104.
その日も一通りの訓練を終えて、少し早いが、ダンジョンコアのほうで夕食を食べようとしていた時だった。
「もうそろそろ、訓練終わって・・・ホムンクルスを作って外に行ってもいいですよ?」
そんなことをマリウスが突然言い出した。
「ほぇ?」
前日までそんな素振りを感じなかったのに・・・俺が鈍感かもというのも考えられるけど、マリウスがその突然に言い出したので、うん、変な声が出たんだ。
「武術というより戦闘は僕は死を感じるほどの実戦経験が一番の成長できることだと思うんですよ、その経験が血となり肉となり、その人だけの真・戦闘の心得というものに自分の中で発展していくと思うんです」
「・・・」
戦闘の心得・・・・って俺教えられたっけな・・・素振りしたり、模擬戦したり、投げ飛ばされたり、謎肉を叩いたりすることしかしてない気がするわ・・・
「それに今やってるの素振りや模擬戦も、突き、払い、斬る、基本の3つの攻撃の仕方を組み合わせてやっています。ですが、世界には、その土地や国にある流派特有の技や、足運びの技術や経験なんてのが教えようとすれば、いくらでもありますけど・・・」
「・・・」
教えてもらってないことは知らない・・・足運びと必殺技か・・・地味とロマンか・・・
「僕から教えると、知らないところで、やっている武術の特徴なんてのは、気づかないところにあったりするわけで・・・それをやらないとやらないでその武術が不完全なものになりますから、僕のほうから教えられないんですよね・・・」
「・・・なんでそんなことを突然言い出したの?」
実は訓練免許皆伝とかなのかな~もう俺に教えることないから旅立てとかかな・・・ふふふ。
「正直に言いますと、僕の気になっていた小説も全部読み終わりましたし、何もせずにマスターの訓練を安全のために見ているのは手を出せませんし、所々変な癖になりそうなところや、姿勢なんてのをいちいち指摘するのも苦痛ですし・・・それならさっさと外の世界を冒険?でしたっけ、してくれれば・・・いいのになんてことを思ってますよ」
・・・嘘偽りすら感じない笑顔で・・・俺のことを苦痛と言いやがった。
「・・・ほら、武術のほかに!!一般常識がないぞ!俺は!突然行けなんて言われても無理だ~不可能だ~死にはしないだろうけど、野垂れ死ぬぞ~」
そんなこんなで座学になった。2人は夕飯を食べてから、お互い向かい合って、何かのカードをめくっていた。
「はい、これは?」
『死ね、ドブネズミ野郎』
「正解・・・じゃあ、これ」
『どけ!のろま、デカい図体で道塞いでんじゃねぇぞ、オーク野郎』
「正解・・・じゃあ、これ」
『これはいくらですか?』『これはお前のような坊ちゃんが身につけれるような品じゃねぇ、帰った帰った』
「正解です、これぐらい言えればもうどこでも大丈夫です」
「・・・なんで大半が喧嘩腰なの?」
「冒険者は舐められたら負けな職業だと・・・知り合いの商会の子が言ってた気がします、それにこれ色んな言語で書かれているのによく読めますね。僕も裏の共通語のところ見ないと分からないのいっぱいあったのに・・・」
「ん??・・・なんで読めたんだろう?全部が全部俺には同じ文字に見えたさ・・・いつもダンジョンコアで操作する文字が裏に書いてあるのか」
そんなカードの裏表を見ながら、マリウスは次に自分の知っていた言語でしゃべり始めて・・・こっちに何を言っているのかを何回かいつも通りの言語でこちらに尋ねてきた。
「ふむ・・・こっちの言葉が分かるなら、たどたどしくても・・・武器を向けられれば話すことぐらいできますよ。死ぬ気になればやってやれないことはないと思いますし・・・」
そう言って、次の常識へと・・・。
「さすがにお金のことはもう知ってますよね・・・法律にしたって、その場所で色々変わりますから、その国々にある大図書館に行って、知識を仕入れてほしいですね・・・貴族に関してですかね」
そう一呼吸置いてから、マリウスは話始めた。
「・・・『面倒だから、関わるな』ですかね」
「へぇ・・・貴族は面倒なの?」
「グチャグチャといろいろしているんですよね・・・表ではいい貴族でも、裏ではなんてことも・・・ですから、僕から言えることはこの一言に限りますね」
「・・・マスターの旅ですから絶対に関わるななんてことは言いませんけど、碌な目には合わないと思いますよ?他に何か教えてほしいことってありますか?」
「魔法教えて?」
そう口に出してから、マリウスは自分の言っていた言葉を頭の中で繰り返しながら、ふぅーと深いため息をつきながら、渋々といった表情でこう言った。
「はぁ・・・・・・・・・・・・旅に役立つ俗にいう生活魔法だけなら教えましょう」
小説発掘をしているとついつい、その作品を最後まで読んでしまいたくなる時がよくあると思います。つまり、そういうことです。




