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その6 くさい汗

汗臭いことを気にしている男がいた。

夏でも冬でもジャケットにニオイがしみついているのがよくわかる。

見た目でわかる。冬ジャケットに脇汗染みとかどういうことだ。

外から帰り、部屋の扉を開けた瞬間にツンと鼻が痛くなる。壁紙にニオイが染み付いているのだ。

しかし、彼にしてみれは自分のニオイであるのだから、すぐに慣れてしまう。


慣れとはおそろしいものだ。


が、そのニオイのせいで彼はモテない。全くモテない。

男にも女にもモテない。

道を歩けば犬が逃げたこともあった。


夏の満員電車など地獄だ、周囲の人が。

なので、なるべく始発に近い、人が少ない時間に出勤するようにしている。

彼なりの気遣いだ。


食べ物を変えればいい、とにかく肉とか四足系のものはやめろ、菜食主義にしてみろと言われて2,3日やってみたが無駄だった。

肉をやめるくらいなら人間やめたい、と考えてしまったからだ。


手術もした。


医者が匙を投げた。



もう自分はこのまま「スカンクの屁」という二つ名のまま、一人で生きていくんだろう。



そう彼は覚悟していた。

犬も逃げる臭い汗のニオイを誰が愛してくれるだろう。

おそらく嗅覚が破壊された人間だけだ。


いや、お前のニオイは目に染みるという人もいる。嗅覚を麻痺させた程度ではダメだ。


絶望だ。

彼には絶望しか残されていなかった。


と、思いきや、意外にも彼は楽天家だった。

医学も日進月歩。いつかなんとかなると思っていた。



さて、一方。彼の住むマンションの屋上にとある生命体が立っていた。


働きアリでいうところの先遣隊。そいつが帰還できたかどうかで、安全か否か判断するといういわば捨て駒のような立場の異星人だった。


空気はOK。気圧も雰囲気も結構いい。

侵略するにはもってこいの星だ、と、生命体は思った。


このでかい無機物の箱は、先住民(地球人)の巣らしい。一つ覗いてみるかと、異星人は手近な部屋へ入ってみた。



今日はカメムシ野郎と呼ばれていた、彼の部屋は最上階だった。折しも帰宅したばかり。

今日は最高気温更新。早くシャワーでも浴びてすっきりしたいものだ、とシャツを脱ぎ捨てたところだった。

そのシャツが転送侵入してきた異星人にクリーンヒット。


「コ、コノホシ、キケン、キケン」


シャツを頭からかぶった異星人は、彼が振り返るより前に異臭によって溶けてしまった。最後に危険信号を仲間に発信して。




彼は今日、地球を救ったのだった。


明日はちょっぴりドキリ☆ な、お話です。

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