108.
あの・・・地獄から2日後の農場。
「ん・・・これが年季の差か!?」
ゴツンとそう叩かれ、右手の平にゆらゆらと出ていた火はその痛みと共に掻き消えた。
「才能の差と言ってほしいですよ、才能の差と」
「・・・痛い」
「そんなことを口走らずに、黙々と生活魔法の練習をしていれば、こんなことやってませんよ・・・それにまだあんなにもポーションがあるので、もっと魔力を使って、その才能の差を埋めるための練習してもいいんですよ?」
「・・・飲みたくないから、ゆっくり丁寧にやる」
「はぁ・・・そうですか、別に強要なんてできませんから、仕方ないですね」
昨日のあれは強要なんじゃないのか!?と思わずにはいられないけど・・・反論してもろくなことにならないし・・・黙って胸の内に仕舞っておこう。
「むむむ」
それにしても、魔法が安定しない・・・掌で燃える火の形や勢い、出した土の形とか・・・以前にボロボロの状態で出てくるし、水は・・・両手を合わせて器にして、ズズズっと・・・飲み切れなかったら垂れ流しにすればいいし・・・手から水があふれている状態で歩きたくなんてのは嫌だけど・・・風は・・・うん、熱風とかにすれば、髪を乾かすときにいいかもしれない!!ここの風呂場にはドライヤーあるけど・・・旅になったら必要になるかもしれない・・・。
「使えば使うほどに慣れというものができてしまうのですから、頑張ってくださいね」
「ふぅ・・・・」
少し休憩しよう、うん。
今さっきまでは、ゆっくりとゆっくりと魔力がヤバいな~と体が感じないほどまでにやって、瞑想?をしているような感じで・・・ただひたすらになんかやる気戻ったかな?なんて思えるほどまでじっとしていた。ただ瞑想をしているときはいつも後ろにあの叩く人形がスタンバイしているので、叩かれるが、じーっとしておく・・・『あれを飲むよりはまし、あれを飲むよりはまし、あれを飲むよりはまし』そう心が挫けそうになる時には、その言葉を心の中で三度呟き・・・耐える日々。・・・まだ今日がその練習を始めた2日目だけど。
鍛錬と魔力変換効率か・・・なんかコツとかないのかな、鍛錬とかに楽な抜け道はなさそうだけど・・・魔力変換効率なら何か・・・。
「なんか・・・うん、楽な方法とかコツとかないの?マリウス」
「ん~」
少し考えこむように唸っている。
「あ、もちろん!一昨日のあれとか以外でね」
「・・・あれはそうそうやりませんよ、あれは手っ取り早く魔力の出し方を無理やり体に教え込んだだけですよ、そうですね・・・でも、うん、正直ずっとそうやって、普通に努力し続けたほうがいいですよ。下手に楽な道を選ぶと・・・後々の魔法を覚えるときなんかに有利?になるはずですよ・・・たぶん。だから、生活魔法なんてとかそういうのを思わずひたすらにひたむきに努力し続けてください」
「ねぇ・・・なんかいい話なのに、その差し出されているポーションは何なの?」
「努力の結晶になるものです」
「努力の前に身体がダウンしちゃう」
「まぁ、これを1回でも飲んだらあまり飲みたがりませんよね、これ魔力回復にすごくいいんですよ?・・・味は最低最悪ですけど」
4回無理やり飲ませたよね?
「凄く良くても、自分で欠点分かってるのに、俺に勧めないで」
「はぁ~いいものなのに・・・」
そう言いながらこちらのほうをちらっと見て、その右手にあるポーションを徐々にこちらのほうに寄せてくる。
「い~ら~な~い」
「はぁ・・・残念です、まぁ・・・瞑想やるようになったので、いいでしょう」
そうして、地道に生活魔法の練習をし続けるのであった。