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泥のダンジョンマスター  作者: ハル
114/255

107.



 そして、1週間・・・畑仕事をしながら過ごした。


 何も考えないで、ただひたすらと土をいじるって、地味だけど、落ち着かないか?


 この人形を叩く感覚より、土を掘り起こす感覚・・・誰かの命を奪うことよりも、何かの命を育むことの尊さ・・・・


「少しゆるかったですけど・・・まぁ、別に身体を動かして、鈍らせないようにという目的だったので、いいですよ・・・瞑想も1回やっただけでそれ以上やりませんでしたし・・・」


「だって・・・瞑想ってあれじゃないですか・・・じっとしろと言われれば、していられるけど、心を無にし~魔力を感じ取れとかね・・・無理」




 そして、雑念まみれのこの心で瞑想をして、何回も叩かれたのかという話はしなくても分かるだろう・・・でも、さすがに肩や背中が痛くなったら自主的に逃げてたんだ。だが、逃げたとしても、素振りをするにしても、肩が痛いからやりたいという気持ちが浮かばないし、それでいて何もしていなければまた・・・マリウスに引きずられていくだろうということは容易に想像ができた・・・走ることも柔軟する気持ちもなかった・・・そして、ふと・・・畑のほうを見たんだ。そこにはいつかの俺の畑という看板が・・・今その畑はゴブリンたちに世話されているのを見たんだ。そこで俺は初心に返って、精神的にも肉体的にも・・・訓練よりも手軽にできるそうな畑仕事を選んだわけだ。


 マリウスも瞑想が終わってから、俺がいないことに気づいたのか?それとも怒るために見逃されたのかは分からないが、こちらのほうで土いじりをしているのを見て・・・


『心を落ち着けるのも大事なことですし・・・畑仕事もだいぶ身体も使いますからね・・・』


 と言い残して、見逃された。




「・・・瞑想とかは得手不得手はありますね。どうせなら畑仕事よりも、旅に出るなんて言ってんですから、素振りとかでもよかったでしょうに。あれにも瞑想と同じようとはいきませんが、何かの一点に集中するという行為が極めれば極めるほどにできてきて、魔力をよりうまくできるようになる、その足掛かりでもと思ったんですけど・・・」


「・・・それ先に言わないの?」


 でも、雑念なしで・・・素振りか・・・夕飯や夜にこっそり食べる自分へのご褒美を考えたりしていた俺にできただろうか・・・うん、無理。


「そんなことを知りながら、無我夢中で素振りをできるような人でしたら、先に言ってます」


「できないな・・・うん」


「自分で分かってるなら、聞かないでください・・・それで今日は生活魔法をやるんですけど、ちなみにですけど、今マスターは体内の魔力を感じ取ることは・・・できてませんか?」


「うむ、全然さっぱり分からない」


「偉そうに言わないでくださいよ・・・別に感じ取れなくてもいいんですけど、ある程度の魔法をやるときには必須になりますから・・・覚えているといいですよ、僕は教えませんけど」


「ちなみに身体の中にある魔力以上を抜かれたとどうなるの?」


「そういう話は生活魔法には無縁なんですけどね・・・魔力を少しだけ足りなかったなら倒れこむ程度ですよ、身の程知らずに大きいのなら・・・死ぬんじゃないんでしょうか?僕は倒れこむ姿しか見たことないのです。それほどの魔法を命を削ってまでやる人なんて知りませんし、魔法使いなら自分の力量くらい分かってますからね・・・まずそんな魔法を発動しません」


「へぇ~」


 そう言いながら、マリウスは俺の後ろへと回り込み、背中に左手を当て、右手で俺の右手首をつかむ。


「・・・・投げ飛ばされるの俺!?」


「そんなこと言うならお望み通りに投げましょうか?最悪、この状態で投げたら多分右手首が折れるだけですし?」


「変なことを言って申し訳ありません」


「はい、分かりました。では、マスターの魔力を強制的に使って生活魔法を発動させますよ。一度発動させれば感覚は掴めると思いますので、頑張ってください・・・掴めなければもう1回やります」


 そういうと何かやる気のようなものが抜けて・・・いや、元からそんなないか・・・気力?いや、まぁ、魔力なんだろうけど何かを抜かれるような感覚と、右手のひらから火の球がぶわっっとでてきた・・・ちょっと好奇心から右手を動かして触ろうからと思ったりしたけど、マリウスに掴まれているからできなかった。


 そんなことを思いながら、火の球を見つめていると・・・急になんだか眠くなって・・・寝てしまった・・・火つけたままだと思うけど、畑に燃え広がったら嫌だな・・・マリウスが起きてるだろうから、それはないか・・・。そんなことを思いながら俺は意識は闇の中へと消えた。


 そして、何かを口の中に押し込まれて・・・口に広がる・・・まずさ・・・すっぱさ、にがさ、からさ・・・それが水のように流れるように胃にいくんじゃない・・・それがねっとりとじっくりとネバつくように口の中を移動して、長く苦しいこのまずさが俺に襲い掛かったら、何をするか・・・・まず飛び上がって、吐く。


「あ・・・起きましたね・・・毒じゃないので、そんなに急いで吐かなくても大丈夫ですよ、お水飲みますか?」


 すぐに水をマリウスから奪い取って、口の中に含み・・・このネバついているものを口の中をゆすいで、吐く。


「おえぇぇぇ」


「大丈夫ですか?」


「これが大丈夫なように見えるの?」


「死んでなければ大丈夫です」


「・・・」


「あ・・・生活魔法の火できますか?」


 まだ・・・口の中が・・・


「・・・あ、やっぱりいいです。確かめるのは明日に全部しましょう。では、次水やりますね」


「・・・明日水やるとかじゃなくて?」


「1日1生活魔法なんて非効率なことしませんよ?大丈夫です、あとこのまずいの3回飲めば終わりますから」


「・・・水、風、土、2回じゃないの」


「ずっとそこに倒れていてもめんど・・・邪魔ですし、マスターが剣士になるのか、魔法使いになるのかはわかりませんけど、魔法使いになるのなら、これよりもっと消費する魔法を使うことになりますからね・・・必ず飲むことになるので、この機会に慣れていてください」


「・・・俺・・・剣士がいいかもしれない」


「大丈夫です、慣れれば味覚がバカに・・・いえ、これが美味しく感じることができるかもしれませんよ」


「・・・」


「さて・・・水の生活魔法をやらせますから、頑張ってくださいね」


「・・・」


 逃げようと本能で後退ろうとするだが・・・背後にはマリウスの左手が背中を押している、前に行こうにも、もう右手首は掴まれていて・・・そして、何かが抜けるような感覚がした。


「ちゃんと今日中に生活魔法を一通りやらせますから」


 その声は・・・ほかの人からすれば、ちゃんとした声であったのだろうけど・・・この時の俺はそれが楽しそうに歪んで聞こえて来ていた。


 倒れては・・・また苦味・・・倒れては・・・また苦味・・・永遠ではないかもしれないが、終わりはもうすぐかもしれないが、その時のそれは俺にとっては確かな苦痛であった。


 幸いなことに生活魔法は一発でやり方を覚えたことは不幸中の幸いだった。


 だが、この時のその声がその日から定期的に悪夢として、俺の夢に出てくるようになったのであった。

 ふぅ・・・いい小説だった・・・まだその小説連載中だけどね。

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