117.
「南にずっと進んでいけば村が見えますよ・・・何日かは・・・マスター次第です」
そうして、俺はマリウスに転移されてから、言うとおりに方位磁石を見ながら、休憩を多く挟みながら。トテトテと南へと歩いて行った。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
正直1人だと・・・自然がきれいだな・・・水のせせらぎが・・・鳥のさえずりが・・・なんかの鳴き声が・・・とか、思っていても、正直1人だけで喋っているのが、1時間もしているうちに空しくなって、今では黙々と歩いていた。
村に行くという目的はあるが、その目的までの道のりが長い。こういう場面では予期せぬ戦闘!つまり、ゴブリンなんかと森の中ばったり出会って殺し合いみたいな感じがあるとは思うんだが・・・なんもない。遠くでなんか鳴き声や足音みたいのが・・・聞こえたような気がするけど、こっちに来てるっていう音がしない。・・・別に俺の耳が悪いから聞こえないだけとか、相手が足音を消して、俺の首元を狙っているんだとか、そういうのもあるかもしれないけど、そういう・・・なんというか、物理的な命の危険というものに出会ったことがないから、分からないけど・・・でも、ポーションを飲まされたような危機を感じないから・・・たぶん、大丈夫なんだろうと思いながら、俺は進む。方位磁石を右手に。
「・・・やすも」
太陽がだいぶ落ちてきて、辺りが少し薄暗くなってきた時に足を止め、リュックに固定してあるテントを下ろして、準備をするのだが・・・
「・・・ハンマーが欲しい」
杭を地面に打ち付ける道具が・・・フライパンでやって、凹んだりしたら嫌だな。いや、入れなかったんだから、何か・・・ほかの方法が・・・
地面に転がっている石を使って打ち付けた・・・手が痛い。それにしても、結構音を出しているはずなのに・・・何もイベントが起きない・・・な・・・。
正直不慣れな場所でやって・・・辺りは予想よりだいぶ暗くなっていた。リュックのほうから、ランプを取り出し、灯りをつけて、マリウスから服につけられた腰にあるランプをつけるためのとこにつけてから・・・
「暗くなってから準備してからは遅いのだよ・・・・はぁ・・・そんなこと言ってもしょうがないよな。枯れ枝でも探してこよう・・・」
枯れ枝を探しに、立ち上がろうとした視線の先にある。荷物を見ながら、もし自分がいなくなってものが全部取られていたら泣くということが容易に想像できたので、念のためにリュックを背負って、枯れ枝を探しに行く・・・周りが暗いし、何かがリュックを取ろうとしてもよくわからないし、分かったとしても、俺遠距離攻撃なんてできないし、持ち歩くのは仕方ないことなんだと背中の重みを感じながら思う。
そうして、重い荷物を背負って、枯れ枝を拾ってきて、戻ってきた。・・・そして、目に映るテント、もしテントの中に荷物を置けば、よかったのだろうかと、帰ってきた時に思ったんだが・・・でも、それでも、取られるかもしれないしな・・・という不安があるから、気にしない方向で行こう・・・うん。
明日からは歩きながら、少し重くなるけど、枯れ枝とか拾いながら・・・歩こうかな・・・とこの経験から学んだ。
そして、食料を漁り・・・ビスケットと燻製肉を取り出して・・・から、こう思ったんだ。
「焚き火する意味って何だろうな・・・あんまり寒くもないし・・・灯りとか、野生動物に対する警告とかなのかな・・・考えたって知らないものは知らないんだけど・・・野菜持ってきていたり、生肉なんか狩れれば調理とかするんだろうけど・・・」
ボリボリ、パクパクと・・・そして、水筒の生温い水を飲みながら、微妙に硬い肉を飲み込む。
「これから俺は寝るしかないんだけど、俺1人でテントの中で寝て・・・もし魔物に襲われたら・・・テントの意味ってなんだろう・・・視界の邪魔にしか・・・風を通して体を冷やさないようだとか、落ち着くためとか、雨を防ぐためとか・・・ぼっちだと外の見張りとかそういうのがないからな・・・はぁ・・・」
「・・・おやすみ」
誰に言うでもなく、そう呟いて、疲れていた俺の意識は闇に落ちるわけもなかった。枕が変わって、寝られないとかそういうんじゃなくて、目を閉じると、耳に感じる音を意識してしまって、なんか・・・なんかが!!移動したとか、遠くに聞こえる川の流れる音とか、木の葉が擦れる音とか・・・なんかいろいろな音を意識してしまって、全然安眠ができない。そうしているうちに・・・いつのまにか寝ていた。
調子に乗ってホムンクルスの身体に乗り移って転移して、戻り方がいつもみたいにうまくいかずに1人旅・・・マリウスはそのことに気づいていると思うんだけど、いつになったら俺は元の身体に戻るんだろう・・・。