃうな、俺。
当の護衛本人は何にも聞かされてないけど、なんで爺さんは俺の部屋に置いてったはずの剣を持ってきているのかな・・・タダより高いものはない!!!もう結構泊めさせてもらってるし、それに爺さんのストレス発散の目的でも、稽古もつけてもらってるし・・・断るという選択肢は・・・まぁ、うん、取れないよな・・・。
「いやぁ・・・だが、心配じゃしのぉ」
爺さん・・・あんた、足のほうをモジモジとさせながら、言わないでほしい。いつもボコボコにされている見ている俺からの希望。この声は、この願いは・・・天には届かなかったみたいだ。
「私はいらないって言ったよね?それにおじいちゃんの頼みを聞いて、今日の猟も罠を仕掛けるだけにしたんだからね?」
指で指しながら、『いらない』なんて傷つくよ・・・ありえないの十倍は傷ついた。
「じゃがのぉ・・・もしものもあるかもしれんしのぉ」
言い合いでは、爺さんに何も譲らない女の子。それにこのままでは俺と押し付けるのは無理だと思った爺さんは、お婆さんに助けを求めようと視線を向けていた。
「まぁまぁ、おじいさんもフィーリエ、あなたのことが心配なんですよ。
・・・それにね、ここのところ森のほうが騒がしかったじゃない。だから、私も1人で行かせるのは心配なのよ」
爺さんの目線の意味をちゃんと理解していたのか、お婆さんは女の子の手をとり、ね?と小首を傾げるようにして、そう後半のほうは俺からは聞こえなかったけど、女の子のこっちを見る目がさっきと比べて、柔らかくなったような気がする。・・・なんか俺が不憫な子なんていうことを伝えられたのかな・・・
「うん・・・おばあちゃん、分かった」
「それとね、これはお弁当よ」
「そんな罠を仕掛けるのに時間なんてかからないよ・・・昼前にはうまくいけば戻れるから」
「一応何があるか分からないんだから、持っていきなさい。それと気を付けて、行ってくるのよ?」
「うん、ありがと、おばあちゃん」
目線が軽くなってきたところに、俺のほうはというと、爺さんにズルズルと引きずられて、剣とその他の道具や弁当などの荷物を渡された。
「孫の護衛をよろしく頼むぞ、ユウキよ」
「え?やっぱり孫?」
おじいちゃん、おばあちゃんから予想はしていたけど、爺さんに筋肉じゃない孫なんていたんだな・・・ていうか、今俺思ったんだけど、爺さんとお婆さん以外に村の人と全然関わりを持ててないや・・・俺村に無事に帰れたら、交流するんだ・・・。
「そうじゃ、わしの孫じゃ・・・それとまだまだ未熟な大楯のほうは使えんと思ったのなら、捨てて構わんから、生きて孫を連れ帰れよ・・・孫を見捨てなどしおったら、わしが死ぬまでおぬしを追いかけるからのぉ」
「・・・は、はい」
地味に肩を掴んでる手が食い込んでいて、痛い。顔が近い。・・・めっちゃ怖い。
「それとな孫に手を出したら、殺すぞ?」
護衛をする前に再起不能にする気かな・・・この爺さん。さすがに折れる前に手は放してくれた。
あ・・・そういえば、初めて名前呼ばれたような気がする・・・・これが死亡フラグにとかは、うん、ないない。ない・・・よね?孫に手を出して、逆に爺さんからの制裁エンドなら・・・あり、いやいや、俺がそんなことできるわけないから、ないか。