128.
今日の朝の朝食もいつも通りで、昨日の怒っていたお婆さんだったが、朝にはそのことを引きずっておらずに、朝の食事を減らされていなくて、安心した。家主である爺さんのほうの食事が少し昨日より貧相になっていたような気がしたけど、うん・・・気にしない気にしない。
「なんで今日はそんなに大きな木剣を持っているんですかねぇ・・・えぇ」
今日は自分だけが食事が貧相になっていたことの不満による・・・稽古という名のフルボッコとかかな・・・・黒パンの一つぐらい爺さんに渡せば、よかったのかな。
お婆さんの目があるから、絶対やってなかったと思うけど。
「まぁ、本当はわしの愛剣がよかったんじゃが、その貸した大楯じゃと、受け方が悪ければ、おぬしが真っ二つになるからのぉ。しっかりと技術を持った奴が使えば、そんなことは起きんが・・・まぁ、これならわしが本気を出したりしても、死なんからな。はっはっは」
そんなことを爺さんは笑いながら、言いながら、俺の背中をバシバシと叩いてくる。
「・・・」
あれれ・・・やっぱり今朝のご飯のことを根に持っているのかな。
・・・俺だけ朝ご飯がいつもと同じだったから。
だから、今日はいつもとは違う大剣の形の木剣を持ってきて、これからさぁ・・・稽古するぞなんて言う雰囲気を出しているんだろうか・・・
というか、真っ二つというのが穏やかじゃないですよね。死ぬよね、死にますよね。
それほどまでに飯の恨みというものは怖いというのか・・・。
真っ二つにされたら、いや、まぁ・・・別にホムンクルスが死ぬだけだけど、そんな訓練でうっかりで殺されたくないけど・・・
「今日は全力で守れ!攻撃など必要ないぞ。ただわしの攻撃を受け止めろ。ただそれだけじゃ、簡単じゃろ?まぁ・・・できるのであれば、反撃しても構わんぞ」
「・・・」
朝ご飯のことを謝るなら・・・今しか・・・ないのか!?
「そんなことなど、させんがのぉ」
そう言った後に、ビュンという音とともに、爺さんの持っていた大剣は横薙ぎに思いっきり振りぬかれていた。それの勢いによるものか、爺さんの技術なのか・・・正直よくわからないが、俺の持っていたはずの大楯はいとも容易くを吹き飛ばされていた。
数瞬後に左後ろのほうから、ドンと何か大きなものが落ちてくる音がして、そちらのほうへと振り向くと・・・持っていたはずの大楯が落ちていた。
「余計なことばかり考えておると、怪我するぞ?ほれ、早く拾って構えんか」
少し余計なことを考えていたかもしれないけど・・・ある程度はしっかりと持っていたはずだ・・・その驚きの後で、それを自覚したかのように左手がジリジリと痛みを感じた。見てみると皮膚が少しめくれていた。少し程度でよかったと思っておくことにしよう。身体のほうに当たっていたら・・・いや、爺さんが当てようとしていれば、普通に内臓破裂しそうなレベルだと思うし・・・うん。
ふぅーと深呼吸、爺さんは食べ物の恨みでちょっと今日は厳しい稽古なだけだ・・・そうだ、今日を切り抜ければ、まだマシな稽古みたいなものになるはずだ。よし!一旦食べ物のことを忘れて、全力で守る!
「ふむ、少しはやる気の出た顔になったのぉ・・・次に気の抜けた表情をしておったら、当てるぞ?」
「・・・大丈夫、問題ない」
今日この稽古で思ったことは、俺は思った以上に大楯で受け止めるということより先に、爺さんに他の手段で倒されたりしたということだ。足を崩されたり、防御が間に合わなかったり、ただ単に俺の体力不足だったりして・・・
それほどまでに防御という面だけを見れば、大楯の守りというものは堅い・・・だが、その使い手の俺が強靭なわけもなく・・・その強すぎる衝撃を受け止めた反動によって、手が痺れて、少しの間大楯を持てなくなった。
「もっとこう身体全体で受け止めろ!そんなやり方じゃ、すぐに使えなくなるぞ」
もっとこうの部分を詳しく教えて欲しい気持ちがあるんだけど、口を閉じ、自分の筋肉を意識して、衝撃に備えておかないと、体ごと吹っ飛ばされかねない。
「ふぅ・・・まぁまぁかのぉ・・・今日はこれで終わりとする、さて、飯じゃ飯」
そう言って、爺さんは家へと戻っていく。
「・・・」
倒れていた俺は自分の腕をグーパーグーパーと開いては閉じ、開いては閉じを繰り替えてして、ちゃんと動くことを確認して、起き上がるのも・・・つらい、腕の部分が・・・
「仕方ないのぉ・・・」
いつまでも起きない俺のことを見かねた爺さんはそのまま担いで、運んでくれた。
その日の食事は・・・いつも通り美味しかったけど・・・腕が・・・腕がぁぁぁ!!と疲労との戦いであった。