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彼女と私

彼女と桜と探しもの

作者: 高見 和香

高校を卒業したあと、彼女は就職し私は短大へ進学した。新しい出会いの中で、もう二度と彼女のような人とは出会えないような気がしていた。

それは男の子でも同じだった。


在学中に私は何人かと付き合った。始まりはいつも男の子からで、終わる時もそうだった。

「お前、彼氏とかおるん?」

「おらんよ」

「じゃあ、俺と付き合って」

「うん」

そういうちょっとした契約のようなやり取りがあり、週のうち何日かをその人と過ごす。

そして、しばらくたつと相手から一方的に別れを告げられるのが、おきまりのパターンだ。

その期間はひと月だったり、半年だったり、まちまちだが短い期間であることには変わりはなかった。

そして二重契約にならない限り、私は男の子達の申し出を断ることはなかった。


そういう私の態度は女の子達の顰蹙を買うことになった。

「誰とでも寝る女」「二股女」「尻軽女」と陰ではいろんな呼び方をされていたようだ。

しかし誓って言うが、複数の男の子と同時に付き合ったことは一度もないし、私に付き合っている人がいるかどうかを確認せずに、一線を越えるような真似をする失礼な男の子は、一人もいなかった。

だから私につけられたあだ名は一部正確さを欠いている。


誰かを好きだという感情が欠落していると、彼女は私に言ったことがあるが、そんなことはない。

実際、彼女のことはとても好きだったし、付き合ってきた男の子達のことも、たぶん好きだったと思うのだ。

男であれ女であれ、関係を長く続けられないのは、私に原因があるように思われたが、なぜそうなるのかは自分でもさっぱり解らず、残念そうな顔をして男の子達は去っていくのだった。


そうやって取り残されるばかりの私であったが、一度だけ、自分の意思で別れたいと思ったことがあった。


「お前、彼氏作んなよ。俺の彼女になれよ」

彼にそう言われて、私はいつもと同じように

「うん」とこたえた。

それから半年たった春、桜を見に行った時のことだ。

満開の季節がもう過ぎていたのと、明け方まで続いた雨のせいで、花は殆ど散ってしまっていた。

しかし、湿り気を含んだ花びらは、厚く地面にはりつき、それが上等の絨毯みたいに見えたのが嬉しかった。

桜の木の下に死体は埋まっているのだろうか。

「掃除すんのん、タイヘンやで」

その時、彼はそう言ったのだ。

私は本当に悲しくなった。

「あんな、私に『別れよ』って、言うてくれへん」

私がそう言うと、彼は怒った。


オレノカノジョニナレヨ


その呪文はかけた人が解かなければならない。だから彼に、この関係は終わりにすると言って欲しかった。

多分、私の方が彼を傷付けている。どうかしているのは私の方だ。誰といても、何かが違うと感じる私が悪いのだ。


私は、彼女を求めすぎているのだろうか。いつも彼女の不在を確認するだけで、どこにも行けず、何も変えられないまま、無意味な日々だけが過ぎていく。

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