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ラブコメ作家(仮)の異能アシスタント  作者: 羊の羽&美咲クロワッサン
9/9

キュウジツ×メイブツ

1回でいいから休日を可愛い女の子と過ごしたいものです。もう無理そうですが。


 俺と愛月は喧嘩仲裁のお礼と称してコンビニへ行くフラグを立てたが、俺のお金がなくて10円の駄菓子しか買えなかったから、なんか罪悪感が半端ないわけです。

 だから次に約束した休日の食事イベントではなんとか挽回しよう……っていうか、今更だけどラブコメヒロインの調査ってこんな感じでいいのか?



━━━━━━━━━━━━━━



 今日はゲームのヒロインとの発生率が高い休日食事イベント当日である。


ということで、3人の都合が合う休みの日に近くの大型ショッピングモールに午前9時集合という約束になっていたのだが。


「愛月、姫宮先輩!すみません遅れました!」


 現地に向かう途中に、俺のお気に入りである父親から貰ったロードバイクの前輪がパンクしてしまい、遅刻をしてしまったのだ。

 結構お気に入りだから絶対修理に出さないとな。


「遅いわよ神崎、この状況で死ぬ寸前だったんだから!」


 人見知りの愛月には、ここは最悪な環境なんだろうな。だけどお前の企画なんだから耐えてくれよ?


「神崎様、ごきげんよう。ご無事で何よりです。それではさっそく参りましょうか?」


今まで猛スピードで走ってきていた俺は顔を上げると俺は思わず息を飲んでしまう。何でって?2人ともすげー可愛いんだもん!


 愛月は上から深めにかぶったキャップ、ジャケット、カーゴパンツと露出が少なめの王道ボーイッシュ系だ。正直に言うとめっちゃ可愛い。だけどキャップに付いている缶バッチが気になるなぁ。こっちからは見えないけど、どうせなんかのアニメのやつだろうな。


 対して姫宮先輩は、カンカン帽に真っ白な肩出しワンピース、そしてデニムのショートパンツ。更に極めつけは黒タイツと露出の高めなコーデだ。綺麗過ぎて見惚れそうで危ない。当の本人達は気付いていないだろうが、横切る若いお兄さん達が二度見して行くレベルの可愛さなんだよ。

 そして俺の服装はというと、必死で探したオタクっぽくなさそうな柄のパーカーと普通のジーンズである。はぁ……


「俺ってここに居ていいの?」


ため息混じりに俺はそう呟いて、先にショッピングモールに入っていった2人を追いかけていく。



━━━━━━━━━━━━━━



 「じゃあ、俺から先に店紹介するからな?」

「えぇ、出だしに1発ドカンと頼むわよ!」


 愛月、それが俺のパーカーを掴みながら言う台詞か?

 そんなことを考えながら辿り着いたのはショッピングモールの中にある和食料理の店だ。


「いらっしゃいませ!」


 それから3人で姫宮先輩と俺、向かいに愛月という形で席に座り、俺があるメニューを店員さんに頼んで数分後。


「お待たせしました、味噌煮込みうどんです!」


ここの味噌煮込みうどんは県外の人も食べに来るぐらい美味しいらしい。(スマホで調べまくった)気になる反応は?


「こんな料理食べるのは初めてです。凄く、凄く美味しそうですね……じゅるり」

「スープが服に飛ぶので注意して食べてくださいね」


 良かった、喜んでもらえたようだ。にしても味噌煮込みうどん食べたことないなんて、姫宮先輩ってもしかして帰国子女とか?まぁ、そんなことは置いといて……


「「「いただきまーす」」」


「熱いので気を…」

「あふいでふ!(熱いです)」


 あ、注意する前にもう食べてるよ。そんなに必死に食べてどうするんですか先輩!


「ふぅーふぅーふぅー、ちょっと!こっち見ないでよ!食べずらいでしょ」


 愛月の方は食べ慣れてそうだが、猫舌なのか、しっかり冷まして食べている。人のいない角の席を選んだのが良かったのか、あまり人見知りモードも発動していないみたいだな。それにしても、何やってても2人とも可愛いんだが。

 ということで、俺も食べてみようか。

おぉ!美味い!味噌が効いているスープ良し、のど越し抜群な麺良しで、更に途中で生卵を入れると一気に味が変わると来た!

 

そうして俺達3人は味噌煮込みうどんの味を存分に堪能することが出来た。


「「「ごちそうさまでした!」」」


 驚くことに、俺と愛月の2倍のペースで姫宮先輩は味噌煮込みうどんを平らげていたのだ。ここまでの食べっぷりだと見ていて楽しくなってくるなぁー。


「次は愛月のオススメ紹介する番ですけど、姫宮先輩まだ食べられますか?」

「えぇ、まだまだ余裕ですよ。張り切っていきましょう!」


 あれ?なんか口調まで変わってるよ、そんなに嬉しそうにしてもらえるとこっちまで嬉しくなってきますよ先輩。


 「あの、それでは私のオススメの店に案内しますね」

「宜しくお願いします。愛月様!」


 へぇー、愛月って人に敬語使えるんだ、以外だな。いやその前に俺以外の人に話しかけること自体が珍しいか。とか言うとぶっ叩かれるだけだから止めとこうかな。

 そうしてショッピングモールを数分歩き、


「その、着きました。ここが私のオススメの店です」

「おにぎり専門店ですか、またもや美味の予感……じゅるり」


 この店はどうやらテイクアウト用のお店らしく、愛月はキャップを深く被り直して、出来るだけ会話をしないように店員に注文しているのが見える。そのせいで、もはや動きが不審者にしか見えないんだけど。


「お、お待たせシましタ」

「愛月、落ち着けよ。ってこれ天むすじゃねぇか!」


 随分体力を消耗したようで目線があらぬ方向へいっている愛月が手に持っているのは、パックに入った大量の天むすだった。


 説明しよう!天むすとは、海苔が巻かれた小ぶりなおにぎりの中に、具としてタレがついているエビの天ぷらが入った名物料理なのである!


「わたくし、味噌煮込みうどんといい、この天むすというものといい、初めて食べるお料理ばかりです!紹介してくださりありがとうごさいます!」


 「いやいや、そんなに頭を下げないでください!こっちもそんなに大したことしてませんから!」


 とりあえずショッピングモールの外のベンチで天むすを堪能することになった。


「「「いただきます!」」」


「何なんですかこれ!このエビの天ぷらのプリプリとした食感、そしてその衣についているタレがコメの1粒1粒に染み込んでいて、絶妙なバランスを生み出していますね!それから……」


 こんなに丁寧に天むすをリポートする人を初めて見た。ていうか、こんなに喋っているのに口にものが残っている時は一切口を開かない。行儀がとってもいいからまったく嫌な感じがしない。先程の熱すぎて思わず出てしまった言葉は仕方がないけど。


「それにしても、愛月こんないい店どこで知ったんだよ?」

「私は案外グルメだからこういう店は知ってるの!当たり前の事聞くんじゃないわよ」


 あ、動揺してるわ。俺と同じ検索勢だな。どうせ「美味しい店 近い」とか調べたんだろ?まぁ俺の場合「女子行きつけの店 近い」

なんだけど。


そんなことを話しているうちに10個もあった天むすがみるみる無くなり、最後の一つになった。


「その、神崎様と愛月様は何個天むすを食べましたか?」

「俺は2個食べました」

「わ、私は3個です」


「で、では神崎様が最後の一つはお召し上がりください」


 姫宮先輩なんか目がうるうるしてますよ?そんなに天むす美味しかったんですか?しまったなぁ、食べた個数なんてうやむやにすれば良かった。


「あ、あーあ、俺もうお腹いっぱいだから誰か食べてくれる人居ませんかねぇー」

「それじゃあ私が…むぐぅ」


 咄嗟に愛月の口を塞いだ。お前空気読め!ここでお前にあげたら余計酷いことしたみたいになるだろうが!


「そ、その、わたくしはまだ食べれますが、良かったら…」

「じ、じゃあどうぞ!是非食べてください!」


なんか凄く恥ずかしい。姫宮先輩も顔が赤くなってるし。愛月は「ふむふむ、そういうシチュエーションもあるのね」とか呑気に口走ってやがるし。そんなこんなで俺たちは天むすを全て食べ終えた。


「「「ごちそうさまでした!」」」


 今の時間は時間は3時頃となっている。楽し過ぎて時間が一瞬で過ぎたな。

そう考えていると、姫宮先輩が座っている俺と愛月の前に立ち、綺麗にお辞儀をした。


「改めて、今日はありがとうございました。わたくしの知らない美味しい料理がこんなにもあることを教えて頂いた御恩は忘れません。その御礼と言っては何ですが、後日わたくしの家にご招待したいと思っているのですが、宜しいでしょうか?」


 思えば今まで、人にこんなに丁寧なお礼を言われたことなんてなかったな。そんなことを考えながらぼーっとしていた俺は、あまりのことに一瞬間をつくってしまったが、すぐに答えることが出来た。


「もちろん愛月先輩がいいのなら行かせてもらいます」

「わ、私もよろしくお願いします」


 俺と愛月はその場で小さなガッツポーズをした。なんてったってお宅訪問イベントは友好度が高くなってきた証拠なんだからな!

 しかし愛月はここで物騒なことを言い出す。


「神崎、今日でもっと攻めるわよ」

「なにする気だよ?」


 なんか愛月の目が怖いぞ?何言うつもりなんだよ!人見知りなのに今日は頑張り過ぎじゃないか?


 「姫宮先輩!そ、その」

「なんでしょうか?」


 ついに決心したような目をして、こう切り出した。


「今からまだ時間が大丈夫なら、ゲームセンターに一緒に行きませんか?」


 

 愛月のこの一言から、俺がまったく予想外のゲーセンイベントは幕を開けた。


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