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45 白い天使


ふわっふわのドレスでくるりと回る。まるで妖精のようだ。裾から見えない花が舞ってるよう。あんなに何枚も布を使ってるなんて重くないのかな。尋ねたらきっと、自分で着てごらんなさい、なんて言われるんだ。残念だがぼくにそんな趣味はない。


嬉しそうに何度も何度も回っている姿に、ぼくの目は釘付けだ。あの子はそうとわかってわざと舞ってるに違いない。

氷上の上の天使。ぼくの天使。

鋭い刃をついた靴で、足を動かしているようにもみえないのにまっすぐに進むんだ。天使が足を使わず、羽ばたいて移動するように。

ぼくは客席で黙って見つめてる。ただのクラスメイトにすぎない、ぼく。あの子にとって多くの友人の中の1人。ときどき算数のの宿題をみてあげる程度の。


あの子と一緒に羽ばたけたらどんなにいいだろう。

でもぼくは運動がひどく下手なんだ。

数学が得意なただの男。いや、男にもなってない。少年に過ぎない。

あの子にとってはなんでもない、ただの男の子なんだ。


あの子がこっちを見て手を振った。

ぼくに? いや、そうじゃない、自惚れるな。ぼくらクラスメイトみんなに振ったんだ。

そりゃあ、ぼくだけにだったら嬉しいけどさ。


ぼくは全力で、あの子に拍手した。ぼくの拍手が、他の誰よりもあの子に届くように。





ほんのすこし、カールのかかった髪をなでる。

彼が起きないように。


あなたは覚えているかしら。あの時、わたしの将来を決める試合に、みんなで来てくれたわね。

あなたに手を振ったの、気づいてくれていたかしら。


すごく緊張してた。心臓の音でミュージックが聞こえないくらい。

でもみんなの顔を客席に見た時、余計な力がすっと抜けるのを感じたの。

学校での毎日が脳裏をよぎったわ。あなたに算数を教えてもらった時のことも。

完璧な演技ができたのはそのせいよ。


まるで自分自身が天使のように透き通った感覚を得たように研ぎ澄まされたの。


あなたのおかげよ。



こうして二人して大人になって、ともに毎日を過ごせているなんて夢のよう。

ねえ、あなたは今どんな夢をみているの?

そこにわたしがいたらうれしいのだけど。


ねぇ、あなた。


ではまた、あした。

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