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ラブコメ作家(仮)の異能アシスタント  作者: 羊の羽&美咲クロワッサン
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コウジツ✕コンビニ


 野外学習から帰ってきた俺と愛月がちょっとした言い争いをしていると、そこに突然金髪で青い目の、驚く程に綺麗な先輩が仲裁に入ってきた。そして一難去った後、愛月はその人を『ヒロイン』の題材として調査することを決意するのだった。

 まったく、あんないかにもリアルが充実してそうな人に話しかけたりするなんて最初からハードル高くありませんかね?



━━━━━━━━━━━━━━


 野外学習から帰ってきた日の翌日の放課後、俺と愛月は校門前である人物を待っていた。


「神崎、今からKTT作戦を始めるわ!配置につきなさい!」

「あぁ、りょーかいりょーかい」


愛月の奴、やけにテンション高いな。ちなみにKTTって言うのは、「口実を作って突撃!」の略な。


 それで、ある人物というのは、昨日俺達の言い争いの仲裁をしてくれ、今では『ヒロイン』の題材でもある清楚系金髪美少女のことだ。

 俺と愛月の人脈の少なさのせいで名前すら分からなかったのは少し痛いけど、これから突撃するんだから関係ないよな?


「来たわよ神崎!逃がすんじゃないわよ?」


 そう言うだけ言って、俺の背中に隠れる愛月、先が思いやられるわ……


「逃がすんじゃないわよって、俺達敵キャラかよ!」


 あぁ、遂に来たか。覚悟決めろよな俺!それにしても相変わらず綺麗な人だなぁー。

 それでは神崎優真、いきまぁぁぁああす!!


「すすす、すみ、すみません」


いかんいかん、落ち着け俺、目の前に愛月以外の美少女がいても会話に集中するんだ!


 「貴方は確か、昨日その後ろの方とケンカをしていた……」


 名前聞くならまずこっちから名乗っておくか。


「そ、そうです。神崎優真っていいます。それでこっちは」

「あ、愛月、あかり…デス」


 だめだこりゃあ。もう既に愛月は役に立たない。ここは俺が、行く!


「あ、あの!宜しければ学年と名前を教えてもらってもいいですか!」


 い、言ったぞ俺!あー、これで気持ち悪いとか思われてたらどうしよう。確実に心が折れるのは確定だな。


「そういえば自己紹介もしていませんでしたね、失礼しました。わたくしは私立唯我丘高校2年生の姫宮ひめみやあおいと申します。それで、私になにか御用でしょうか?」


あー、大丈夫だった。安心安心。

 それよりもなんだろうな、所作や微笑みは完璧なのに、言葉の一つ一つが作り物のような固さを感じてしまう。まぁ、俺の勘違いの可能性が高いけど。


「その、俺とこいつのケンカを仲裁してもらった姫宮先輩に、お礼をしたいなぁー。と思ったわけでして、なのでコンビニでなんか奢らせてください!」


 これぞ昨日のケンカの仲裁をしてもらったお礼をするという名の口実!確実に買い物イベントを発生させるための布石だ。

 だが、これで「今日は用事があるんです」とか言われたらこの作戦は失敗だ。こんな時くらい俺の思いどおりに事を運ばせてください神様!


「神崎様と愛月様の折角のお礼を無下にはできませんね。分かりました、それではコンビニに参りましょう」

 「は、はい。では行きましょうか」


さ、様付け。姫宮先輩ってどこの人なんだよ?




━━━━━━━━━━━━━━



「いらっしゃいませぇー」


コンビニの入店音が鳴り響く。入ってきたのは俺と愛月、そして姫宮先輩だ。

 コンビニに来た表向きの理由は姫宮先輩にお礼をするためだが、実際にはプロジェクトの第一段階であるイベントを起こす為だ。


その時点で、あることに気がついた俺は小声で愛月にこう尋ねる。


「そういえば愛月、お前金持ってきてるか?」

「え?神崎が払ってくれると思ってたから私持ってきてないわよ?」


 あ、これやべぇやつだ。正直終わった気しかしないんだけど。


「神崎様?どうかなされたのですか?」

「い、いえ、何でもないですよ~、あはは」


 こればっかりは誤魔化すのは無理だよな。

なんてったって、月末だから有り金全部使い切ってしまえと期待の新作ラノベを買いまくった俺の財布には、なんと42円しか入っていないんだからな!

 そんなことを考えているうちに、姫宮先輩は雑誌コーナーやお菓子コーナーなどを小さい子のように、目を輝かせながら見ていた。

 凛とした感じの時も可愛いだけど、こういう姫宮先輩はもう破壊力抜群ですな。

 そのタイミングで姫宮先輩の爆弾発言が飛び出す。


「そういえばわたくし、初めてコンビニエンスストアという場所に入ったのですが、ここは色々な物が置いてあって楽しいですね!」

 

 「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」」


 流石に愛月も人見知りより驚愕が前に出ている。まぁ当たり前な反応だよな。

 だって幾らなんでもコンビニぐらい入ったことあるだろ?姫宮先輩ホントにどこの人なの?もしかして周りに何も無いド田舎に住んでるとか?なわけないよなぁ。


いや、待てよ?この状況を上手く使えば!

 早速俺は思いついたことをやることにした。こうなりゃあ一か八かだ!


 「姫宮先輩、ではお礼として今からこのコンビニで俺が1番美味しいと思っているものを奢らせてもらいますね!」


嘘ではない。金額とこみで考えれば!


 「まぁ、それは嬉しいです。ありがとうございます」


そう言って俺はあるものの会計を済ませ、姫宮先輩に渡しに行く。


「な!……あんたそんなの渡すの?もっと好感度が上がるものなんていくらでもあるじゃない!」


 愛月がそう俺に言うのも分かる、お金があるなら俺も別のものを買ってるしな。だがここは退けないんだ。俺のミスだからな。


「どうぞ、姫宮先輩に気に入ってもらえるととても嬉しいです」

 「こ、これは?」


姫宮先輩が興味を示した!これは俺の勝ちだ!


 「これは美味棒びみぼうと言って、有名な駄菓、お菓子なんですよ。味は何種類かあってですね……」

「そうなのですか!美味しそうですね……じゅるり」


 種明かしをすると、俺が姫宮先輩に奢った美味棒びみぼうというのは、一つ10円の様々な味がある駄菓子だ。

 だけど当の本人はそんなことを知らないのでとても喜んでくれた。のだが、ここまで嬉しそうにしてくれるとなんか罪悪感あるなぁ……よし、だったら次で挽回してやろうじゃないか。


「姫宮先輩!」

 「はい?なんでしょうか?」

「今度の休みの日、僕と愛月のオススメの料理食べに行きませんか?」

「それはいいですね、お二方のオススメ、是非よろしくお願いします。じゅるり」

「なんで私の名前がそこに出てくるのよ!」


こうして俺はなんとかこの場を凌ぎ切り、同時に姫宮先輩の調査第二段階である、「休日の食事イベント」のフラグを立てた。ていうか姫宮先輩、以外と食べるのが好きだったのは予想外だったな。







そして、その日から1日後。この区域一帯のコンビニから全ての種類の美味棒びみぼうが、ひとつ残らず消滅したことなど、俺は知るよしもなかった。





心理描写が難しいです。

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