99.
あの鍛えるということを口走ってしまってから、半年と少しの時が過ぎた。
いや、ちょうど半年で気づべきだろうと思うだろう?と誰かは思うかもしれない。マリウスに「1年もあれな生活をしていたのに、ちょうど半年前くらいに鍛え始めてからは・・・ずいぶんと健康的な生活になりましたね」と言わて、初めて気づいた。
記念日みたいなもんだろう。覚えていろよという人もいるかもしれない。だが、しかし、待ってほしい。俺はダンジョンマスターでこのダンジョンの中で引きこもりをしているんだ。そんなことを気にする必要ってことがない。何日が流れようと・・・朝起きて、顔洗って、朝食を食べて、畑を耕して、収穫できるのも収穫して、昼食を食べ、その身体で走って、柔軟という拷問を受け、夕飯を食べ、風呂に入り、ゲームをして、料理を時々教えて、歯磨きをして寝る・・・・そういうサイクルが生活ができあがっているんだ。侵入者がここまで来そうになれば、このサイクルもちょっと変わるかもしれないが。
それに曜日や日数を確認できるノートパソコンやダンジョンコアからやっているゲームも夜にやっているから、日にちなんてのは知っていた。だけど、何曜日になると何かの素材が出るクエストがやるだとか、期間限定イベントなんていう素敵な限定キャラが出るようなイベントはやってないから、ほとんど・・・その曜日なんてのも見る必要がなくなってきている。時間を見てそろそろやめようとは思うが、今日が何日で何曜日か見てもな・・・へぇ・・・って思うだけなんだよな・・・うん。土日が休みとかそんなのがないしな・・・・・・。
それに鍛え始めた日を俺がわざわざ覚えておくための日記やらそういうのをつけていると思うか?いいや、そんな面倒なことをやるぐらいなら、ただゲームをやるに決まっているだろう。
そして、マリウスはその翌日に俺の畑の農作業をゴブリンたちに任せて、走り込みや鍛えることも休みにしたんだ。
とても嫌な予感がした。明日からもっとハードなことが起こるんじゃないかと気が気でなかった。だが、どうせそんなことを気にしたってそれが迫りくるということを変えられるようなことは・・・命令すれば、変えられるだろうけど、なんかな・・・自分で鍛えてって言ったくせにそういうのもね・・・命の危険なんてのも感じなかったし、起きたのは筋肉痛ばかり・・・だから、危険なことはないだろうと楽観視していた。
その翌朝、いつも通り2人に「おはよう」と挨拶をし、洗面台で顔を洗い、3人揃って朝食をとってから、
農場へと向かったのだが、いつもの鍬と桶がない・・・その代わりに最近農作業のほうで監視しなくなっていたマリウスがいて、こう告げた。
「それじゃ、今回から農作業のほうは1階のほうから連れてきたゴブリンと他の農家ゴブリンたちに任せてますよ・・・それでですが、始める前に言っておきます。マスターに半年間鍛えれば数週間は生きられると言いましたから、今から自分のホムンクルスを作って冒険してもらっても結構です。僕にそれを止める権限なてありませんからね・・・ですが、死んでも僕に文句言わないでください。全て自己責任ですよ?で、どうしますか?マスター」
そう真剣な表情でこちらの回答を伺っているマリウスがいた。
「・・・俺農作業と走り込みと柔軟以外そんな鍛えたような記憶がないんだけどさ、戦闘訓練とかは・・・?」
今から旅に行くにしても、新しい訓練が始まるにしても・・・俺の畑を放置するのはな・・・でも、試しに一株だけ収穫放置してたら、いつもの2倍の大きさのがでてきて、収穫が大変だったんだよな・・・雑草も多いし、それに日々の水やりだって、俺以外は魔法でやるから関係ないか・・・1人だけ人力だったけど・・・この半年で慣れた武器になりそうな鍬と桶と鎌で冒険に放り出されるか・・・生きれる気がしないな、うん。
「今から戦闘というより、戦闘の心得ですね・・・僕のほうは契約によって、訓練は全部手加減を強いられるので、あまり死ぬほどの訓練をマスターにすることができません。だから、正直マスターが訓練放り出して旅してもらったほうが楽です」
凄く面倒そうに言っているマリウスがいる・・・いや、このまま放り出されても、正直こっちも困るんだけど・・・
「本格的にやると死ぬほどの訓練があると?」
「どの訓練でもいえることですけど、魔物殺すことに死ぬくらいの訓練程度がないと?」
「・・・・」
そりゃね・・・そうだね。
「戦闘のほうは正直教えるのは色々こっちが契約上面倒なことになるので、自主練習という形でやってほしいですね。武器で戦い方を教えるということは、武器を使う技術、つまり武術を一応ですが、こちらが技を見せるという形になってしまって、模擬戦などで、うっかり出した技を真似してその技術をマスターが覚えるかもしれないというのがあるかもしれないですから・・・それがまた・・・困るんですよね・・・いろいろと」
「え・・・どんないろいろ?」
「えぇ・・・まぁ・・・多少?あまり知られてないから大丈夫だと思いますけど、勘が凄く良く尚且つ、その武術の技を知られている方に見られると・・・地の果てまでとは行きませんが、その国の国境くらいまでは余裕で追ってきますよ?それが冒険者なら文字通りどちらかが死ぬまで追ってきますね」
「・・・え?」
メリットが強くなれる、デメリットが潜在的なストーカーができる・・・うん、ないな、超強くなれると聞いてもないな、うん、でもな・・・気になるよね。
「それって、教われば超強くなれる?」
「そんな楽な技術はないですよ・・・そこそこ強くはなれるかもしれなせんけど、それに本格的に教わるなら、途中でマスターは、ほぼ確実に死にますよ?死ぬほどですし、僕が個人的に教えることもできません」
「そっか・・・ないかぁ・・・死にたくはない」
まだやり残したゲームが・・・ある!
「基本的などこの武術でも教えることだけをやって・・・マスターの判断で勝手に飛び出していってください。ちゃんと行くときは一言残してくださいね」
そうして、ここから・・・この農場で鍬と鎌と桶以外の武器を持つこととなったのであった。
台風が過ぎ去って、また台風が・・・。