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50 Listen to the rain

「アトモスフィア」最終話。

Listen to the rain


雨の音が聞こえる。


雨に歌えば、わたしは救われる。雨の音はノイズを消してくれるから。


人のうわさ話? そんなもの気にしない。

あの人のこと? 彼は家庭に興味はないの。

わたし? なんのとりえもないただの女。


彼女? 彼女はわたしの恋人。


月の出ない雨の夜はこうして過ごすのが好き。静かに過ごすのがわたしのゆりかご。


憂き世から救われるために雨はあるの。わたしのまわりに雨が降るの。

涙のかわりにあたたかく、冷たく降る雨。


指が結露で曇った窓ガラスに文字をえがく。他の誰にも読めない文字を。

4階の隅にある西向きの部屋は、なんの未来も与えてはくれなかった。

いえ、未来を探さなかったのはわたしの方かも。


ただの女の可能性はとても限られていて。

いえ、可能性を見つけようとしなかったのはわたしの方かも。


幼いこどもたちは雨の音を枕に眠っている。

やがて嵐になるであろう雨の夜に。

雷が鳴っても起きてはこないだろう。


雨の音でなにもかもが消されていく。

嵐がなにもかも洗い流していく。


悲鳴も、嗚咽も、断末魔すら。


雨の夜はこうして過ごすのが好き。


窓を打つ水の音にただ耳を傾けている。

朝のこない夜に耳を傾けている。




   わたしはそっと目を閉じる。


最後まで読んでいただきましてありがとうございました。


ちょっとお休みしてから短編集「アトモスフィア2」にとりかかる予定です。

お題はいつでも募集しているので、@khronos442までどうぞ~

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