100.
そうして、マリウスになんの武器がいいですかと聞かれたから、俺は即座にこう言ったのさ。
「杖」
「・・・魔法教えませんよ?戦闘の心得、つまり戦い方を教えるだけですよ?」
「えぇ・・・」
「それに魔法使いの人だって・・・うん、これは違いますね・・・そうですね、旅をする魔法使いの方なら杖のほかにも持ちやすい片手剣なんてのをもってある程度魔力がない時でも、戦えるようにしていますよ?」
「魔法剣士だな、うん」
「・・・・はぁ、じゃあ、練習するのは杖と片手剣でいいですか?」
「両手装備?」
「なにアホなことを言っているんですか・・・ひとつずつ時間をかけてですよ?その分習熟や片手剣と杖を変えるときの違和感なんてのもあると思いますが、大丈夫でしょう。訓練は3倍厳しくなると思っておいてくださいね」
「急に片手剣だけでいい気がしてきた」
「はぁ・・・・いいですよ、もう、どうせ最初は自分に合った武器探しから始まりますし、合わないと思ったら変えたいと言ってくださいね。こっちからは必要以上にもう見込みがないなと思わない限りそのまま教えますので」
「はーい」
そうして、マリウスから鉄?でできた片手剣を渡された。
「お、重い・・・鍬より重い・・・なんていうか、思っていたより、うん、剣だ」
「当たり前じゃないですか・・・安全のために刃は潰してありますから安心してくださいね、もし、自分に当たっても最悪骨が潰れる程度のケガしかしませんから。よほどのことがない限りそんなことは起こりませんよ。じゃあ、素振りをずっとやっててくださいと言いたいところですけど、どうせマスターのことなので、すぐ飽きると思いますので、斬ってもいいものを用意したんですよ」
「おぉ・・・お!?・・・お、おう」
「ですが、用意をしようとしても、マスター相手だとイオルの練習用に出ている人形を出してしまっても怪我をする恐れがあります。かといって、僕がマスターの練習相手になると避けるだけの相手をするのも面倒ですし、それに命の危険がなくて訓練と言っていいのか・・・と思いました」
「いや、命の危険ないほうがいいです」
安全第一・・・そうだろう。痛いのは嫌だし・・・
「ですが!訓練をどうしようかと、マスターのことを見ているうちに、僕はこれを思いついたんですよ」
「俺の話を・・・」
そして、ドーンという効果音をつけるにはしょぼいのだが、マリウスは懐から格闘ゲームの時に使う時のコントローラーに似たような感じのものを取り出した。
「ん・・・コントローラー?」
どこからどう見ても、いつも俺が格闘でボコボコにされて、布団や床の上に放り投げられているコントーローラーのようなものが・・・
「見たとおりに、いつもマスターが一部のゲームの時に使う時のものですよ」
「それで何するの・・・ま、まさか俺の身体を操るつもりかぁ!!??!?」
操ってひたすらにゴブリンとの斬る?訓練いや、潰す?訓練か・・・俺の中の斬ってもいい相手が瘴蟲以外いないような気がしないでもないけど・・・
「いえ、そんなことできませんので、大丈夫ですし、マスターを支配するくらいならこのダンジョンのゴブリンを支配したほうが強いです」
「・・・・これから強くなるし((震え声」
「それでこれを用意しました」
コントローラーをいじっていたからと思うと、畑のほうから・・・人形が動いてこちらへと向かってきた。
「もう既に人形が犠牲になっていただと・・・」
俺の代わりに支配されてしまった人形その魂を助けるためにいざ悪の総大将マリウスへと・・・勝てない相手に喧嘩売るのはやめよう、どうせ妄想の中だけだけど・・・勝てないし・・・うん。
「違いますよ、ただの木で作った人形です。魔物じゃないですよ、これ、コントローラーとその人形にですね、ある程度の大きさの魔物の二つに砕いた魔石を使って動かしているんですよね」
「・・・ある程度の大きさ?」
あれ・・・そんな魔物いないよね?うん、いないいない。邪木くらいか?いや怒熊も大きいよな・・・。
「魔石は僕のただの私物ですよ、趣味ですよ、極々個人的なただの趣味です」
「・・・・」
つまりこのダンジョンのではないと、そんな大きくて強いのなんていないからね、うん。
「さぁ、どこからでもこの人形を倒してくださいね」
「これマリウスが直接というか、間接に操ってるけど大丈夫なの?」
「マスターのやっているゲームのから、動きを記憶させて、コントローラーに反映させているので大丈夫です」
「べ、便利・・・」
俺の知らないところでそんなことが!!格闘ゲーム1回放り出したら、あんまりやらなかったからな。それをマリウスがやっていたのかな?
「さぁ、気を取り直して、どこからでもこの人形に攻撃してきてくださいね」
「おりゃぁぁ!!」
そんな掛け声をかけながら、操ってる魔石があるなら、それ取り外してから安全に斬りたいなと思って、威勢のいい掛け声とは裏腹になんか魔石が隠してあって、開けそうなところないかなと探していた。
「ぐふっ」
そんなことを思いながら、やったら突然人形がこちらに向かって突進してきて、こちらが片手剣を振り上げられたところを思いっきり突進された。
「なにも動かないなんて言ってませんよ」
そう何やら楽しそうに言っているマリウスがいる。
「まじか・・・そりゃそうだけど・・・」
動くのを探して、動いてるのからとるか・・・無理だな、うん。そうして、鍬を振る感じで振り下ろすことにした。
そうしているうちにマリウスが操っている人形からこちらから逃亡した。と思ったら、急にしゃがみだして、ジャンプしたかと思えば、何もないところでパンチをする。
「・・・」
そういえば、マリウスがゲームをやっているのを見たことないのに、なんでコントローラーを持っていたんだろうか・・・俺のとはカラーリングが違うし・・・格闘ゲームをマリウスがやっている姿なんて一度っも見たことないし・・・
「マリウスって、俺に内緒でゲームとかしたりしてた?」
「な、何のことですか?」
「・・・」
「・・・」
「下手?」
そんなことを口走った俺だったが・・・この時のマリウスの表情を見ていたのなら、その発言をすぐに取り消して、謝罪をしていたであろう。
マリウスが無言でこちらのほうに向かってきて、いきなり目の前で消えたかと思えば、背中に強い衝撃が走り、気が付けば俺の視界には青い空が広がっていた。
「気が変わりました。受け身の訓練でもしましょうか・・・大丈夫です、僕が直接やってもマスターがそれを見えないなら、何をやっても分かりっこありませんからね、ふふふ」
少し混乱していた俺であったが、その時にマリウスの声が聞こえて、慌ててそちらのほうに振り向こうと思えば、自分のズボンのほうにあった視界はまたも青い空のほうを向いていた。
「え、いや、あの、ご、ごめんなさい」
2回それを繰り返し、それがマリウスがやっていたということに気づいていたのだが、相手の目を見て謝罪というのが正しいのだろうけど、そちらのほうに向く前にやられると思って、すぐさま謝罪をしたのだが・・・。
「あと10回やられて起きたら夕食まで素振りしててくださいね」
その顔は見えなかったが、その声はいつも通りの声でそう声をかけてきた。
こうして、なにが起こったのかわからぬまま、10回、このダンジョンの空を見上げることとなった。最後は他のよりも強く背中が痛かったが・・・全身を放り投げられてこの痛みならましなほうなんだろうと・・・思ってる、うん。そんなことを素振りの時に思いながら、夕食まで素振りをしていた。
その次の日から、走り込み、柔軟、素振り、軽くダンジョンの人形との模擬戦という流れになった。